カテゴリー別アーカイブ: 生徒さんの作品
縁の複数の欠け
NHK学園市川オープンスクールのTさんの作品をご紹介します。
陶器の小鉢の縁がたくさん欠けていました。
陶器製にはありがちなのですが、縁が複数の欠けでガタガタになっていました。
さらに大変だったのが、欠けた部分にカビが発生してしまっていたことです。
以前のブログにも書いていますが、カビは漂白剤では死にません。
好みの環境にあれば、すぐに復活してしまいます。
ですので漂白剤で色を落としたあと、しっかり煮沸消毒する必要があります。
Tさんはこの工程をしっかり行ってから縁の複数の欠けを金繕いされました。
実はこの小鉢はお子さんが小さい時に陶芸教室で作られたもので、まさに
プライスレスの世界唯一の品になります。
多少の揺らぎはOKということで銀泥で仕上げられました。
その後、銀泥がシャンパンゴールド色に硫化したところで色止めを行い、完成
となりました。
陶器のカビ防止は洗浄の後、しっかり乾燥させるのが一番の予防です。
中途半端な乾燥状態で重ねて食器棚にしまってしまうのが主原因だと考えて
います。
世界でただ一つの品、金繕いして蘇りました。
片口の欠け
藤那海工房 西登戸教室のWさんの作品をご紹介致します。
片口の注ぎ口の割れと欠けです。
分かりずらいとは思うのですが、片口の注ぎ口が割れ、先端が欠けて
しまっていました。
恐らく作家さんの作品であろう器自体は陶器の揺らぎが素敵なのですが、
金繕いする側としてはどのように形を詰めていったらいいのか、迷う
ところではあります。
何となく周囲と自然に馴染ませればいいと言ってしまえば簡単ですが、
その尺度は曖昧です。
最終的にはご自身のフィーリングでお決めになって良いかと思います。
Wさんはその詰めの作業を行い、薫銀泥のガンメタリック色で仕上げ
られました。
元々鉄釉の斑点がありましたので、とても自然に仕上がっています。
ざっくりとした陶器の仕上げをなさる方には形の馴染ませ方、仕上げ方共
とても参考になる作品です。
じっくりご覧下さい。
タイルの窯傷
カルチャープラザ公津の杜のTさんの作品をご紹介致します。
Tさんは陶芸をご趣味とされ、そのお仲間からのご依頼で
タイルの窯傷を金繕いされました。
装飾的な紋様が描かれたタイルです。
そもそもこのような精緻なデザインのタイルが珍しいと思うのですが、これに
窯傷が入っていました。
陶芸をご趣味にされておられる方は多いと思いますが、焼成段階の問題で
完全な作品にならないことも多いかと思います。
それを救ってくれるのが金繕いということで、同時に習われている方も珍しく
ありません。
今回ご紹介のタイルも少々ズレが生じた状態でしたので、それを上手く解消し
銀泥で仕上げられました。
いずれ銀泥が硫化し、紋様と上手く馴染んでくれると思います。
窯傷は通常の破損によって生じた傷を直すとは全く違う工程を踏みます。
作業を始められる前に必ずご相談下さい。
ほわっと
カルチャープラザ公津の杜のSさんの作品をご紹介致します。
カップの欠けの金繕いです。
小ぶりな陶器カップに欠けがあったのですが、その形が角ばっていて
柔らかい器の雰囲気に合っていませんでした。
そこでSさんが選択したのが筆ではないもので仕上げる方法です。
元の欠けの形を隠しつつ、器の雰囲気に合う仕上げが出来ました。
銀泥を使っておられたので、程よく硫化したところで色止めを
されています。
Sさんのように既成概念に囚われることなく、こうしたいというご自分の
考えに素直に従うことが、素敵な作品に繋がったのではないかと思い
ます。
金繕いの教室では是非ご自分のお考えをお伝え下さい。
既存の技術でなくても、ご希望を叶えられるよう全力でサポート致します。
優美
NHK学園市川オープンスクールのYさんの作品をご紹介致します。
白磁の鉢、2点。それぞれ割れと欠けです。
少しマットな白い釉薬が美しい器です。
繊細な薄さが優美なのですが、修復する場合には大きなハードルに
なります。
Yさんは作業のひとつひとつを突き詰めて丁寧に進められる方で、
そのハードルを乗り越えられ、ついに完成に漕ぎ着けました。
器と同じく優美に仕上げられた美しさをご覧頂きたいと思います。
今は
カルチャープラザ公津の杜教室のIさんの作品をご紹介致します。
フリーカップの欠けとひびです。
Iさんは鮮やかなトルコ釉にどのように仕上げるのか、随分試行錯誤を
繰り返されました。
その結果、欠けは輪郭をはっきりさせない形で、ひびは器の元の柄に
絡ませるように、それぞれ銀泥で仕上げられました。
最終的に硫化して元の柄に馴染む予定でした。
しかし残念ながら依頼されたご友人に返却直後、割れてしまったそうです。
Iさんが同時に仕上げられたフリーカップもご紹介しておきます。
こちらも面白い割れ方が印象的な作品になりました。
薄手
NHK文化センター柏教室のKさんの作品をご紹介致します。
平鉢の割れの金繕いです。
画像を見て頂くと、お分かりになるかと思いますが、縁の部分がかなり
細かく割れています。
元々薄手の器なので、この細かい割れの接着は難しかったと思います。
完成すると何でもなく見えますが、このようなものほど難関です。
仕上げの銀泥の線も美しく描かれています。
あまりにサラッと出来ているので、大変さが伝わりにくいかもしれません。
何でもないように完成しているのはKさんがベテランの域に達している
証拠だと思います。
ぜひ参考にして頂きたい作品です。
諦めずに
産経学園ユーカリが丘教室のAさんの作品をご紹介致します。
スープカップの割れです。
安定の悪い割れ方をしていたので、少々ズレが出てしまいました。
Aさんは、そこを何とか頑張って埋めて完成に漕ぎ着けました。
結果、割れの線が面白い造形になって、楽しめる器になりました。
割れた破片が多いとか複雑な割れ方をしていると、金繕いに着手するか
悩まれるものです。
でもそういうものほど面白い造形が生まれて、完成の暁には教室の方々の
賞賛が集まるのです。
ぜひ怯まずチャレンジしてみて下さい。
お手元に金繕いで蘇り、金繕いした方が素敵になった器がやってきます。
窯傷の金繕い
JEUGIAイオンモール八千代緑が丘教室のTさんの作品をご紹介
致します。
窯傷の金繕いです。
青紫系の別素材が埋め込まれた陶器の大皿です。
縁の部分に窯傷が出来ていました。
窯傷とは焼成段階で生じたキズで、後天的に破損させたものとは異なる
形状をしています。
また人為的に生じたものではないため「神様のなせる技」として敢えて
痕跡を残すのがセオリーです。
Tさんの大皿は窯傷ではありますが、実用性を考えて直しの手法は窯傷
ならではの方法で直しましたが、きっちり埋めて仕上げをすることに
しました。
迷われたのがその仕上げです。
当初弁柄色を考えておられたのですが、銀泥の仕上げに変更されました。
結果、嵌め込まれている青紫系と色が合い、まとまった雰囲気になり
ました。
銀泥はいずれ硫化して本体のグレー系に馴染むようになります。
これはこれで良いかと思います。
仕上げは使用上は不要と言い切っても差し支えないものです。
あくまでも見た目の問題ですが、ご自身が納得いくまで検討された
方がいいと思います。
ありのまま
藤那海工房 金繕い西登戸教室のOさんの作品をご紹介致します。
最初は湯呑みのひびです。
貫入と言われる釉薬に微細な亀裂がある器はOさんの作品のように
貫入に沿った亀裂の入り方をします。
Oさんは忠実にそのままの形を仕上げられたのですが、これが最も
自然な形と思います。
このようなケースの場合、あえて自分なりの線で仕上げてしまうと
逆に違和感が生じることがあります。
仕上げをする際に迷われることがあるかもしれませんが、まずは
自然にそのままの形で蒔絵することをお勧め致します。
同時に仕上げて来られたOさんの作品です。
仕事が早いOさんはどんどん仕上げて来られます。