個展開催前に盆栽鉢の金繕いを納品していました。
いずれも著名な作なので持ち主の方に了解を得て、ご紹介しようと
思います。
まずは徳川家に繋がる四国の藩主の方の持ち物だった楕円型の鉢です。
ひびが2本と破片の接着を行いました。
破片は一度接着剤で接着されていたのですが、これがズレていました。
これを剥離し、接着し直して欠損を埋めて金泥で仕上げてあります。
名工ではなく素人の作ではないかという鉢の鄙びた味わいと金泥が呼応して
見所になったのではないかと思います。
次は葛明祥の大型の楕円型の盆栽鉢です。
ひびが入っていたのを止め直し、金泥で仕上げました。
葛明祥は、清朝乾隆・嘉慶年間(1736年-1820年)に活躍した宜興窯の陶工
です。
濃い青の特徴的な流れや濃淡のある海鼠(なまこ)釉の陶器を製作しました。
「葛明祥造」の印が底にある盆栽の盆や鉢、急須、花瓶、火鉢などが造られて
います。
こちらもご自身で接着剤を流し込み、パテで溝を埋められていました。
しかし接着剤は全くひびに入っておらず、パテも劣化してボロボロになって
いました。
2つ共、歴史のある盆栽鉢なので、金繕いの際の注意点として汚れを落とさない
ようにということがありました。
あらゆる手段を使って経年の味わいを残しましたが、持ち主の方がひびを止める
ため接着剤を流し込んだ際に剥がれてしまった物は元に戻すことは出来ません
でした。
金繕いというと食器のイメージが強いと思いますが、同じ陶磁器である鉢も修復
可能です。