カテゴリー別アーカイブ: 基本のき
器の形は戻す
以前修復前の様子をご紹介しました器が完成しました。
下の画像が修復前のお預かりした状態です。
この状態になってしまった経緯は分かりませんが、もしかすると
持ち主の方ご本人が自分なりに直された結果かもしれません。
見比べて頂ければ、やはりきちんと器の形を戻した方が
美しいと感じて頂けると思います。
欠けたところが金色になっていればいいんですとおっしゃる方も
おられますが、そのようなお話があると悲しい気持ちになります。
使用上問題がない箇所でも、金繕いするならば元の形に戻して
あげるのが本分だと思うからです。
いかがでしょうか?
テクスチャーのある器
個性的な器の金繕いの依頼を頂戴しました。
大きく2つに割れ、縁が細かく割れた上に欠損もありました。
割れの接着としては難しくないのですが、気をつけなければ
ならなかったのが表面のテクスチャーです。
シワが寄ったような細かいテクスチャーが表面にあります。
そのため接着段階からしっかりマスキングを行いました。
削る、磨くという工程でもテクスチャーに対応したテクニックが
必要です。
もちろん仕上げにおいてもです。
ここまで細かいテクスチャーでなくても、表面に不定形なざらざらが
ある器は多いと思います。
適宜説明いたしますので、教室でご相談下さい。
トクサ 刈り取り時期
寒い日が続き、トクサの刈り取り時期がやってきました。
2月〜3月が最適です。
根元から切り取り、1週間も日当たり通風の良いところに干せば
道具として使えます。
この刈り取り時期に合わせて、トクサに関するご質問も多くなって
きました。
ブログでも度々取り上げていますので、ブログ内を検索して頂くと
記事がたくさん出てくると思います。
また拙著「金繕いの本」でも90ページのQ&Aに正しい内容で説明
しています。
お求め頂いた方は目を通して頂けると、よりわかりやすいかと
思います。
貝磨き 誘惑に負けないで
貝合わせ制作のカリキュラムでは、まずご自身でハマグリ貝を
召し上がって頂くところから始まります。
その後水に1か月以上浸けて頂きます。
そうすると画像のように表皮が水膨れのようになってきて、いかにも
めくれそうになります。
しかし、ここで誘惑に負けないで下さい。
どのように作業していくのか、教室で確認して頂きたいのです。
というのも表皮がないのに水に浸し続けると、もっと厄介なものが
貝の表面に付着します。
もちろん貝がダメになってしまうわけではありませんが、面倒な作業が
待っています。
敢えて面倒な作業に挑んでみたいという方はいらっしゃらないと思います
ので、どうぞ誘惑に負けないようお願いします。
トクサ カビたら駄目
水に浸して柔らかくしてから使って頂くトクサですが、
その後の始末にご注意下さい。
教室で使った後、お持ち帰りになるのにビニール袋に
入れたままにしてしまったものが、カビてしまった方が
おられました。
トクサは道具ではありますが、植物であることには変わりが
ありません。
湿らせた状態のままにすると、カビたり、腐ったりします。
ご面倒でもお持ち帰りになられたら、再使用のためにしっかり
乾燥させるのが大事です。
もしカビてしまいましたら、再使用は不可能です。
残念ですが、処分して下さい。
修復の手順
このところ修復の手順で間違いが多いと感じているのが、
「接着」です。
ひびの有無で出だしの手順が変わってしまいます。
これを間違ってしまうと思わぬ手間がかかってしまうので、ご注意
頂きたいと考えています。
拙著「金繕いの本」をお求め頂いた方は、是非19ページの
「修復の手順」をご覧下さい。
「欠け・ほつれ」「ひび・にゅう」「割れ」について、手順の全容が
わかるよう一覧表で解説しています。
一見地味な表なので見逃してしまうかもしれませんが、私としては
いろいろ工夫して作ったつもりです。
活用して頂けたら嬉しいです。
急須の蓋は要注意!
急須の蓋は使用頻度が高いので、割る、つまみが取れるといった
破損が多いものです。
さらに熱がかかる、ドーム型をしているという特徴から修復する
際には注意しなければならない点が数多くあります。
ところが形の小ささから簡単に出来るように見えてしまうのが
曲者です。
ティーポットの蓋も含めると様々な形があり、手順も色々あります。
ご自身の判断で作業を進めてしまう前に、是非一度教室で作業内容を
ご確認下さい。
説明のない道具について
このところ説明していない道具をご自身の判断で使われた結果、
挽回不可能な状態になっている方が続いています。
例えば金たわし。
これを陶磁器の削りに使って、釉薬をキズだらけにしてしまったケース。
またハマグリ貝の磨きに紙ヤスリを使って、表面の綺麗な光沢が出る層を
磨き破ってしまったケースなどです。
大抵のことは何とかする方法を検討出来るのですが、上記のケースは
いずれも挽回不可能です。
このような状態になる可能性のある道具は、説明から省いています。
講座で教えるということは、受講して下さっている方々に「最短にして、
最良の方法」をご説明することだと思っています。
ですので10人のうち2人は成功するかもしれないが、8人は失敗すると
いうような作業でもリスクと考えてお話ししません。
お教えしないということは、何らかリスクがあるのだとお考えください。
拙著「金繕いの本」なり、教室で板書したものなり、レジメなりを
作業を始める前にご確認下さい。
どうぞ自ら辛い道を選ばれませんよう。
完成直前の悲劇
洋食器に多い縁の金彩ですが、うっかり電子レンジにかけて
しまうとスパークし、金彩が点々と焼き切れます。
この場合、まず下準備をして欠損となった部分を埋めます。
その後また下準備の上、金箔を貼ります。
金箔を払って、来月はみ出しを処理したら完成…
というところで、取り落としてしまわれました。
金繕いの教室に来て、器を破損させてしまうのは珍しくはない
のですが、完成目前では残念過ぎます。
どうぞお手元に気をつけて、お取り扱い下さい。
ズレの仕上げ
接着がズレてしまったというのは、よくあることです。
接着直後は仕方がないと思われる方が多いのですが、その後
ズレの解消に手こずる方は少なくありません。
NHK文化センター柏教室のMさんの作品をご紹介致します。
ズレてしまったのを幅広く埋め、仕上げられました。
ここに至るまで、どこをどのくらい埋めて、どのくらい削るのかと
悩まれました。
さらに幅広いところを上手く仕上げるのにもコツが必要でした。
ズレ後の工程は相応に時間がかかるので、極論を言えば接着がズレな
ければいいのです。
接着を完了させるのが大変なので、その時は余裕がないかもしれませんが、
このことを覚えていて頂いて、是非完璧な接着を狙って頂きたいと考えて
います。















