カテゴリー別アーカイブ: 基本のき

本漆について

このところ本漆での金繕いにチャレンジしたいというご相談が
続いています。
ご本人、教室の事情に応じて対応を検討しています。

その過程で気になっているのですが、本漆に関して誤解があるよう
なのです。


本漆の道具の一部

誤解1 本漆はカブレない
私の知る限りカブレない本漆はありません。
拙著で本漆初心者にお勧めしている「NOA」は、かぶれにくいと
称していますが、皮膚に付けたままにすればカブレます。

NOAの製造元の佐藤喜代松商店さんによると、NOAもタンパク質の
添加量を増やせばカブレなくなるそうなのですが、そのかわりボッテリと
もたついてしまい、使い勝手が悪くなるそうです。
もしタンパク質を添加するという方法以外にカブレを防ぐ方法があるの
なら可能性はないとは言えませんが、大正10年から漆精製販売業をなさって
いる佐藤喜代松商店さんが開発されたものですから、そうそう簡単に新技術
が開発出来るとは考えられません。

誤解2 本漆での金繕いは簡単
これはある意味正解でもあるし、不正解でもあります。
本漆は好みの環境を整えてあげれば、忠実に固化してくれます。
しかし条件が気に喰わなければ、新うるしより手痛いしっぺ返しをして
くれるところがあります。
人間ぽいですね。
ですから安易に「簡単」とは言えません。

もう少し実務的なことを説明すると、特殊な道具も必要になります。
それらを使いこなすことを考えると、やはり簡単とは言いづらいです。

何より使い方をきちんと学んでから使われるのが重要です。
カブレの問題だけでなく、器の修復を行うという目的を達するためには
様々な加減が必要なのです。


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NEW筆&ヘラ置き

年明けの休みの内に何とか作れないかと虎視眈眈と狙っていたのが
本漆用の「筆&ヘラ置き」です。
以前作ったのがあるのですが筆が転がってしまって、どうにも気に
なっていました。

材料にしたのが飾り台と三角形の棒材です。
飾り台はこれにディスプレーしたりするものだと思うのですが、下に
入れる板材にしてしまいました。
これで板をカットする手間が省けます。
難点は少々重いところですが、安定感があると解釈することにします。

ざっくり棒材をカットしたところです。
隙間が空いているところにヘラを立てかける予定。

筆を置く部分の彫り込みをしたところです。
細い筆2本と太い筆1本が置けるように幅が変えてあります。
元々のイメージは以前から持っているカトラリーレストです。

もう少し暖かくなったら拭き漆をして完成!

ということで以前作ったものに、あり合わせの端材を接着して改良。
これはこれでコンパクトで便利だし、何より金具を取り付けただけで
出来て何ていいアイディアなんて思っていたんですね。
しかし筆が全面接してしまうことで、転がってしまうとは(涙)
本漆の場合、筆が思わぬところに転がったら、それだけで“事故”です
からね。

こんな失敗もありますが、自作の道具が楽しみの一つでもあります。


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箱に割り箸

昨年末に質問頂いたのが、高台部分にも割れが入っている器を
どう作業したらいいかということでした。
以前ご紹介していますが、私は専用の治具を用意しています。

二つの棒材の間に高台をまたがせて乗せれば、作業中の部分がテーブルに
着かないで済みます。

径が小さい器の場合は、固定していない棒材を足して調整します。

ここまで専用の道具を用意しなくてもという場合には、割り箸が
便利です。

割り箸を箱の底に固定して器を乗せれば完了です。
蓋を閉めれば埃も入りませんし、本漆の場合なら加湿して室にも
出来ます。
もっと簡便にされている方は、器自体に短くカットした割り箸を
固定されていました。

たかが割り箸ですが、その厚みがあれば十分用を足します。
乾燥を待って器の表、裏と別の日に作業するのは非効率です。
ご自身のやりやすい方法でなさってみて下さい。


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手を洗いましょう!

先日、教室で仕上げ作業をされた方が、器の表面に指紋が
バッチリ出てしまって驚かれました。

仕上げをする前には器を洗って下さいとお願いしてるので、この方も
器を洗ってきて下さっていました。

問題はご自身の手だったのです。
ハンドクリームを付けたままの手で作業をされてしまったため、銀泥を
蒔いたところ、まるで指紋検出のように器の表面にくっきりと出て
しまったのです。

最初は仕上げをする部分は触っていないから大丈夫とおっしゃって
おられたのですが、よく見ると指紋が仕上げの線をまたいでいることが
わかりました。

新うるしは油によって分解されてしまう性質があるので、徹底的に油分は
避けます。
(ボールペンの使用も不可です)
講座受講の初日に手指を洗って下さいとお願いし、継続して毎回お願い
しますとお話ししています。
これは前記の理由を考えて頂ければお分かり頂けると思いますが、講座の
前だけでなく、ご自宅で作業をする場合でも同様です。

欠損を埋めている途中で油分がつけば、削った時に油分のついたところから
バッサリ剥げ落ちますし、仕上げの前につけてしまっていれば仕上げの
耐久性が悪化します。

手を洗うという簡単な作業を怠ることで、今までの積み重ねが一瞬で無に
なります。
ご面倒でも手洗いは必ずなさって下さい。


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穂先が割れてしまったら

先日、筆の穂先が割れてしまうと、ご相談を受けました。
穂先を触らせて頂いたところ、粘り気を感じました。
これは穂先に若干の新うるしが残っている為で、これを
除去すれば割れはなくなります。

除去の仕方ですが、中性洗剤(台所洗剤で可)で洗う際、穂先を
揉みほぐします。

まず爪先を穂先に入れ込むようにほぐします。
場所を変えながら繰り返し行って下さい。

ついで根元を潰すように揉みほぐします。
こちらも方向を変えながら繰り返し行います。

これらを交互に行って、根元の粘り気や塊を取り除けば完了です。
新うるしの塊がポロポロと出て来る場合もあります。

もちろん根元に残留物がないように毎回の洗いが完璧であれば
いいのですが、穂先が割れてから問題に気がつくことが多いのです。
おかしいと気がつかれましたら、上記の方法をお試し下さい。

◎画像は、かな書用の筆ですが、金繕いの筆でも方法は同様です。


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ミャンマー土産

ミャンマーにお出かけになった方から、お土産に漆塗りの
小物入れを頂きました。


ミャンマーの漆器は塗面に線刻して色漆を充填した加飾が特徴です。
中を見るとたっぷりと漆が塗られているのがわかりますが、これが
固化しているのが凄いところです。


以前のブログで紹介しました「馬尾胎蒟醤椀」です。竹と馬の尾の毛で
胎が編まれているので柔らかくしなるのですが、それについていけるだけ
漆も柔軟性があるということです。

ミャンマーの漆は正確にはグルタ属の植物から樹液を採取していて、日本の
ウルシ属とは違います。
成分も「チチオール」で、日本の「ウルシオール」とは違ってきます。

日本とこのミャンマー産の漆と関係が深いことがわかっています。
すでに桃山時代に輸入したミャンマー産の漆で漆器を作り、輸出していたのです。
国産の漆とは違う性質の漆を使いこなしていたんですね。

お土産を頂いたことで、改めて勉強することができました。


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本漆で蒔絵

割れの接着をご依頼頂いた楕円形の大皿の金繕いが完成しました。

右上の部分が楕円形に割れており、違和感がありました。
そこで元々絵付けしてある鉄線の絵を模して割れの上に蒔絵しました。

このお皿の金繕いは本漆で行っていたので、蒔絵をするにあたっては
下地作りに時間がかかりました。

最近、本漆で金繕いをする方の採用率が高まっている「ガラス用漆」を
使えば楽に作業できたのかもしれませんが、これについて腑に落ちない
ところがあって使っていません。

「ガラス用漆」を使っている方は、どんなものなのか理解して使って
おられると思いますが、ご存知ない方のために少々解説致します。

「ガラス用漆」とは「シランカップリング剤」という接着性改良剤
としての化学物質を加えた漆です。
役割としては無機物と有機物の橋渡しを行うもので、〝化学の隠し味〟
とも言われます。
あくまでも工業製品用に開発されたものなので、人間の体内に入る物
に使用される安全性は確認されていません。

このような物が添加されているとは明記していないので、ご存知ない方も
おられるかもしれません。
本漆にはそれが許されているので、明記してないことを責めることは
出来ないのです。

そのような化学物質が添加されていても便利なものなら使いたいという
考えも理解出来ます。
しかし私としては本漆は天然素材で安全であるべきではないか、という
考えから出られないので使用に至っていません。

例えさらに安全性にこだわって国産の漆を使っていますと言っても、ガラス用
漆を混入した時点で化学物質を受け入れたことになるのではないかと
考えてしまいます。

この件はもう少し考えてみるつもりです。
皆様はどのように考えられるでしょうか?


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恐るべし?木工ボンド

15年ほど前に、お子さんが木工ボンドで接着してしまった
シュガーポットの金繕いをご依頼頂きました。
ご存知の通り木工ボンドは水溶性なので、水に浸けておけば
剥離するだろうと安易に考えていました。

ところが半日水に浸けていても剥離しません。
数回繰り返しましたが、結果は変わらず(涙)

そこで煮沸を試みて3回、ようやく剥離成功です。

表面についていたものは水に浸した段階で落ちましたし、剥離後
断面に残っていたものも簡単に落ちましたので、木工ボンド
であることは確実です。

木工ボンドは経年変化で強くなる?
まだ1例で断言は出来ませんが、今後、要チェックの出来事でした。


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百考は一行にしかず

JEUGIAイオンモール八千代緑が丘教室のOさんの作品を
ご紹介致します。
織部釉のお皿の欠けです。
大きめの欠けを金泥で仕上げられました。

実はOさんは仕上げをするのが初めてだったのですが、説明を受け、
他の人が仕上げられているのは、ご覧になってはいました。

しかし見るのと実際自分が仕上げるのとは違いがあります。
知識として持っているものの通りに手が動くとは限りません。
そこでまず他の器で練習して頂きました。
大きな仕上げは難しいのですが、練習の甲斐あってとても綺麗に
完成しました。

完成してみてOさんの感想は、見て知識としてあったものがつながったと
いうことです。
金繕い自体は元々職人さんの仕事なので、手を動かして覚える部分が
あります。
いきなり素晴らしいものは完成しないので、練習あるのみ。
欠損を埋める作業のついでに、仕上げを想定した塗りの練習をして
みるなど、やってみてはいかがでしょうか?


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トクサ バリバリに割れるのは

自分で育てるのが難しい方に向けて、トクサの購入先として
(有)並川平衛兵商店をご紹介しました。

こちらで購入された方から「使おうとするとバリバリに粉砕してしまう。
問題のある品物ではないのか?」というお問い合わせが相次ぎました。

結論から申し上げますと、品物には問題はありません。
生育状態が良く、よく削れるトクサです。

ではなぜバリバリに割れて粉砕してしまうのかというと、使う前に
水に浸す時間が少ないからです。
必要な時間は20〜30分なのですが、ご質問頂いた方達が浸しておられた時間は
いずれも5分以下でした。
この時間だとほとんど乾燥した状態と変わりがありませんので、粉砕して
しまうのも納得です。

技術をお教えする者としてトクサの使い方は頻繁にご説明していますが、
相変わらず質問が多い事項のトップです。
どうしたら解決するのか思案中です。

※拙著をお持ちの方はp.90をご覧下さい。詳細にご案内しております。


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