カテゴリー別アーカイブ: 基本のき
育てる本 展示風景
先般、ご紹介しました『絵や彫刻のように「本」を楽しむこと、
イメージや思考を象るように。
ブックアート研究所ブックアート展の<育てる本>に参加しました。
他のご参加の方々の作品と一緒に展示されています。
参加が出来る展覧会はとても楽しい企画ですし、何よりさまざまな人の
手によって本が完成するというのが意義のあることだと思います。
長く連なった作品の様子に、このコロナ禍にありながらも途切れない人と
人の関係を感じました。
ぜひ実際の作品を見て頂きたいと思いますが、会場に行けない方には
ブックアート研究所のHPに動画も紹介されていますので、そちらを
ご覧下さい。
https://ada-library.com/bookart_labo/letters/
日本橋・ギャラリー砂翁の展示は9月4日(土)までです。
同一人物?
教室に持参している折り畳み型のノコギリの類似品を見つけました。
左が以前から持っていた東急ハンズ購入品です。
右が今回カインズホームで購入したものです。
よく見るとビスの形が違います。
それだけでなく刃を引き出す時の滑らかさが圧倒的に違いました。
カインズホーム品の方が楽なのです。
調べてみると、どちらも同じメーカーとわかりました。
生徒さんからお聞きしたのですが、有名メーカーでも100円ショップに出て
いるように、カインズホーム品は販路拡大の為と思われます。
結局同一メーカーだったのですが、刃の目が細かいものにして、引き出し時
の滑らかさを考えれば購入して正解だったようです。
インスタグラム「kintsukuroi shiratori」
呉須(ごす)
白磁に描かれる青い顔料を呉須(ごす)と言います。
主成分は酸化コバルトです。
これにマンガン、鉄、クロム、ニッケル、銅など微量に金属物質が加え
られることによって扱いやすく深みのある青藍色の顔料になります。
日本では磁器の生産が可能になると染付生産も開始されます。
呉須は中国から輸入した物を使っていました。
中国では元時代(14世紀)に染付生産が始まりますが、当初はペルシャ
から顔料を輸入していました。
輸入された顔料は時代ごとに名称が変わります。
「回回青」「回青」「蘇麻離青」など。
16世紀には「土青」と呼ばれる中国国内の呉須が使われるようになりました。
染付がこれだけ絵付けに使われているのは何故か、ずっと気になって
いたのですが、今回改めて調べてみてわかりました。
鉄顔料や銅顔料では出来ない濃淡の表現が出来たからなのです。
青ただ1色でありながら多彩な表現が可能であったからこそ、魅了
される器が完成したのです。
インスタグラム「kintsukuroi shiratori」
トクサの刈り取りは冬
春先から新芽が出だしたトクサがかなり大きくなっているかと
思います。
先日、ある教室で「トクサの刈り取り時期はいつですか?」とご質問
を受けました。
答えは「真冬〜春」です。
トクサは真冬に研磨成分のケイ酸の結晶化が進みます。
新芽間もない今時期に刈ってしまうと、結晶化が十分でないばかりか、
茎自体が柔らかいのです。
ご興味のある方は試しに刈り取って乾燥させてみてください。
乾燥後も柔らかい茎はとても道具にはなりません。
トクサの刈り取り時期を含めて使い方、育て方については、拙著
「金繕いの本」の90ページで、かなりの量を割いて説明しています。
ご不明点のある方は再読して頂ければ幸いです。
インスタグラム「kintsukuroi shiratori」
ガラスに金箔
カルチャープラザ公津の杜のFさんの作品をご紹介致します。
ガラスに金箔で装飾されました。
こちらのグラスは完品で破損しているものではありません。
元々表面にカットが入って麦と思われる柄が彫られていました。
その柄の部分に金箔を入れて頂いたのです。
技術的には漆芸の沈金の応用で、さほど難しくはありませんが、
可能なガラス器を見つけるのが大切です。
とてもゴージャスになるので、贈り物にしてもいいかもしれません。
チャレンジしたい方はどのようなガラス器を選べばいいのかという
ところからご確認下さい。
インスタグラム「kintsukuroi shiratori」
吉野紙と美吉野紙
このところ「吉野紙」と「美吉野紙」の違いについて、ご質問が
続きましたので、改めてご説明したいと思います。
吉野紙です。
楮を原料とする和紙で、現在は奈良県吉野町の昆布さんただ1軒のみが
生産者となっています。
古来、漆の濾し紙として使われてきましたが、丁寧な塵取り作業で得られる
柔らかい紙質で宮中の女官から「やわやわ」と呼ばれ懐紙としても
使われていました。
金繕いの教室では粘り強い繊維を生かして補強に使っています。
美吉野紙(みよしのかみ)です。
素材はレーヨンなどの化学繊維です。
吉野紙に比べて安価なので、漆漉しにはこちらが使われることがほとんどです。
用途をご理解頂いたところで、入手先です。
吉野紙は和紙になりますので、和紙店で取り扱いがあります。
私は日本橋の小津和紙さんで購入していますが、榛原さんでも取り扱いがあると
聞いています。
大きさは半紙を長くした感じで、だいたい1枚¥400程度と高価です。
一方、美吉野紙は漆材料になりますので、専門店での取り扱いになります。
日本全国にある漆材料店で必ず入手出来ますが、100枚〜50枚と個人では使い
切れない数がセットされていますので、数人でシェアして購入されるのが
いいかと思います。
私の知る限り10枚単位での販売があるのが藤井漆工芸さんです。
東急ハンズにも卸しておられるので、お出かけになれる方はこちらでの購入が
便利かと思います。
ネーミングの妙と言いますか、「美」の1文字で全く違うものになります。
見た目も見分けられないという方もおられるくらいです。
用途が違い、購入先も違いますので、是非ご理解頂きたいと考えています。
インスタグラム「kintsukuroi shiratori」
氷裂紋様
私個人の金繕い教室である藤那海工房のKさんの作品をご紹介します。
氷裂紋様+梅紋様の小皿の割れを金繕いされました。
氷裂紋様とは氷が割れた様を紋様化した物ですが、そこに絶妙に割れの
線が入っています。
仕上げの線としては、かすれてしまっているところがあるのですが、Kさん
曰く経年変化のように見えて面白いのでそのままにしますとのこと。
通常かすれてしまった場合は修正して頂くのですが、そのような見方も
あったのかと感心しました。
いずれ仕上げの銀泥の線は氷裂紋様に馴染んでくると思います。
そこに達した時がKさんの狙い通りの姿かもしれません。
インスタグラム「kintsukuroi shiratori」
瑞雲への道
先般からNHK文化センター横浜ランドマーク教室に展示して
頂いてる菊花型の小皿について、その変遷をお見せします。
薄く削げた欠けで形も角が出たコの字形をしていました。
当初、不思議な形の欠けを隠すように行ったのがお皿に元々あった
絵付けの形です。
これも不思議な形になってしまったので、却下となりました。
結局、落ち着いたのが瑞雲の蒔絵です。
金繕いの教室でもカリキュラムに組み込んでいる「置き目」のテクニック
を使っています。
通常、蒔絵する場合にはお皿に元々ある柄をお勧めしているのですが、理屈
通りには行かないこともあると学ぶいい機会になりました。
木工品の修復
NHK文化センター柏教室のTさんの作品をご紹介致します。
お母様が木彫された葉皿の塗り直しをされました。
恐らく何らかの塗装がされていたようなのですが、それが経年で
剥落してしまっていました。
それを一旦、除去して新しく新うるしで塗り直しを行って頂きました。
木目を生かした塗りというと本漆の拭き漆という方法が代表的だと
思います。
新うるしでも可能な方法がありますので、今回はそれで修復して頂きました。
あまり新うるしを塗り込まず完成とされたので、手作りの感じや使い
込んだ良さも感じられると思います。
お母様の作品というと唯一無二のものです。
今作は陶磁器ではありませんが、そのような大切な物が蘇るという意味
では何ら変わりはありません。
欠けの金繕い
NHK文化センター柏教室の方々の作品をご紹介致します。
お二人とも欠けを金繕いなさっておられます。
最初はSさんの作品です。
ゆらぎがある磁器のお皿です。
縁が欠けてしまっていたのを金繕いされました。
工程途中でアクシデントに見舞われましたが、無事完成しました。
最初の頃、仕上げの仕方に悩まれていたSさんですが、地塗りの仕方、
金を蒔くタイミングも全く問題のない堂々とした完成度です。
もうお一人はHさんです。
2点とも縁の欠けを金繕いなさっておられます。
特に左側の染付のダイナミックな絵付けが人気の作家さんのお皿は
縁が立ち上がっていて難しいのですが、きちんと形を再現された
ところで仕上げられました。
度々取り上げていますが、器の破損で最も多いのが縁の欠けです。
これが納得の完成になるのが一番いいことだと思っています。
最近の金繕い人気で様々な方法が選択できるようになりましたが、
やはりお気に入りの器は素敵に仕上げて頂きたいと考えています。