カテゴリー別アーカイブ: 生徒さんの作品
銀泥の渋い硫化
藤那海工房 西登戸教室のOさんの作品をご紹介致します。
急須の蓋の欠けを銀泥で仕上げられたのが、いい具合に硫化
したのを拝見致しました。
渋い金色に変化しています。
面白いのが縁の硫化が進んでいて、すでに黒くなっているところ
です。
銀泥はシャンパンゴールド、ピンクゴールド、青紫、黒と変化して
行きますが、その時間経過はご自宅の状況で違います。
今回、Oさんは急須自体の釉薬にマッチしていると現状での色止め
(硫化を極めて遅くし現状の色で止める方法)を行われました。
いずれにしろ変化の様子を時間経過と共にお楽しみ下さい。
程よく馴染む
港北カルチャーセンターのFさんの作品をご紹介致します。
黄瀬戸の大鉢です。
趣のある黄瀬戸の釉薬が美しい大鉢です。
薄手のせいか縁に欠けがありました。
形通りに欠損を戻した後、選ばれたのは金泥の仕上げです。
黄瀬戸の黄色い釉薬と金泥は馴染みがよく、想像以上に目立ち
ません。
欠けさせてしまったことを忘れてお使い頂ける完成度になりました。
仕上げをどうするか皆様悩まれるところだと思います。
セオリーとしては陶器は銀泥、磁器は金泥というのがありますが、
最終的には持ち主のお考え次第です。
お預かり品の場合はご本人にお決め頂くのが宜しいかと思います。
面白いものでお預かりものは、かなりの確率で金泥のリクエストに
なります。
「金繕い」「金継ぎ」のイメージが強いからなのでしょう。
表面のテクスチャーに合わせる
港北カルチャーセンターの方の作品をご紹介致します。
蓋物の割れです。
ざらざらとした釉薬が印象的な蓋物です。
本体の方が鳥脚型に割れていたのですが、これを金属粉で目立たせる
のではなく、馴染ませることにチャレンジされました。
ざらざらとした仕上げを敢えて選択したいという方は少なからずおられる
ので、様々な手法でのご提案を用意しています。
それは道具であったり素材であったり、狙いの感じに合わせて選択肢が
あります。
今回ご紹介の作品は色も合わせられたので、一見全くわからない感じに
なりました。
いわゆるピカピカの金属粉ではない仕上げをご要望でしたら、あらかじめ
ご相談下さい。
美しい鳥脚
NHK文化センター柏教室の方の作品をご紹介致します。
鳥脚型の割れの金繕いです。
ざっくりとした陶器に金泥の仕上げが程よく馴染んでいます。
安定の鳥脚型が美しいですね。
こちらは萩の絵付けが入ったお皿で、やはり鳥脚型の割れです。
萩の絵と合わせて蒔絵してもいいかとも思いますが、潔く金泥
が入っているのも美しいです。
鳥脚型は物理的な理由があって出来上がる形なので、金繕いしても
美しいものです。
今回の作品はその美しさが発揮されたもの。
シンプルですが王道です。
急須注ぎ口の補強
NHK文化センター千葉教室のAさんの作品をご紹介致します。
常滑焼の急須の注ぎ口の割れを和紙で補強されたものです。
急須の注ぎ口は突出しているだけに破損が多い箇所です。
さらに接着したとしても、またぶつけて破損させてしまう確率も高い
ところです。
ですので注ぎ口の割れは接着した後、和紙で補強するのをお勧めして
います。
Aさんの作品は和紙で補強した後の仕上げを鮮やかな弁柄色でなさり、
補強と元々の注ぎ口の境目に金泥の仕上げを入れられました。
通常、補強部分は本体に馴染ませて仕上げる方が大半なのですが、
まさに逆転の発想です。
私も例外なく目立たせない方法一択の人間なので、Aさんのお申し出には
正直驚きました。
画像をご覧頂ければ結果は一目瞭然。
素敵、の一言です。
敢えて攻めることの素晴らしさを教えて頂きました。
皆様、ぜひ参考になさって下さい。
ガラスのひびを金繕い
港北カルチャーセンターのTさんの作品をご紹介します。
夏らしくガラスコップのひびを金繕いされたものです。
宙吹きガラスのコップです。
螺旋を描くようにひびが入っていました。
ガラスの修復は陶磁器に準じた方法で行いますが、ガラスの特性に
従って独特なところがあります。
必ず概論を聞き、特性を理解してから取り組むようにして下さい。
Tさんの作品はラインを金箔で仕上げることによってガラスならではの
面白い作品になりました。
花器の金繕い
港北カルチャーセンターのFさんの作品をご紹介致します。
萩焼きの花器の金繕いです。
荒々しい白系の釉薬に金泥の仕上げが映えた美しい仕上がりです。
金の高騰が言われて久しく、このため金泥での仕上げを敬遠される
傾向にあります。
しかしこのように美しい作品を拝見すると金の効果の絶大さを実感
します。
色漆や他の素材(例えば螺鈿)など他の選択肢はありますが、やはり
金泥が最も効果的と思われる作品に関しては金泥の選択をお考え頂き
たいと考えています。
ガラスの金繕い
NHK文化センター柏教室のAさんの作品をご紹介致します。
ガラスの小鉢の金繕いです。
直径が8cm程度の小さなガラスの小鉢です。
これがかなりバラバラに割れてしまっていたのを接着されました。
ガラスは基本的には陶磁器の手法に準じて金繕いしますが、陶磁器と
全く違う点があるので注意が必要です。
最もわかりやすい相違点は透けることでしょう。
修復した内容が360度様々なところから透けて見えてしまうので、
対策が必要です。
これを私共では金箔を使って回避しています。
必要から使用する金箔ですが、これがガラスに映えてゴージャスさも
生まれます。
Aさんの作品も小さな小鉢には見えない迫力があるかと思います。
Aさんはあまりにバラバラに割れてしまったので、この小鉢を一度は
処分しようと考えられたそうですが、完成してみれば想像を超えた
一品になったのではないかと思われます。
ガラスは小さな欠損やひびももちろん金繕い出来ますので、是非教室で
ご相談下さい。
印判の大皿
NHK文化センター柏教室の方の作品をご紹介致します。
印判の大皿の割れです。
ひびの線は伸びていませんが、鳥脚型の割れです。
法則に従った形はやはり美しいですね。
銀泥で仕上げられていますので、いずれ硫化して釉薬の絵柄に馴染む
と思います。
このお皿は印判という手法で絵柄が入っています。
印判とは絵柄を転写して絵付けをする方法を言います。
それまで人が一枚ずつ手描きで図柄を描いていたのが、この手法に
よって大量生産が可能となり磁器の価格が大幅に下がりました。
このお皿は印判の中でも紙型印判といい、精巧にくり抜かれた紙型を
使用して図柄を転写しています。
かなり細かい絵柄のなので、安価な印判の中でも価値が高いと考え
られます。
従来、印判は骨董の中でも手に入りやすいものでした。
近年、その常識が覆り、数が少なくなっているようです。
インバウンド需要の影響とも聞きますが、もはや昭和のものが骨董の
領域に入って来ていることもあるかと思われます。