カテゴリー別アーカイブ: 日常の風景
目から鱗の質問2
昨日に引き続き、目から鱗の質問です。
金繕いの講座の見学にお出でになった方から「使えますか?」と
質問がありました。
この質問にはとっさに「使うために直しています。」とお答えして
しまったのですが、よくよくお話を聞くと仕方のない質問だった
のです。
というのもこの方は割れた器を瞬間接着剤で接着されていた為、何度も
剥離してしまうことを繰り返されていたのです。
拙著「金繕いの本」にも記載していますが、瞬間接着剤で接着してしまうと
不本意な形で接着されてしまうので、剥離して金繕いした方が綺麗に
仕上がります。
もう一つの問題が、見学に来られた方が体験したように剥離することにあります。
これは接着剤全般が耐熱温度が60度しかないからです。
よって熱い飲み物を入れる器に顕著に現れます。
剥離する度に接着し直していると断面に接着剤の残りが蓄積し、ますます
接着強度が落ちます。
これは悲しい話です。
「使えますか?」というご質問が出るのも当然です。
「また使いたい」というのが金繕いの原点です。
その言葉に改めて気がつかせてくれた質問でした。
日本民藝館
先般、旧前田家本邸の洋館と和館をご紹介しましたが、お出かけに
なられたら合わせて「日本民藝館」の見学もオススメ致します。
民藝館は「民藝」という新しい美の概念の普及と「美の生活化」を目指す民藝
運動の本拠地として柳宗悦によって企画され、1936年に設立されました。
17,000点にも及ぶ柳の審美眼で集められた諸工芸品は、日用雑器を超えて
無心の美や健全な美を宿しています。
展示物だけでなく、建物も時代を経た趣があります。
ある意味、旧前田家本邸とは対極にあります。
2つを見比べることで、なおお互いの良さが際立つように思います。
旧前田家本邸の正門から徒歩10分ほどのところにあります。
見学後、駒場東大前駅に出れば、完璧な見学コースです。
<ランチ>
今回は午前中にボランティアガイドで旧前田家本邸を見学し、敷地内の日本
近代文学館内にあるカフェ「BUNDAN(ブンダン)」でとりました。
高い本棚に囲まれて図書館の中にいるようです。
ちょっとレトロな雰囲気もGood!
ルート的にも良かったので、旧前田家本邸→カフェ「BUNDAN」→日本民芸館
がオススメです。
旧前田家本邸 和館
先般レポートした洋館に続き、和館もご報告したいと思います。
和館は主に外国からの来賓をもてなすために建てられました。
その他、前田家の行事にも使われています。
1階大広間です。
フォーマルな逆勝手の書院造で、付書院には巨大なケヤキの1枚板が
使われています。
細かい細工がされた欄間です。
池泉庭園には5種類の紅葉が植えられています。
それぞれ紅葉の時期が違うそうなので、これからお出かけになる方は
その時々の紅葉が楽しめると思います。
洋館もそうですが、和館は特にボランティアガイドを受けた方がいいと
思います。
ガイドさん同行だと、通常の見学では見られない2階御居間や茶室も見学
出来ます。
前田家は現代になっても前田家であり続けていると聞きました。
その一端が無料で公開されているのは、とてもありがたいことだと思います。
リニューアルして往年の輝きを取り戻した今、見学されるのをお薦め致します。
<情報>
洋館、和館共、靴を脱いで上がります。
脱ぎ履きのしやすい靴でお出かけになるのは勿論、冬場の洋館は冷えると
思いますので、足元の対策をお考えになった方がいいと思います。
練香を作る
藤那海工房 西登戸教室をお借りしているKさんはお香の先生
ということで、以前は匂い袋を教えて頂きました。
その続きで今回は「練香」の制作です。
元々は漢方薬の中の香りがいいものだったという材料から、好みの香りを
イメージして合わせていきます。
最後は先生に香りを調整して頂いて、丸薬状に丸めて完成です。
実際使えるのは年末くらいまで、熟成してからです。
実は体調がイマイチだったのですが、元々が漢方薬だったものだからか
何やら元気が出たようです。
嗅覚は人間の五感の中で、最後まで残ると言われています。
香りで刺激を受けたのかもしれません。
柿の葉寿司 紅葉
頂き物の話で恐縮ですが、あまりに綺麗だったので、ご紹介
致します。
緑の葉の柿の葉寿しは、皆様ご存知かと思います。
頂いたのは、この時期限定の紅葉の葉に包まれた物です。
包みを開けると、目にも鮮やかな紅葉です。
美味しさもひとしお。
試して見たのが、パッケージに紹介されていた「炙り」です。
包まれたままオーブントースターで焼くだけなのですが、温かくなって
味わいも変わります。
今年は塩害の影響で近隣の紅葉は今ひとつのようです。
その分、楽しませて頂きました。
旧前田家本邸 洋館ディテール
先日に続き、旧前田家本邸の洋館ディテールをレポートします。
洋館と言えば暖炉だと思いますが、前田家の暖炉は石の素材、
アイアンワークなど全て凝っています。
照明は器具自体のデザインと取付部の漆喰細工も見どころです。
じっくり見て頂きたいのが、木部の彫刻です。
テューダー様式で木材が多用されていますが、そこに彫刻を施すことで
より温かみがあります。
建築主の前田利為候の戦死後、館は企業の本社になり、GHQに接収
されるという歴史を辿ります。
その中でこれらの美しいディテールが失われなかったことは、本当に
良かったと思います。
次は併設されている和館についてレポートします。
旧前田家本邸
15年ほど前から見学の機会を狙っていた「旧前田家本邸」に行って
来ました。
前田家とは旧加賀藩藩主前田家のことで、駒場東大前にある本邸は
16代当主の前田利為侯爵の居宅として昭和4年に竣工しました。
重要文化財の認定に伴い2年3ヶ月の修復工事が完了し、この10月末に
再オープンしたのです。
洋館マニアで日本各地の洋館を見て来ましたが、その中でも随一と
言ってもいいくらい素晴らしい建物です。
さすが加賀百万石、その名にふさわしい格調の高さです。
修復工事では耐震工事はもちろんですが、壁紙やカーテンなど建築当初の
状態に近づける再現がなされました。
その結果、戦後GHQ接収時代に失われてしまった状態を回復し、昭和初期の
上流華族の生活をうかがい知ることが出来る建物になりました。
格調の高さが現れているのが、ディテールなのです。
こちらは次の機会にご紹介しようと思います。
映画「日日是好日」
先般、お茶会に出席してから私の中でお茶ブームが来ています。
見に出かけたのが映画「日日是好日」です。
樹木希林さんがお亡くなりになった際に、最後の出演作として報道されたので
それをご覧になった方も多いと思います。
原作は森下典子さん。
「お茶」が教えてくれた15のしあわせという副題がついています。
全くお茶のことを知らなかった森下さんが、25年の間に学んだことを15に
まとめたエッセイです。
原作は作法の指南書と違って、学びによって気づいたことを森下さんの
目線で描かれているので、不調法の私にも通じるところがあります。
映画は日本の四季とお茶のつながりを、とても美しく映像化していました。
日本人とは何なのかを感じられる佳作です。
シネコンのような大きなところでは上映されていないようですが、見終わって
ほっこりする映画です。
お時間が取れたら、是非オススメ致します。
秋の茶会
海浜幕張公園 美浜園の松籟亭で行われた茶会にお招き頂きました。
というのも先日金繕いしてお返しした黒楽茶碗が、お濃茶の席に
使われるとのことだったからです。
雨が上がり晴れ間も見え、心地よい気候の中、お伺いしました。
正直に言うと、お茶に関しては全くの不調法者なのですが、席主の方から
お茶を楽しんで頂く為の席ですとあたたかいお言葉を頂き、甘えさせて
頂きました。
お返しした黒楽茶碗は蘇って手元に戻ったことから「帰来」と銘をつけられた
そうで、座の注目を集めた姿は誇らしげに胸を張っているように見えました。
お返しした器が実際使われている姿を見ることは早々ありません。
このような機会を与えて下さった席主の方に改めて御礼申し上げたいと
思います。




























