カテゴリー別アーカイブ: 生徒さんの作品
銀泥 硫化した色
藤那海工房 金繕い教室の生徒さんの作品をご紹介します。
銀泥で仕上げられた欠け+ひびがいい色に硫化したとわざわざ
お持ち下さいました。
銀泥はアクセサリーと同様、空気中の硫黄成分で変色していきます。
それはいきなり黒くなるわけではなく、最初は少し地味な金色である
シャンパンゴールド色になり、その後ピンクゴールド、青紫と変化して
いきます。
最終的に真っ黒になるわけです。
新うるしの場合、途中経過で止めることが出来るので、器の感じと
合わせて選択することが可能です。
特にシャンパンゴールドは粉引・化粧土と呼ばれるベージュ色の釉薬に
合いますし、青紫は染め付けと酷似しています。
問題は色の変化を自然に任せて待つ場合、どのくらいの時間が必要かと
いうことなのですが、この質問にはジョークを交えて「神のみぞ知る」
とお答えしています。
というのもそれぞれのご自宅で環境が違う為、必要な時間が変わってしまう
からなのです。
今まで一番変化の早かった方はご実家が養鶏場(鶏糞が要因と思われる)だと
いう方でした。
お預かりもので返却を急ぐ場合などは方法はありますが、やはり自然に変化
させた方が色が美しいようです。
色の変化を楽しめる銀泥です。途中経過もお楽しみ下さい。
草木染め2023 最後の成果
今年の草木染め大会は3回で終了しました。
その最後のレポートです。
Hさんの作品です。
ご自分でなさったのが絞りです。
着物をお召しになった際の膝掛けにするそうで、淡いベージュ色が
上品な染め上がりになりました。
上に乗っているのは帯揚げです。
今回初チャレンジのやしゃぶしの鉄媒染です。
渋いベージュですが、どんな着物にも合う万能カラーです。
すでに藍は花が終わり、あとは種を実らせるばかりになっています。
来年の開催に参加をご希望の方はお声がけ下さい。
ちょっとひと手間
NHK文化センター柏教室のKさんの作品をご紹介致します。
ティーカップ&ソーサーの欠けの金繕いです。
ティーカップに欠け+ひび、ソーサーに欠けがあったのを金繕い
されました。
それぞれ金泥で仕上げられています。
ひと手間かけられたのが、金泥の上から器にあった元々のラインを
復元されたことと、ティーカップのひびの仕上げを器の柄に合わせて
途中に輪を入れられたことです。
器の元々の柄を復元するのは良くお勧めしていますが、今回Kさんは
ラインを柄の色に合わせた色漆を使われました。
通常は銀泥で仕上げておき、その硫化を待ちます。
しかし預かったもので、すぐに返却する必要がある場合は色の変化を
待てない場合もあるかと思います。
その場合には色漆は有効かと考えます。
ただ色漆は上手く使わないと安っぽい感じになる場合があります。
金泥が高騰しているので色漆をご希望になる方が増えていますが、
頑張って制作したものの価値を下げる必要はないかと思います。
安易に飛びつく前にご相談下さい。
複数のひび
NHK文化センター柏教室のYさんの作品をご紹介致します。
陶器のお猪口のひびです。
ひびを止めた後、欠損を埋め、金泥で仕上げられています。
外側から見るとあまり目立ちませんが、内側は3本のひびが目に
入ってしまいます。
化粧土もしくは粉引と呼ばれる釉薬の場合、最も目立たなく仕上げる
には銀泥をお勧めしています。
銀泥が少し硫化したところで、ある措置をすると釉薬の色に馴染んだ
色で落ち着きます。
Yさんはまだ仕上げを始められたばかりだったので、失敗の少ない
金泥を選択されましたが、慣れてこられたら銀泥にもチャレンジして
頂きたいと思います。
仕上げはご本人のお気持ち次第です。
仕上げの際に迷われるようでしたら、ご相談下さい。
最適な方法をご提案したいと考えています。
自然に馴染む
NHK文化センター柏教室のYさんの作品をご紹介致します。
楕円形のお皿に入ったひびの金繕いです。
何らかの植物の柄が入っているお皿です。
それがモダンなデザインで直線的にラインが入っているところに、まるで
植物の枝分かれのようにひびが入っていました。
ひび止め後、金泥で仕上げられたのですが、これが絶妙に馴染んでいます。
これが金繕いマジックですね。
人間が意図して出来ない意匠が完成するのです。
これを新たな魅力としてお使い頂ければと思います。
シー陶器・シーグラスで作るアクセサリーその後
こっそり行っているシー陶器・シーグラスで作るアクセサリー作り
ですが、3月に行った分をご紹介致します。

透明に近いガラスを集めた作品。
天然石とシー陶器をパズルの様に上手く合わせているところが秀逸
です。

講座終了後、お手持ちのビーズを入れ込まれた力作。
パテで埋めて金で着彩しただけになってしまう部分が生かされています。

こちらも講座終了後にお手持ちのパーツを足された作品です。
何と眼鏡の装飾部分だったとか。
アイディア次第で何でも生かされる例ですね。

個性的なレイアウトの作品です。
横に並べた形は構成しにくいのですが、形さえ成り立たせられれば
パーツの選択のセンスの良さが光ります。
このイベントはもうやりませんと宣言しておりましたが、まだ残って
いるパーツで良ければという条件で来年に小規模で計画する予定です。
やってみたい!という方はお声がけ下さい。
優先的にお知らせ致します。
相手に伝わる
NHK文化センター柏教室のSさんの作品をご紹介します。
湯呑みの欠けです。
真摯な作業姿勢を度々ご紹介しているSさんなので、このような基本的な
欠けの直しは全く問題なくこなされています。
先日、ある方から破損の直しは技術さえ習得すれば誰でも出来ること、
という辛辣なご意見を頂戴しました。
しかし私はそうは思っていません。
かつて骨董商の方に小さな欠けの直しであっても、直し手の精神が感じられる
とお聞きしたことがあります。
まさにその通りでSさんの作品もどれだけ丁寧に作業したか、金繕いが完成
してなお素敵に見えるように気を配られたかが見えるのです。
大切な器だからこそSさんのように心を込めて作業なさって下さい。
拝見する方だけでなく、直されている器も見ていますから。
2023草木染め大会報告
例年にない暑い夏で、藍の生育を助けて頂きながら今年の草木染め
大会を終了しました。
結局、7月、8月、9月と3回行いましたので、ご参加の皆様の
作品をご紹介したいと思います。
Hさんの白生地から染められたもの。
左:帯揚げ やしゃぶし アルミ媒染でベージュ色に
右:ストール 生藍染め 染まりやすい絹とと素材の部分で色違いに
Mさんの白生地から染めたストール
左:蘇芳 アルミ媒染を2回
右:生藍染め 凹凸のある生地で深い色に
Fさんの作品。
色が派手過ぎて使えなかった帯揚げをやしゃぶしのアルミ媒染で
シックに変えられました。
左から蛍光イエロー、蛍光グリーンだったとは思えない落ち着いた
雰囲気に。
同じくFさんの作品。
左:綿ハンカチ やしゃぶし アルミ媒染でベージュに
中:派手なピンクだった絞りの帯揚げが和らいだイメージに
右:シミがあったベージュ系の帯揚げが生藍染めで新しい色合いに
草木染めの面白いところは白生地で染めたとしても、生地の風合いで
思わぬ色になるところでしょうか。
また今年の大会では使えなかった色やシミがあったものが、染めを
加えることで使えるものに変えられた方が多かったのが印象的でした。
金繕いも「蘇らせる」ものですが、草木染めも同じだったというのを
改めて気づきました。
来年また行うか迷いがあったのですが、ご参加の方から「是非」という
お声を頂いて頑張ってみようと思っています。
藍の栽培を協力して下さる方もおられますので、今年は参加しなかった
けれどという方は、来年は是非ご検討下さい。
色を変える
NHK文化センター千葉教室の生徒さんの作品をご紹介します。
割れの金繕いです。
今回、工夫して頂いたのが仕上げです。
渋い色目の染め付けで紫陽花が描かれていますが、この絵をまたぐように
割れの線が入っています。
度々このような具象柄の対策をご紹介していますが、今回は柄に差し掛かった
部分だけ薫銀泥の仕上げにして頂いたのです。
植物はもちろんのこと、人型など仕上げの線が痛々しく見えるケースは多く
あります。
今回のケースは単純に仕上げの色を変えただけで落ち着いて見えるという
取り組みやすい方法です。
是非参考になさって下さい。
仕上げデビューにして
JEUGIAイオンモール八千代緑が丘教室のTさんの作品をご紹介します。
醤油差しのひびの直しです。
素晴らしいのは仕上げデビューで、これだけの細い線が描けている
ことです。
そう、皆様憧れの細い線です。
Tさんは下地の作業から丁寧な仕事振りでしたので、この細い線も
納得です。
いつもブログに書いていますが、仕上げの線は細ければいいというもの
ではありません。
Tさんの場合、小ぶりな醤油差しにとても合っている線なのでなお
いいのです。
ましてや仕上げに慣れないうちは無理する必要はありません。
自分が描ける精一杯のものでいいと考えています。
どんな線であれ仕上げにたどり着いた、ご自分をヨシとしてあげて下さい。


















