香水塔の修復

先日からレポートしている庭園美術館の香水塔について、今回の
修復過程の興味深い点について書いてみたいと思います。

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このオブジェの白い弾丸状の部分と上の渦巻き部分は、フランスの
国立セーブル製陶所で作られています。
弾丸状の部分は庭園美術館として生まれ変わる前に破損し、かなり
バラバラに割れてしまっていました。
以前の修復で形状は戻されていたものの、ひび割れがひどくなり、今回
改めて修復されました。

この修復を担当されたのが西洋の古陶磁器修復を行う工房いにしえの
佐野智恵子さんです。
佐野さんはイギリスで専門教育を受け、「カラーフィル」という方法で
修復をなさいます。
これは元の陶磁器の色•透明度•質感を合わせたパテを埋め込む方法で、
再修復もしやすいのだそうです。

ここに日本の金繕いとは文化の違いがあります。
陶磁器が後の世代に伝える文化財と捉え、表面的には全くわからない
ように修復し、数十年後、数百年後の再修復にも備えるのがイギリス
の文化なのです。
(食器としては使用出来なくなります。)

それに対し、日本の金繕いは使う為に直すのが第一義となります。
これはTOPページの記事にも書きましたように、持ち主のステータスとして
茶席に出すのが大事だったからです。
また繕った状態も景色として尊びました。

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香水塔は細かい破片に割れてしまっているなどとは、全くわからない
ように修復されています。
この角度から見るとミミズ腫れ様の線が数本見えるくらいです。
香水塔自体の美しさとともに、それを拝見することを可能にして
くれた高い技術をご覧頂きたいと思います。


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