カテゴリー別アーカイブ: 基本のき

トクサ 使用限界

このところトクサでなかなか削れないという質問が続きました。

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以前からブログでご説明しておりますが、トクサは消耗品です。
削りがはかどらないと思ったら、まず表面の削れる状態が消耗
したのではないかと考えられます。

この使用の限界をみるのには、使い始める前に表面の状態を
覚えておく必要があります。
この最初のざらざらしたものが、消耗すると感じられなくなる
はずです。

削れにくいという原因には、別の理由もあります。
①トクサの同じ所ばかり使っている。
②目詰まりしてしまっている。
などなど。

①は、使いながらトクサを回転させて、いろいろな部分を使う
ようにすること。
②は、水に浸して目詰まりしている物を洗い落とすようにする。
で、解消されると思います。

またそもそもトクサではなくて、大トクサを使っていると、あまり
削れません。

削れないままで作業をしていると、仕事もはかどりませんし、ストレスも
溜まります。
何かおかしいなと思ったら、この内容をチェックしてみて下さい。
思い切って処分するのも大切です。


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トクサ 枯れる理由

地植えしたトクサが枯れてしまったと、ご相談を受けました。
以前のブログに書きましたように、トクサはシダ植物です。
その為とても水を必要とします。

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お寺などで日影に植えられていることが多く、日照は不必要の
イメージがありますが、真夏の直射さえ避けられれば生育に日照は
あまり関係ありません。

ですので枯れたということは、水不足の可能性が高いのです。
晩秋から早春の間は、それほど水やりに神経質になる必要は
ありませんが、新芽が出て暑さがある間は頻繁に水やりをする
必要があります。

私は自宅マンションのベランダで鉢植えにして育てています。
鉢の下に皿を敷いて、そこに水が溜まるくらいにしています。
普通の植物でしたら、根腐れしてしまうような状態ですが、
トクサは大丈夫なのです。

水管理の目安にしているのが、トクサと同居している苔です。
苔が元気ならば、トクサにとってもご機嫌な環境なのです。

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インスタグラム「kintsukuroi shiratori


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梅雨空戻る

梅雨入りしたかと思ったら大雨、そして夏空と、今年の梅雨は
不可解です。
これからの数日は梅雨空が戻るようですね。

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45階にある市川教室 梅雨空の眺め

昨年の梅雨時にもお願いしましたが、この時期の「目止め」という
下準備には注意が必要です。
米の研ぎ汁を使いますので、カビの危険が伴います。
雨が続く場合には、作業は回避した方が安全です。
晴天が数日続く時を見計らって下さい。

下準備は根気がいるものです。
無理はしない方が、結局近道となります。


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陶器の呼び継ぎ風?

以前から手の込んだ直しのされた骨董品があると、ブログにアップ
してきました。
また興味深い品を見せて頂きましたので、ご紹介致します。

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本体は磁器のお皿なのですが、欠け部が一見自然釉の信楽焼で
呼び継ぎされているように見えます。
しかしこの部分を触ってみると軟らかいのです。

どうやらパテというより淡い緑色の粘土状のものを詰め、景色として
茶や金粉を着けてあるのです。

たまたま購入されたまま使ってはおられなかったので何ともあり
ませんでしたが、食器として使い、洗浄していたら早々に剥落して
いたと思われます。

骨董の器自体が品薄になっていると聞きますので、このような品が
出回るのかもしれません。
ここまでの作り込みに感心してみたり、骨董界の有り様を考えさせられ
たりと、複雑な思いになりました。


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でんぷんのり

金繕いの工程では、意外なものを使う場合があります。
その中で最も驚かれるのが、でんぷんのりです。

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子供の使うものというイメージが強いせいか、これを使いますと
言うと、とても驚かれます。
「売っているのですか?」と聞かれることもあるくらいです。

もちろん文房具店などで販売されています。
とても安価なのも、嬉しいところ。

100円ショップでも同様品の取扱いがありますが、こちらは経年変化が
あり、劣化します。
やはり昔からおなじみのブランドをお使いになるのが、いいかも
しれません。


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銀箔を加工

ご依頼頂いていた小瓶の修復が完成しましたので、ご紹介したいと
思います。

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口縁が割れていたのを本漆で接着し、欠損を埋めて仕上げてあります。
今回工夫したのは、仕上げの色です。
小瓶自体が海外で購入された物ということで、ラスター釉(金属的
光沢を持つ釉薬)のような表面でした。
これに馴染むように銀箔を加工し、釉薬に近い感じにしてから
仕上げました。

銀は自然の硫化を待って適当な色にする方法の他、この仕上げに使った
ように意図的に加工も出来ます。
いずれにしろ変化を楽しむことが出来るのが、銀です。


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要注意な筆の洗い方

新うるしを使った筆を洗う場合は、薄め液を別の瓶に入れて頂いた
ものを洗い専用にして頂いています。

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しかし瓶ではなく、毎回絵皿に新しい薄め液を出して筆を洗う方も
いらっしゃいます。
これは毎回新しい液で洗える、汚れた薄め液を持ち歩かなくてもよい
などの点からそうされているのではないかと思いますが、この
方法には問題が生じる場合があります。

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まず液の嵩が浅いので、絵皿に筆を押し付ける洗い方になります。
そうすると金具に当たって毛が切れ穂先がやせます。

また新うるしが硬化して穂先が固まりかけている筆はしばらく
薄め液に浸しておかないときれいになりません。
絵皿で洗う場合は浸せず軽くしか洗えませんので、筆が取りきれて
いない新うるしで固まってしまうはずです。
特に広い面積を塗った平筆は、浸すことが必須になります。

出来れば教室でお話しているように、瓶で洗い用の薄め液を用意される
ことをオススメ致します。


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摺漆用紙使い比べ

昨日ブログに書いた拭き漆ですが、摺漆用紙を使い比べてみました。
ケーク紙という再利用品と、キムワイプという2種類です。

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こちらがケーク紙。
漆芸用の摺漆用紙として販売されています。

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こちらはキムワイプ。
本来は業務用の拭き取り用紙で、紙粉を嫌う仕事の場で使われて
いるものです。
クレープ加工というちりめんシワがついているのが特徴です。

昨日アップしたれんげ2本で使い比べてみましたが、摺漆用紙の方が
完全に拭き切るのではなく、微妙に厚みをもって残る感じ。
キムワイプはクレープ加工で、しっかり拭き取る感じです。

しかし見た目はほとんど変わりがありません。
今後塗り重ねていくと変化があるかもしれないので、使い分けて
作業を続けてみます。

もしかすると好みの問題に落ち着いてしまうかもしれません。


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拭き漆で復活

木製の食器•カトラリー類は、ほとんどの物がウレタン塗装されて
います。
ウレタン塗装は耐水性があり、陶磁器と同じように食器洗いが
可能なのが便利なのですが、長く使用していると劣化し、剥がれて
きます。

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そのような状態になってしまったものが、いくつか出来てしまったので、
本漆の拭き漆で復活させることにしました。

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れんげです。
右側のものは先がヒビが入ってしまっていたので、既にヒビ止めを
施してあります。
画像の状況は、残っているウレタン塗装を紙ヤスリで削り取ったところ
です。

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1回目の拭き漆が終わったところです。
左側のれんげは樹種が南洋材だったと思うのですが、紙ヤスリを
かけた時点ではわからなかった斑模様になっています。
これはこれで面白いと思いますが、拭き漆を重ねていく過程で、
適宜調整するつもりです。

右側のスプーンは、メイプル材です。
ウレタン塗装が剥げてしまっていた部分が濃くなりましたが、
他の部分は均質に塗り上がりました。

昨年からこのブログをご覧になっている方から、京都の骨董市で
購入してきたお盆の修復はどうなった?と質問が来そうです。
それも忘れている訳ではないのですが、どうも目先の物に目が
いってしまいますね。


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ゴム手袋の下準備

漆かぶれとは、アレルギー性接触皮膚炎の一種です。
そのため漆かぶれを避ける為には、皮膚を露出させないことが
重要になると以前のブログに書きました。

本漆と最も接触するのが、ゴム手袋です。
どんなに神経を使って作業をしていても、どこにつけたか全てを
把握するのは無理なので、私は作業の切れ目ごとに頻繁にゴム手袋を
交換します。

その際手際よく交換したいので、2枚一組ずつセットして準備して
います。

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稀に漆かぶれを起こさない方もいらっしゃいます。
長年扱っていると減感作療法のようにかぶれなくなるという説も
ありますが、用心しておくに越したことはないというのが私の
考えです。
それはいろいろな方から、様々なケースで発症した漆かぶれの
厳しさを聞いているからです。

 


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