月別アーカイブ: 2022年8月

前向きに装飾

NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介致します。
マグカップの欠けです。
髭のように伸びるひびを素敵に蒔絵されました。



今回の欠損は縁をぶつけてしまった時に起こったもので、もう少し
衝撃が強ければ破片が落ちていたと思われます。
それが落ちずに残ったのですが、周囲に髭のようにつながったひびが
出てしまいました。

この形は完全に欠けとなった場合でもよくある破損で、どのように
仕上げるか皆様悩まれるところです。

Hさんはマグカップ表面のタコ唐草紋様を上手く利用してひびの部分にも
蒔絵されました。

常に同じ方法が取れるとは限りませんが、同様の欠損に悩まれている
方には一つの解答を示していると思います。

似たような欠損で苦慮している方は是非参考になさって下さい。


カテゴリー: 生徒さんの作品 |

紋様の力

前回に引き続きカルチャープラザ公津の杜教室のMさんの作品です。
小鉢の割れを金繕いされました。



破片を接着後、細かに割れてしまった範囲を薫銀泥で全面仕上げられ、
その上から唐草紋様を蒔絵されました。

細かに割れた部分をそのまま仕上げられると、神経質な感じに見えていた
かと思われますが、一定の範囲をまとめて仕上げられたことでスッキリした
仕上がりになっています。
その分、大きな面積になってしまったのを蒔絵で装飾されました。

唐草紋様を始め、吉祥紋様と呼ばれる長く培われた紋様は多数存在します。
それぞれ意味があり、使用する際にはそれを踏まえて使うべきだと思います。

紋様を使うのは単なる装飾ではありません。
紋様の持つ力を貰うことでもあります。
選ぶ時にはそのことを思い起こして、ご検討下さい。


カテゴリー: 生徒さんの作品 |

自然釉の徳利

カルチャープラザ公津の杜教室のMさんの作品をご紹介致します。
自然釉の徳利の割れです。



口縁の難しいところが細かく割れてしまったのを接着され、欠損している
部分も自然に補われています。

仕上げの金泥も自然釉に馴染んで、美しい作品になりました。

ランダムな陶器の肌は繊細な磁器ほど綺麗にならさなくてもいいですと
ご説明しています。
その反面、どこまで作業すればいいのか迷ってしまう方もおられます。

簡単に言えば周囲と違和感なく繋がっていればいいのですが、どの程度か
と悩まれるかと思います。

そういう方にはMさんの作品は参考になるかと思いますので、細部まで
じっくりご覧下さい。


カテゴリー: 生徒さんの作品 |

セット作りました

9月7日水曜日に開催予定の「金継ぎ技法で作る箸置き・アクセサリー
作り」のイベント向けにセットを作りました。

これをそのまま使われてもいいですし、一部をお好みのパーツに
入れ替えても構わない簡単セットです。

特に初めて参加する方はパーツ選びに迷ってしまうかもしれません。
個数に限りがありますが、ご検討下さい。

イベントは
9月7日(水) 10:00〜12:00/13:00〜15:00

お問い合わせ&お申し込みはトライラボさんまで。
070-5569-7908


カテゴリー: お知らせ, 展覧会•イベント |

切り落とす

NHK学園市川オープンスクールのSさんの作品をご紹介致します。
一輪差しの割れです。


鶴首と言われる優美な形の一輪差しをお持ちの方は多いと思います。
残念ながらその首が割れやすいのも事実です。
割れてしまった首を接着するのは当然ですが、あえて外してしまう方
もおられます。

Sさんは折れてしまった部分を平らにならして、そこを金箔のクズで
仕上げられました。
下地の赤い漆が透けて見えるところが、より鮮やかに見せています。
画像では分かりにくいのですが、内部も赤漆で塗られています。

割れてしまった形をそのまま生かすという発想はあるかと思いますが、
その形が美しいかどうかというのは冷静に考える必要があります。
Sさんの一輪尺の場合、そのバランスも良かったということで、
面白い作品になったかと思います。


カテゴリー: 生徒さんの作品 |

梅の枝へ

NHK文化センターさいたまアリーナ教室のOさんの作品をご紹介
致します。
鉢の割れを梅の枝に変えて仕上げられました。

割れを接着して欠損を埋めたところです。
この形がまさに梅を彷彿させる形です。
ひと目見て、梅の枝に見立てて仕上げすることをお勧めしました。


接合の線を薫銀泥で仕上げるだけでなく、新たに梅の枝振りも加えて
頂きました。
それに弁柄漆で梅の花を描き加えておられます。
さらに蕊を金泥で入れて頂きました。

枝振りにしろ、蕾・花も梅の特性があります。
蒔絵をされる場合にはきちんとそれを把握してから行う必要があります。

また故実を踏まえて梅は紅梅がセオリーです。
いくら美しいからと言って白梅を選択してはなりません。

Oさんは接合の線で表面の釉薬が欠損して丸く削げていた部分を上手く
咲いた梅の花に蒔絵されました。
蒔絵前後を見比べて頂くと納得の完成形かと思います。

Oさんの作品のようにひと目で「これは◯◯◯にすべき」と判断がつく
ものばかりではありませんが、思いついたら是非チャレンジして頂きたい
と思います。


カテゴリー: 生徒さんの作品 |

箸置きの金繕い

昨日に続きNHK文化センター柏教室に在籍されていたTさんの作品を
ご紹介致します。
割れてしまった箸置きの接着&補強です。

割れてしまったのは画像左下のものです。
金泥の仕上げが数カ所入っているのがお分かりになるかと思い
ます。

平らな形の箸置きだったので、裏面から和紙で補強して頂きました。
手間はかかりますが、再破損の心配なくお使い頂けると思います。

同じデザインの箸置きがあると一つだけ違う印象になってしまうのは
気になるかと思います。
Tさんの場合、破損していないものは三角形の突起部分の釉薬が剥げて
しまっていたので、色漆を使って彩色して頂きました。
4つ並べると違和感がないかと思います。

また食卓で活躍していることでしょう。


カテゴリー: 生徒さんの作品 |