カテゴリー別アーカイブ: 生徒さんの作品
第1回拭き漆大会
藤那海工房土曜日クラスは、1年のカリキュラムを消化したあと、
受講の方々をご相談して、いろいろな工芸にもチャレンジする
ことになりました。
その第1歩が、拭き漆です。
金繕いは新うるしで行って頂いておりますが、本漆を体験して
頂くには拭き漆は最適と考えました。
題材にしたのは、お椀の他、茶托や折敷などです。
本漆の魅力は塗面の美しさに尽きると思いますが、漆かぶれには
注意しなければなりません。
ゴム手袋の他、皮膚に漆をつけないための注意事項をしっかり守って
作業して頂きました。
お椀の樹種は、それぞれで違うものを選択されています。
どんな感じになるのか、楽しみです。
含ませる量
藤那海工房土曜日クラスのUさんの作品をご紹介致します。
このコーヒーカップの直しは、手前の欠損がとても難しい形になっていた
のをどのように仕上げるのかがポイントでした。
少々不思議な形になっているのは、よくあるパターンで、もう少しダメージ
が強かったら欠けていたのが、ギリギリで止まっているというものです。
Uさんは、もともとの器の柄に似せたような雰囲気に仕上げられているので、
違和感がありません。
奥の丸い形の欠けには刷毛目が出ていましたが、許容範囲ですので、
使って頂いて、自分の蒔き方の善し悪しを見極めるとしても良いかと
思います。
こちらのお皿は、少々立ち上がった部分がかまぼこ型になっていて
欠けを埋めるのが大変難しいものでした。
それをクリアして、今回の講座に仕上げてご持参頂きました。
以前のブログに、大きい面積の欠損を仕上げるのであれば、お持ちの
筆の号数を上げ、太い筆を使用した方がよいと書きました。
こちらの仕上げには、その太い筆を使用してチャレンジされました。
ご本人としては、もう少し極めたかったようですが、十分合格点です。
今後は筆に含ませる量を加減して、よりスッキリとした仕上げができる
よう、期待しています。
破損の理屈
NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介
致します。
割れたお皿を接着されたものです。
とても不思議な感じで割れているように見えますが、この形は
実は珍しくありません。
高台周辺の厚みの同じ所を周回して、この形が生まれるのです。
しかし目に立つ破損で、とても面白い仕上がりとなりました。
ペーパーナプキンホルダーがバラバラに割れたものを接着し、
銀系の泥粉で仕上げられました。
これは大変な労作で、接着も大変でしたし、欠損していた部分も
たくさんあったので、それを埋めるのも大変でした。
なるべく目立たない仕上げをご希望だったので、いろいろ試行錯誤
して頂きましたが、最終的には銀系に落ち着かれました。
よいご判断だったと思います。
こちらも仕上がりが面白い結果になった器です。
少し前にご紹介しました器を同じように、内と外が違う状態なの
です。
内側は単純な鳥脚型なのですが、外側に複雑にヒビが入っているのが、
仕上げの段になってわかったので、加筆されたそうです。
これで衝撃の方向がわかるのですが、外側の方がダメージが強く出た
ということだと思います。
Hさんは根気よく取り組んで下さっているので、今後も手塩にかけた
作品が完成してくると思います。
またブログで紹介させて頂くのを楽しみにしています。
魅力の線
NHK学園市川オープンスクールの4月から受講を始めた方の
作品をご紹介致します。
ヒビを止めて、仕上げをされました。
ヒビ自体がとても魅力ある曲線を描いています。
これは人が意図して作れるものではありません。
金繕いの面白さは、このようなところにあると思います。
あまり深刻ではないヒビだと、早い段階で仕上げをし、完成させる
ことが出来ます。
これは毎週金曜日を作業する日と決めて、着実に作業して下さった
ことも重要な要素です。
作業前に講座でご説明した内容を記したノートを確認されていると
聞き、とても嬉しく思いました。
講座が月に1回なので、なかなか基本の作業を覚えて頂くのが難しい
と思います。
しかしこのように確認をしながら作業して頂くことが、習熟に結び
つくと考えています。
ダイナミックな線
NHK文化センター ユーカリが丘教室のTさんの作品を
ご紹介致します。
確か菓子鉢としてお使いだったかと思いますが、陶器が割れて
しまったのを接着し、金泥で仕上げられました。
割れの線が、ダイナミックに入っています。
器が大振りなので、この線が効果的な景色となっています。
しかしご本人としては線を均一に描きたかったのが、途切れ途切れに
なってしまったと、少々不本意なご様子です。
これは器の形が複雑で、表面もざらざらしているので、筆の運びが
上手くいかなかったからのようです。
そこでオススメしたのが、筆の号数を上げて太い物を使うことです。
仕上げ用として最初にお求め頂いているのが0号ですが、これは
だいたい1cm角くらいならば楽に仕上げが出来ますが、それ以上に
なると難しくなってくるはずです。
特に今回Tさんが取り組まれた器は、表面のざらざらに負けないように
長い距離を仕上げなければなりませんので、たっぷり新うるしを含ませ
られる太い筆が必要だったかと思います。
筆が太くなると先も太くなるイメージがあるかもしれませんが、
オススメしているメーカーのものですと、穂先が利いているので、
1本で細い線も、ベタ面も仕上げることが出来ます。
ご興味のある方は、教室でご相談下さい。
モダンな仕上げ
NHK文化センター柏教室のUさんの作品をご紹介致します。
横から見ると、きれいな台形をしたモダンな器です。
これが割れたものを接着し、欠損を埋めて金泥で仕上げて下さいました。
割れの接着が難しく、ズレが出てしまったので、それの修正に難儀
されましたが、完成してみると、割れの線がモダンな器にとても
マッチしていて、元からこのデザインだったかのようです。
これが金繕いの面白いところですね。
ところで仕上げが畳つけと呼ばれる高台がテーブルに接する部分に
差し掛かった場合、仕上げを長持ちさせる工夫があります。
そのような修復をなさっている方は、教室でご質問下さい。
表裏
NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介
致します。
ご本人は細い線を描く限界とおっしゃいますが、器の感じと
丁度良いバランスだと思います。
ヒビの美しさが自然に表現されているのも、好感度が高い理由
ではないでしょうか。
また釉薬に金泥が映えて、とても美しいです。
面白いのが、器の表と裏でキズの出方が違うということです。
これはあり得ることです。
器の質と、破損の衝撃との兼ね合いで生じたことと思われます。
Hさんは熱心に受講され、練習も怠らないので、どんどん完成度
が高くなっています。
難しいので、もっと上達してからとおっしゃっている器も
積極的にチャレンジして頂きたいと思っています。
マット釉になじむ
藤那海工房土曜日クラスのTさんの作品をご紹介致します。
割れてヒビが入っていたものを、ヒビ止めし、接着されました。
クリーム色のマットの釉薬に金泥が程よく馴染んで、綺麗な仕上げと
なりました。
いざ仕上げとなると腰が引けてしまう方が多いのですが、Tさんは
思い切りがよく、積極的に仕上げに挑戦するところがとてもいいと
思います。
やり直しも厭わず、コンスタントに仕上げをしているので、どんどん
上達しています。
ですので講座の際には、かなり細かいテクニックを解説しています。
ところでマット釉は、やさしい雰囲気が好まれてお持ちの方も多いと
思いますが、修復の際には気を遣わないと仕上がりが損なう場合が
あります。
特に始める前の準備が大切なので、マット釉の器を直されたい方は
事前にご相談下さい。
柄に色合わせ
NHK文化センター千葉教室のKさんの作品をご紹介致します。
桜の花びらで欠けの直しのイメージを掴んでから、実際の
仕上げにチャレンジされました。
画像右下の角を銀で仕上げられています。
仕上げた直後の銀は白くて、お皿の色と馴染んでいます。
このような状態を見ると、銀が格が高いというのがよくわかります。
このお皿は作家さんの作品で、古典文様のような愛嬌のある柄が
描かれています。
Kさんのお考えとしては、少々硫化させて柄の色に馴染むのを待つ
とのことです。
Kさんは、実際の仕上げをしてみて、いろいろなことがわかったそうです。
確かにフリーに描いて構わない桜の花びらと違って、欠損部を隠すように
塗るのは難しいものです。
それが分かって頂いただけでも、大きな第1歩です。
今後どんどん仕上げに挑戦して頂いて、より上達されるのを楽しみに
しています。
大きい欠けの直し
NHK文化センター ユーカリが丘教室のIさんの作品を
ご紹介致します。
大きく欠けていたところを埋め、金泥で仕上げられました。
金泥の直しが、力強い蛸唐草の文様に負けていません。
金泥の光沢感も綺麗です。
Iさんは欠損の埋め方が大変お上手なので、これが仕上げに好影響なの
だと思います。
大きさのある仕上げの場合、小さい仕上げよりも注意が必要になってきます。
これは以前にも書いていることですが、復習を兼ねて再録したいと
思います。
まず新うるしのコンディションが大事です。
粘度はどうか、口金の状態はどうか等で、使う道具も変わります。
さらに塵埃が入らないように器の洗浄から注意し、室内の清掃にも
気を配ります。
テクニックとしては、筆の太さに負うところが大きくなります。
また筆を使わない方法を選択する場合もありますので、欠けの形状に
よってご相談下さい。
最後の工程となる仕上げです。
よりよい仕上げをお考えでしたら、自分はどのようなことをすれば
いいのか、教室でお尋ね下さい。

















