カテゴリー別アーカイブ: 基本のき
足りない!
先般、お預かりしているお皿で破片が足りないというものをご紹介
しましたが、さらに深刻な状態のものをお預かりしました。
もう土が手に入らないということで作家の方が同じものは作れないと
おっしゃっている器です。
箱に入れたまま落としたそうで、破片は全て回収されているはずなのですが。
とりあえず場所が判明し、安定よく接着出来るパーツのみ接着してみました。
しかし圧倒的に足りない…
残るパーツはこれだけ。
根気よく嵌る部分を探して組み立てる予定です。
この器をこよなく愛している持ち主の為、頑張ります!
トクサ育つ2020
今年のトクサは元気に育っています。
手前の2鉢は昨年、ピラティスのMidori先生に頂いた苗が太くてしっかり
した芽を出しています。
奥のバケツに入った苗は他の方から頂いた苗がやはり大きく育っています。
それぞれたくさん新芽を出して、全体で見ると畑のようにすら見えてきます。
昨年もこのくらい順調に育っていたものが、夏の暑さで枯れてしまいました。
ですので梅雨明け前に北側のベランダに移動しようと考えています。
このコロナ禍で自宅マンションの大規模改修日程が全く不明になってしまって、
トクサ達の行方も見えていません。
とりあえず良い生育をすることに集中しようと思います。
最終形
仕上げの経過をアップしていた印判のなます皿は最終的にこうなり
ました。
左側の欠け+ひび
欠けの形は欠損に忠実に変更。
ひびも仕上げの線を描きました。
右側の欠け
銀泥で印判の青海波の文様を描き足しました。
銀が硫化すると印判の柄に馴染む予定です。
特に左側の欠けは本来の形に忠実にして正解でした。
前のブログにも書きましたが、作為的にし過ぎると不自然になるという
例になりました。
皆様の仕上げの際の参考になれば幸いです。
お重の修復
藤那海工房西登戸教室のIさんが又、休講中に完成しましたと画像を
送って下さいました。
お重の修復です。
金繕いの教室では漆器の修復もお教えしています。
Iさんのお重は主に角の漆が剥離していました。
最下段では柄の真ん中が剥離するという深刻な状態でした。
角は剥離部分を埋めて黒漆で塗り直し、柄の欠損は梅の蒔絵されました。
いずれも全く違和感がありません。
漆器の直しの難しさは、破損してない部分を傷つけないようにする
配慮が必要だということです。
さらに1つ1つの作業を丁寧に重ねていく必要があります。
先日も陶器の割れの金繕いをUPさせて頂きましたが、Iさんの丁寧な
作業が漆器でも発揮されたようです。
西登戸教室は7月から再開を予定しています。
実物を拝見出来るのを楽しみにしています。
隙間が埋まる
少し前に「パーツが足りない」というタイトルでアップしたお皿の
足りなかった部分が埋まりました。
私共の方法では隙間は木片で埋めて行きます。
本漆での金継ぎをなさっている方だと「錆漆」という砥の粉と生漆を
練り合わせた物を使う方が多いと思いますが、このような奥が深い欠損の
場合、ちゃんと固化したかどうかが問題になります。
一見、木片だと難しいと思われるかもしれませんが、上記のような不安もなく
確実に欠損が埋まっていくのが木片のいいところです。
あとは少々表面に出ている足りない部分を他の方法で埋めて行きます。
器の形通りになったら、あとは仕上げだけ。
完成までもう1歩となりました。
形を丸める
欠損の形が変な形をしているケースはよくあります。
主張が強くて目立ち過ぎる場合、適当に形を変更することをオススメ
します。
新うるしの場合は釉薬への活着がいいので、欠損が器通りに埋められて
いれば、いくらでも形の変更が可能になります。
ただやり過ぎるとかえって不自然になる場合があります。
例として今回私が仕上げたものをご覧頂きたいと思います。
欠損を埋め終わり、仕上げる前です。
特に画像の右側の欠けが不思議な形をしています。
右側の欠けは1回、かなり凸凹をなくして仕上げてみたのですが、逆に
不自然になってしまいました。
画像のやり直した状態でバランスが取れたかなと思っています。
左側の欠けですが、こちらもひびにつながる段をなくしてしまいました。
しかし変な感じがしています。
ひびの線も入れることにして、段をそのままの形にやり直す予定です。
このお皿で試行錯誤してみて、やり過ぎは良くないという結論に至りました。
また手を入れたところで、ご覧頂きたいと思います。
トクサを分解する
ずっと乾燥させていたトクサを、余裕のある巣ごもり期間を利用
して分解しました。
トクサはダンボール箱に入っているように、本来は70〜80cmの長さに
成長するものです。
それを根元から切り取り、ダンボール箱にまとめて乾燥させていました。
長いままだと収納や持ち運びに困るので、一節ごとに園芸ハサミで切り、
分解したのです。
トクサは表面についた珪酸で漆部分のみ削れ、器自体は全く傷つけない
という便利な道具です。
使用の際には水に20〜30分浸して柔らかくしてから使用します。
ご飯のりにしろトクサにしろ、日本人は自然の中から道具を見出しています。
それらの道具は何らかの手間はかかりますが、無用な強引さがないところが
いいと思いませんか。
作品完成しました
生徒さんから譲り受けた器の金繕いが完成しました。
かなりバラバラに割れた小皿でした。
細かく欠損した部分もありました。
のりうるしで接着し、欠損を埋めた後、金泥で仕上げを行いました。
複雑な割れなので、仕上げの手順は工夫しています。
また仕上げてみて、欠損が埋まっていなかったところが判明したので
再度埋めなおしてから仕上げし直しています。
割れ方というのは本当に面白いと思いますが、この小皿も典型例です。
綺麗に左右対象で、末広がりの八の字のようです。
金繕いとは預かり品のみだと思っていた友人から、なぜ作品展が開けるのかと
問われたことがあります。
もちろん私もお預かり品の金繕いをしておりますが、常に自分の作品を
制作するようにしています。
この小皿も画像の他、何らかの展示で活躍してくれる予定です。
カトラリーの塗り直し
先日アップしました本漆での塗り直しについて、ご説明したいと思います。
木製のカトラリーは大抵、ウレタン塗装という樹脂系の塗装で木部をカバー
しています。
これが使用によって剥がれてきて、見た目を損なうばかりか木部を痛める
原因になります。
塗り直しをする場合は残存するウレタン塗装を紙ヤスリで除去して、本漆を
塗り直していきます。
紙ヤスリは200番台から始め、出来れば600〜800番くらいまで使い、大きな
傷を残さない状態にしておきます。
塗り直しの初めに気になるのが、ひときわ色が濃くなる部分が出ることです。
これはウレタン塗装が使用でしっかり剥げてしまっていた部分に起こります。
それはより漆が染み込んでしまうからです。
あまり気にならないという方もおられるかもしれませんが、気になる場合は
色が濃くなってしまった部分を紙ヤスリで落としながら塗り直しの作業を
進めます。
2〜3回塗ったら紙ヤスリをかけて調整することを繰り返していると、全体が
同じような色味になってきます。
全体の塗り重ねは最低5回は必要と考えています。
塗り重ねる程、色は濃くなりますので(艶ありのものだと艶も出る)あとは
好みで調整されると良いのではないでしょうか。
こんなふうに使います
先日、リサイクル材料で治具を作った話をアップしました。
実際どんなふうに使っているのか、ご覧頂きたいと思います。
本漆で拭き漆の塗り直しをしている箸とスプーンです。
長辺側の材が少し高くなっているので、滑り落ちたりしないのが良いところ。
また室の中の湿度も通りやすいのも重要なポイントです。
器の場合です。
縁、高台部分に破損がある場合、表と裏の作業が同時進行で出来るようになり
ます。
いずれにしろ1点1点管理が出来るのが便利だと思っています。
こんな工夫をしているという方がおられましたら情報をお寄せ下さい。
ブログでご紹介させて頂きたいと思います。