割れの接着をご依頼頂いた楕円形の大皿の金繕いが完成しました。
右上の部分が楕円形に割れており、違和感がありました。
そこで元々絵付けしてある鉄線の絵を模して割れの上に蒔絵しました。
このお皿の金繕いは本漆で行っていたので、蒔絵をするにあたっては
下地作りに時間がかかりました。
最近、本漆で金繕いをする方の採用率が高まっている「ガラス用漆」を
使えば楽に作業できたのかもしれませんが、これについて腑に落ちない
ところがあって使っていません。
「ガラス用漆」を使っている方は、どんなものなのか理解して使って
おられると思いますが、ご存知ない方のために少々解説致します。
「ガラス用漆」とは「シランカップリング剤」という接着性改良剤
としての化学物質を加えた漆です。
役割としては無機物と有機物の橋渡しを行うもので、〝化学の隠し味〟
とも言われます。
あくまでも工業製品用に開発されたものなので、人間の体内に入る物
に使用される安全性は確認されていません。
このような物が添加されているとは明記していないので、ご存知ない方も
おられるかもしれません。
本漆にはそれが許されているので、明記してないことを責めることは
出来ないのです。
そのような化学物質が添加されていても便利なものなら使いたいという
考えも理解出来ます。
しかし私としては本漆は天然素材で安全であるべきではないか、という
考えから出られないので使用に至っていません。
例えさらに安全性にこだわって国産の漆を使っていますと言っても、ガラス用
漆を混入した時点で化学物質を受け入れたことになるのではないかと
考えてしまいます。
この件はもう少し考えてみるつもりです。
皆様はどのように考えられるでしょうか?