月別アーカイブ: 2017年6月
親子愛の急須
よみうりカルチャーセンター大宮教室のEさんの作品を
ご紹介致します。
急須の把手の折れです。
以前のブログで書いているように、急須は熱いお茶が入り、
重さもありますので、把手の折れは単に接着だけでなく、補強を
入れます。
Eさんの急須の場合、見た目の問題も加味して表面からも補強を
入れました。
補強の範囲は有効な範囲だけでなく、黄金分割を使って美しさも
求めています。
この急須はEさんの息子さんが初任給でプレゼントしてくれた大切な
ものなのだそうで、Eさんの作業も力が入っていました。
2重の補強は大変なのですが、完成した姿はとても綺麗ですし、
大切なプレゼントが蘇るというのは、何物にも代えがたいこと
だと思います。
お礼の品
ゴールデンウィークあたりから少しずつ制作していた貝合わせが
完成しました。
これらは出版記念パーティーに合わせてお祝いのお花や品を
頂いた方へのお礼として作っていました。
お会いできる機会にお渡ししていく予定です。
お気遣い頂いて本当に嬉しかったです。
ありがとうございました。
鳩山会館に行く
東京・音羽にある鳩山会館に行ってきました。
元内閣総理大臣の鳩山由紀夫氏の実家です。
鳩山会館は大正13年、関東大震災の翌年、元々この地に木造の
自宅があったものを改築し、コンクリートを使った洋館として
建築されました。
設計は岡田慎一郎。
東京・丸の内の明治生命館の設計で知られる建築家です。
外観はイギリス風。
内部はアダムスタイルという18世紀後半のイギリスの古典的な
様式で作られています。
軽快で優雅なことが特徴です。
ここまで書いてくると洋風に徹した洋館のように感じられるかと
思いますが、1階の4室とサンルームが一体につながるように
なっていたり、開口部が引き戸だったりと和の手法が使われています。
これがこの建物が開放的と感じる要因になっています。
もう一つ特徴的なのが、随所に使われているステンドグラスです。
日本初のステンドグラス作家・小川三知氏によるものです。
特に一番最初にUPした階段室のものは外側に彩色、内側に黒枠と
二重になっている珍しい構造をしています。
今まで各地の洋館建築を見てきましたが、生活していた所有者が
存命しておられ、かつ知っているというのは初めてです。
「お邪魔します。」という気分で見学してきました。
一時は取り壊しも考えたというくらい痛みがひどかったようですが、
著名な建築家の設計であり、政治の舞台にもなった建物を修復、保存
される道を選択されました。
これを鳩山家個人で行っているのは、大変なことだと思います。
ですので建物紹介のVTRが少々お家自慢になっているのは、ご愛嬌
でしょう。
将来建物が何らかの公的認定を受け、保存され続けることを希望
します。
トクサ根付く
先日植え替えしたトクサから新芽が出て、根が落ち着いたと
安心しました。
トクサは水やりさえ怠らなければ虫もつきませんし、育てやすい
植物です。
ただ苗を入手した方は、梅雨明けまでに植えた方がいいと思います。
盛夏の植え替えは、トクサにとってさすがに厳しいようです。
よく質問があるのが、新芽で細いものでも育っていく過程で
太くなるのかということです。
残念ながら細い芽が肥えることはありません。
ですので私は姫トクサのような細い芽は剪定してしまいます。
また枝分かれするように脇芽が出る場合がありますが、これも
細くしかならないので、カットします。
枝分かれする原因はトクサが傷ついたことによるもので、これからの
台風の季節で生じることが良くあります。
根強く質問があるのが、トクサは乾いたまま使ってもいいのかという
ことです。
トクサは必ず水に20〜30分浸して柔らかくしてから使います。
乾燥したまま使うと粉砕しますし、目詰まりもします。
道具は適切な方法で使った方が効果があります。
どうぞ正しい使い方でなさって下さい。
ガチャガチャでピンズ
先日行ったブリューゲル展でうっかりガチャガチャをやって
しまいました。
ブリューゲルの版画から取り出したキャラクターが7種類、ピンズに
なっています。
当たったのが「七つの大罪」という連作から《大食》というものです。
もう少し可愛いのが当たるまで粘れば良かったのでしょうが、ちょっと
残念な感じです。
でもこの《大食》、何かの啓示かもしれません。
教訓として有難く思うことにしました。
ブリューゲルの奇怪なキャラクターは、キモ可愛いとでもいうのでしょうか。
ミュージアムショップではたくさんの商品が並んでいました。
成田空港では海外の方にガチャガチャが人気というニュースを見ましたが、
小銭処分と言わなくても魅力があるのがわかるような気がしました。
染付けいろいろ
藤那海工房金繕い教室金曜日クラスのKさんの作品をご紹介
致します。
一気にたくさん仕上げてきて下さいました。
仕上げたてなので、綺麗な銀色をしていますが、いずれ硫化して
骨董の染付け色に馴染んでくると思います。
薄く削げたところが難しかったり、チリが入ってしまったりと
それぞれで教訓はありますが、右上に写っている小皿は完璧な
仕上がりでした。
この成功体験を積み重ねていって頂ければ、より完成度が高く
なると思います。
骨董がお好きなKさん、次々完成させて下さるのを楽しみに
しています。
穂先が痩せる
このところ下地塗り用の筆の毛が少なくなって、使いにくく
なってしまったという方が多くなっています。
原因は洗い方にあります。
穂先を押し当てて洗うと、金具で毛を切ってしまいます。
その結果、穂先がどんどん痩せていってしまうのです。
正しい洗い方は上の画像のように、穂先はまっすぐにしたまま爪で
穂先をほぐしながら、中まで中性洗剤を入れ込むようにすることです。
洗剤で洗って水で流すを2回ほど繰り返せば、あとはキャップをして
片付けるだけです。
誤った洗い方は子供の頃から水彩絵の具の筆で行っていたことだと
思います。
なかなか習慣は変えられないとは思いますが、下地を塗る筆で洗い方を
身につけておけば、仕上げ用の筆も長く使えるようになります。
最初は面倒に思われるかもしれませんが、慣れてしまえば何ということ
もないと思います。
お教していることには、意味があります。
これを機会に正しい洗い方を身につけられては、いかがでしょう?
金銀切り替え
NHK文化センター柏教室のUさんの作品をご紹介致します。
ご友人からの預かりもので、韓国の湯のみではないかという
ことです。
白化粧土の上から鶴などの絵柄が彫り込まれています。
ちょうど鶴をまたぐように、ひびが入っていたので、目立たなくなる
ように鶴の部分は銀泥で、白化粧土のところは金泥で仕上げて
頂きました。
銀泥はいずれ硫化して鶴の色と馴染み、目立たなくなる予定です。
描きにくい内側の仕上げ線もきれいに描けています。
預かり物という緊張感もあったのかもしれませんが、この湯のみの
仕上げでUさんの技術が一段と上がったように思います。
もしお知り合いから金繕いを頼まれたら、積極的に受けて頂きたいと
思います。
腕が上がること、間違いなしです。
ブリューゲル「バベルの塔」展
東京都美術館で開催中のブリューゲル「バベルの塔」展に行って
きました。
展覧会は15世紀以降のネーデルランドの美術の紹介に始まり、
最も著名なボスを経てブリューゲルの展示に至ります。
ボスにしても、ブリューゲルにしても見所は描き込まれた寓意かと
思いますが、原一菜先生からしっかり見るようにお話があったのが、
色の美しさです。
この時代は現代の油絵具とは違って、ダイレクトに狙いの色が出せ
なかったのです。
少しずつ色を塗り重ねて色を作り出すことが、すなわち絵の深み
にもなりました。
そしてまだキャンバスがなかったので、ベースは板になります。
木の色から空や海の明るい色を作り出すのは、とても難しい作業に
なるのだそうです。
展覧会はタイトルの「バベルの塔」が最後に展示されています。
駅の看板で見ていたのとは違って意外にも小さい絵でした。
会期終了間近で絵の前に20Mほどの列が出来ていました。
会場全体も混雑していますので、描き込まれた詳細を見るのには
相応の時間がかかります。
計画してお出かけ下さい。