カテゴリー別アーカイブ: 生徒さんの作品
茶碗の蓋
藤那海工房 金繕い教室のTさんの作品をご紹介致します。
お茶碗の蓋を金繕いされました。
こちらはお茶碗の蓋なのですが、本来あるべきお茶碗本体が失われて
しまっています。
蓋のみでも小皿として使用可能なので、手掛け(小皿として使う時には高台)
のほつれを金繕いされました。
ほつれが多数あったので、1ヶ所ずつ仕上げると逆に目立ってしまうので、
ぐるっと1周、口紅のように金泥で仕上げられました。
綺麗に完成しているのですが、使用時には見えなくなってしまいます。
でも完成度の高さに満足感を深めつつ使って頂ければ良いかと思います。
お茶碗の蓋だけになってしまったものは、骨董市などで流通しています。
小皿の時には裏側になってしまう部分に華やかな絵付けがされています
(お茶碗の時には表に見えるので)が、使うという意味は大きいと思います。
オードブル皿
藤那海工房の金繕い教室を受講されていたFさんの作品です。
9分割されたオードブル皿に蒔絵されました。
蒔絵は月、露芝とウサギです。
5箇所に入れた小皿を外しても成り立つように蒔絵が配置されています。
画像は未完成ですが、一部螺鈿にもチャレンジされています。
コロナ禍の今はままなりませんが、明けた後は制作の過程などをお話し
されながらの会食が実現すると思います。
Fさんに少しでも早く、そのような日が訪れることを祈っております。
溶け込ませる
カルチャープラザ公津の杜のIさんの作品をご紹介します。
お皿の欠けを元々の柄に溶け込ませました。
染付で唐草紋様のあるお皿が欠けてしまっていました。
実際の欠けの形は小さいのですが、元々の柄の続きが出来るように
仕上げられました。
一目で破損したとわかる形ではなく、元々の柄に溶け込んだのではない
かと思います。
もちろん欠損したままの形がいい場合もありますが、ちょっとした工夫
で変化が得られるのならチャレンジしてみるのもいいかと思います。
どう発想するかは自分次第。
元より良くなることが絶対条件ではありますが、「ねばならない」はあり
ませんので、自由に発想してみて下さい。
しべを蒔絵
カルチャープラザ公津の杜教室のTさんの作品をご紹介致します。
金繕いではありませんが、自作の陶器の絵柄に蒔絵した作品です。
椿の花を渋い色の染付で描かれたお茶碗です。
しべの先端を金泥・銀泥で蒔絵されています。
それだけなのですが、ずっと華やかになりました。
蒔絵は金繕いの仕上げだけでなく、加飾を目的にしても可能です。
ちょっと手間をかけるだけで雰囲気が変わりますので、チャレンジ
しがいがあるかと思います。
もしお手元に物足りない器がありましたら、蒔絵をお考えになって
みませんか?
デザートカップのステー
港北カルチャーセンターのTさんの作品をご紹介致します。
デザートカップのステー部が折れてしまっていました。
ご友人の陶芸作家さんの作品なのだそうで、クラシックな感じあり、モダンな
感じありの魅力的な作品です。
これのステー部が折れてしまっていました。
画像では分かりにくいのですが、ステーの丸く膨らんだ部分の下が破損部です。
デザートカップのように頭(カップ部)が重いと、ステー部をただ接着しただけでは
重みに耐えられず、再破損の危険があります。
Tさんもステー部の接合には芯を入れて頂きました。
金泥で仕上げてみると、ベージュ色の釉薬に馴染んで目立ちません。
しっかり再使用が可能になったという意味では金繕いの王道です。
頑張って金繕いされたご褒美として、Tさんのお手元で活躍していると思います。
受賞作
先日の「カルチャー芸術祭」で優秀作品賞を受賞したNHK文化センター
さいたまアリーナ教室のSさんの作品です。
以前のブログで途中の状態をアップしていますが、芸術祭に行けなかった
方から完成状態を是非拝見したいとたくさんリクエスト頂いていました。
同じさいたまアリーナ教室の方々はSさんが頑張って作業をしているのを
ご存じなので、皆様受賞を我が事のように喜んで下さいました。
ご本人も小さく目立たない作品なのにと感想を言っておられましたが、
やはり頑張りが見る人に伝わったのだと思います。
来年、同様の作品展が催されるかわかりませんが、出展をお願い出来る
力作をお待ちしております!
粉引の縁
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のOさんの作品をご紹介致します。
粉引の小鉢の縁がたくさん欠けていました。
粉引は素地と化粧土の活着が悪く、縁がボロボロと欠けてしまう場合があります。
基本的に欠けは全て埋めて頂きますが、悩まれるのは多数の仕上げをどうするか
ということだと思います。
粉引の色には金が合うので金でもいいと思いますが、目立ち過ぎると感じる方も
多くおられます。
その場合にお勧めしているのは銀泥の仕上げです。
銀泥が硫化する初期の過程でシャンパンゴールドになります。
この時が粉引の色に自然に馴染みます。
Oさんも多数の欠けを丁寧に埋められました。
銀泥の色は頃合に止めて頂ければと思います。
蘭鉢の金繕い
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のFさんの作品をご紹介
致します。
蘭鉢の割れの金繕いです。
蘭鉢とは蘭を植えるのに適した鉢のことを言います。
一般的な鉢と同様、屋外に置かれることから割れやひびが入った場合、補強を
することが必須になります。
根張りの他、結露で再破損してしまうからです。
Fさんの場合、接着した後、縁の下に糸を巻く方法で補強されました。
接合線と同様に釉薬に馴染む薫銀泥で仕上げられたので、違和感がないと思い
ます。
内側を見て頂くと、仕上げをしていないことがお分かりになると思います。
これは蘭を植えると内側には土が入るので、仕上げが必要ないからです。
鉢の金繕い独特の手法と言えます。
Fさんの丁寧な仕事で蘇った鉢には既に蘭が植えられていること思います。
釉薬に馴染んで目立ちはしませんが、鉢として再び使えるいい作品です。
渦巻き
NHK文化センター千葉教室のNさんの作品をご紹介致します。
煎茶茶碗のひびです。
意匠にも見えてしまうくらい印象的なひびの形です。
これを止めるのは問題ないかと思いますが、口径の小さい煎茶茶碗で綺麗に
仕上げることは大変です。
Nさんは苦労なさったと思いますが、美くしく仕上げなされました。
そもそもこのようなひびが生じた原因ですが、製造段階の問題の他、保管
しているときに重ねていることも考えられます。
このひびの形が当然、表にも影響したわけですが、こちらは絵付けを再現
するようにされました。
黄色の絵柄は「仏手柑」というミカン科の柑橘類で人間の手のような形をして
います。
日常ではあまり見かけませんが、お正月の縁起物として茶席に使われます。
その仏手柑を跨いでしまった仕上げの線に輪郭の黒い線を入れただけで、特徴的
な形がしっかり蘇りました。
Nさんがお返しになった持ち主はとても喜ばれたそうです。
大変でも喜ばれることが金繕いの達成感ですね。
着彩する
藤那海工房 西登戸教室のOさんの作品をご紹介致します。
繊細な柄のマグカップの割れです。
内側の状態を見て頂くと分かるように、割れと長いひびが入っています。
これが表になると繊細な絵付けを跨ぐように仕上げの線が入ってしまいました。
そこでOさんが行ったのが絵付けに合わせた着彩です。
新うるしの色を調合して絵付けの色に合う色を作り出し、仕上げの線の上に
着彩されました。
この方法はブログでも度々ご紹介していますが、器本来の絵付けを戻すような
感じになるので、Oさんのマグカップのように絵付けが大事な器の場合には
とても有効です。
ただ単純に色を混ぜればいいというものでもないので、試してみたい方は
あらかじめご相談下さい。
Oさんのマグカップの作者は婦人画報の表紙を飾るくらいファンの多い方です。
柄を蘇らせる意義は高かったと思います。






















