月別アーカイブ: 2025年2月
不思議な割れ方
骨董の器には不思議な割れ方をするものがあります。
この時代、まだまだ焼成技術が成熟していないので、このような
問題が起きます。
無理矢理この形に整形されたものが、何らかの刺激(電子レンジに
かけた、ぶつけたなど)をきっかけに割れてしまうわけです。
特徴は厚みが変わる高台の周囲を回っていることでしょうか。
合わせたとしても完全にはまらず、ずれてしまう場合もありますが、
この器の場合はピッタリはまります。
仕上げをするとぐるっと回るラインが特徴的な感じになるかと
思いますが、まだまだ未熟だった日本の陶芸技術に思いを馳せて
容認してあげるのもよろしいかと思います。
染付の復活
藤那海工房 金繕い教室のUさんの作品をご紹介致します。
平鉢の割れの接着です。
かなりダイナミックに割れてしまったのを接着し、金泥で仕上げられて
います。
その結果、ラフな筆致で描かれた花文様が損なわれていました。
それを金泥の上から染付の色に近い色漆で描き出すことによって緩和
しています。
この方法は度々ご紹介していますが、Uさんの作品が秀逸なのが色の
濃淡をつけているところです。
これによってより元の印象に近くなり、割れによる痛々しさが拭われた
と思います。
この技法にチャレンジする方はUさんの作品を参考にして、ご自分の
作品がどのようにしたらより良くなるかをお考え頂けたら嬉しいです。
アイ・リンクタウン 展望ロビー
NHK学園市川オープンスクールがある市川駅前のザ タワーズ
ウエストには展望施設があります。
先般「マツコの知らない世界」で夜景の穴場スポットとして紹介
されました。
私が行った日は残念ながら富士山は望めませんでしたが、スカイツリーを
含む夜景はやはり良いです。
展望ロビーのさらに上に外にある展望デッキにも出られます。
3階から45階に上がるエレベーターもシースルーなので、ちょっとした
アトラクション感覚も味わえます。
夜景でなくても他に遮るものない見晴らしの中、江戸川のゆったりした
流れを見るのもいいものです。
もしおついでがあればお立ち寄り下さい。
ツートン
藤那海工房 金繕いクラスのSさんの作品をご紹介します。
小さい破片になった割れの接着です。
マグカップの縁が小さく2つの破片に分かれて割れていました。
これを接着し、破損した部分を埋めた後の仕上げがツートンに
なっています。
下半分の益子調の鉄釉の部分は薫銀泥で仕上げられ、上半分の粉引
のベージュ色の部分は銀泥で仕上げられています。
銀泥がいずれ硫化して淡い金色になったあたりで色止めすると
現状よりさらに馴染むと思います。
Sさんの作品でお分かり頂けたように、一つの破損を全体同じ色で
仕上げなければならないことはありません。
今回のように破損の状態が美しいと言いづらい場合は特に工夫が
あっていいと思います。
仕上げはあくまでも破損部分のお化粧です。
実使用は破損が埋まった段階で問題ないのです。
目立たせてアピールするもよし、目立たなくするのもよし。
自由に発想して下さい。
貝絵 公津の杜教室
金繕い教室のカリキュラムに「ハマグリ貝に金箔を貼る」
というのがあるのですが、そこから発展して貝絵に
チャレンジする方が増えています。
今回はカルチャープラザ公津の杜の生徒さんの作品をご紹介します。
まずは先日まで在籍されていたMZさんの作品。
テーマは波うさぎです。
「波うさぎ」とは古来から親しまれているモチーフで謡曲の「竹生島」
に起源を発します。
琵琶湖を渡る船から見たさざなみが立つ湖面の様子から草原を駆ける
うさぎを連想したというものです。
MZさんはその定番の画題を可愛らしい表現でまとめられています。
もう1点、MOさんの作品は制作されていた秋の季節に合わせて栗が画題
になっています。
元々、絵を描くのがお好きだったので、のびのびと構成されているのが
わかります。
特にイガの表現に工夫されて完成に至りました。
お二人とも画題の選定から黄金分割を使ったレイアウトまで真摯に取り
組んで下さり、初めてにも関わらず大変クオリティーの高い作品が完成した
と思っています。
機会を見てまたチャレンジして頂くと、新しい世界が見えるのではないかと
考えています。
風呂敷 小布
以前のブログにも書いていますが、風呂敷を愛用しています。
特に「濱紋様」という横浜捺染のデザインがお気に入りで
時々新作をチェックしては購入しています。
今回、購入したのは「そばちょこならべ」(手前)と「大玉文様」
(奥)です。
サイズは小布という50cm角で器の運搬に丁度いいのです。
風呂敷の結び方を教えておられる生徒さんが風呂敷は包むものによって
変幻自在なところが魅力とおっしゃっておられましたが、本当にその
通りだと思います。
そういう柔軟さを自分の心構えとしても持っておきたいですね。
目立たせない
藤那海工房 金繕い教室のSさんの作品をご紹介致します。
マット黒釉の大皿の欠けです。
ざらざらとしたテクスチャーがついた黒釉に馴染ませるように仕上げ
に採用されたのが薫銀泥です。
人工的に銀泥を燻したガンメタリックというか濃いグレーの銀泥です。
これが釉薬に馴染んで一見、どこが欠損したのかわからなくなっています。
この薫銀泥のいいところは蒔いた後に時間が経っても変色がないところ
です。
通常、銀泥というと硫化で変化が現れますが、蒔いた当初からこの濃い
グレーのままを維持します。
最初から狙いの色に出来ることや預かり物で返却後も同じ状態を維持
出来ることから好まれる方が多いものです。
大抵は今回のSさんの作品のように元々の釉薬に馴染ませる方が多いの
ですが、モダンな感じがする色味から敢えて目立たせる使い方も面白い
のではという意見もあり、今後お使いになる方のアイディアを期待して
いるところです。