カテゴリー別アーカイブ: 基本のき

財前謙展

原一菜先生の知人である書家・財前謙先生の個展を拝見して
来ました。

漢字あり、かなあり。
掛け軸あり、屏風あり、巻紙あり。
と様々なスタイルの書が展示されています。
表具に若手の方を起用して、挑戦的な試みもされています。

変態仮名と呼ばれる仮名の連綿とした文字ではなく、現代人が読める
かな書になっています。

しかし何よりお優しい先生のお人柄が偲ばれる文字です。
眺めているだけで幸せな気分になる感じです。

会場には原先生の花生けもあります。
木曜日で花材を交換されるそうなので、水曜日までとそれ以降と
ご覧になるのもいいかと思います。

会場は銀座幸伸ギャラリー。
会期は4月7日日曜日までです。


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要注意!ガラスのキズ

昨年末からガラスの修復を行っている方にアクシデントが続き
ました。
直している欠損以外にキズを作ってしまわれたのです。

赤いテープで囲われた中央にキズが見えると思います。
原因は紙ヤスリから出た研磨剤のカスと思われます。

対応策は、
1.紙ヤスリは耐水ペーパーを使い、水に浸してカスを洗い流しながら
使用すること。

2.削りの作業中は削りカスを回収して処分出来る物を下に敷くこと。

例えガラスの直しの作業で紙ヤスリを使っていなくても、下に敷いて
いる物が同じ物ですとカスが残っていてガラスをキズつけます。
漆器の直しも同様なので、習慣つけると良いかと思います。

直していた箇所以外にキズがつくと余分な作業が増えるだけでなく、
ショックも大きいかと思います。
紙ヤスリの使用については細心の注意を払うことをオススメ致します。


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アロマライトの金繕い

NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介致します。
アロマライトのガラスが割れていたのを、金繕いされました。

加熱されるガラスの場合、耐熱ガラスである可能性が高いです。
耐熱ガラスは含んでいる成分によって、金繕いが難しいことがほとんど
なのですが、Hさんのアロマライトは接着に成功しました。

接合線の破損を金で埋め仕上げられた後、糸を巻いて補強しています。
これはランプの部分にはめることが、接着部分を広げる可能性がある
からです。

補強の糸について色をどうするか悩まれたのですが、結局ガラスの色と
同化するピンクにされました。
これがライトをつけると、ガラスに馴染んでいい感じに見えます。

ガラスであること、加熱される、嵌めるなど色々注意するポイントがある
アロマライトです。
作業を始める前に、ご相談下さい。


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レリーフも復元

私自身が金繕いし、先日お返しした煎茶茶碗をご紹介致します。


片手に収まる小さいお茶碗ですが、小さい破片もある割れでした。
工夫したのが表の花形のレリーフです。
盛り上げて花が描かれているのですが、ちょうど割れが入って、複数箇所が
欠損していました。
それを丁寧に復元し、花の部分だけ白金泥(プラチナ)で仕上げてあります。

和洋問わず、形も様々にレリーフのある器は多くあります。
金繕いの際にそれをどこまで再現するかは悩まれるところかと思います。
しかし極力再現を心掛けられますと、格段に完成度は上がります。

返却後、関係者の方々から完成の状態に大変ご満足頂けたとお礼状を
頂戴しました。
このように喜んで頂けると本当に励みになります。
レリーフの再現を疎かにせず、粘って頑張って良かったです。
こちらこそ、ありがとうございました。


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江戸屋さんの漆刷毛

漆刷毛や江戸屋さんは以前のブログでご紹介してきました。
今回、江戸屋さんの引き出しに漆刷毛が収められているところを
撮影させて頂けましたので、ご紹介致します。

分、寸の単位で色々なサイズがあります。
江戸屋さんの漆刷毛は「通し」といって、先端から尾部まで毛が
入っています。

この人間の頭髪を使った刷毛は江戸時代に発明された物ですが、人間の
髪の毛がいいと至るまでにどれだけ試行錯誤されたのでしょうか。
ここにも日本人ならではの工夫を感じます。

短面に板が回っているのがお分かりになるかと思います。
これを切り、毛を仕立てる必要があります。
すぐ使える状態にはなっていませんので、ご注意下さい。


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革の筆巻き

生徒さんのオリジナル筆巻きご紹介シリーズです。
よみうりカルチャーセンター大宮教室のHさんの持ち物です。


革のハギレを利用したシンプル、簡単な作りになっています。
適当なサイズにカットした革の一部にカッターで切り込みを入れ、
紐を通しただけです。

特に袋状にされたりはしておらず、単純に1枚の革です。
これで筆は落ちないそうなのですが、革の裏側が適度な滑り止めに
なっているのかもしれません。

ご本人の反省点は紐を通す穴を2つ開ければ良かったということです。
というのは現状の1つ穴だと紐の取り回しを考えないと結べなくなって
しまうからです。

今まで拝見した中で最もシンプルな構成の筆巻きです。
縫い物が苦手な方でも簡単に出来るので、参考になさって下さい。


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ルーズリーフ マニア

以前のブログでもご紹介していますが、メモ魔を自認する私は
ルーズリーフを愛用しています。

画像の左から金繕いの手順を記録しているもの、各教室の講座内容の記録、
かな書の1字1字について注意事項を記録しているもの、一番右は花活けの
お稽古内容の記録です。
プライベートのものを含めれば、まだまだあります。
こだわりはA5版に統一していることでしょうか。

最近お気に入りなのが、右の2つ。
テフレーヌという商品で、真ん中辺りのリングがない分、中心寄りの記入が
しやすくなっています。

ルーズリーフのいいところは、ページの足し引きが簡単なことにつきます。
見出しで分類も出来ます。

金繕いの教室に通われている方には、レジメとメモが同居するよう工夫されて
いる方がおられます。
A4版のリングファイルにレジメとメモをファイリングされている方、レジメを
縮小コピーしてB5版にし、ルーズリーフでメモを取られている方など。
いずれも1箇所に情報が集約して、とてもいい方法だと思います。

技術は習っても一度で記憶出来るものではありません。
ご自分に向いた探しやすい方法で整理されるのをオススメ致します。


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漂白中

先日、世田谷ボロ市で購入した器を漂白中です。

蕎麦猪口のひびには、まだまだ汚れが入っていますが、だいぶサッパリと
してきました。

漂白で時々ご質問があるのが「漂白して見えなくなってしまったひびは
ひび止めしなくてもいいんですよね。」というものです。
これの答えはもちろん「否」です。

見えなくなったのは、ひびに入った汚れであって、亀裂が入ったという欠損が
直った訳ではないからです。
ひびは先端に水蒸気が入ることによって進行することがわかっています。
金繕いしなければ、そのままひびは進行し、最悪割れに発展するかもしれません。

先日Yahoo!ニュースに割れた器が牛乳で煮ると直るという話題が出ていました。
金繕いを習っておられる方なら、このニュースが荒唐無稽だとお分かり頂けると
思います。

何事も論理的でないことは、あり得ないとお考え下さい。
何のために行うのか真の理由がわかっていれば、作業に迷うことはないと
思います。


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美吉野紙の保管方法

伝統的な漆濾し紙の吉野紙に対し、現在一般的に濾し紙として
使われているのが、レーヨンなどの合成繊維で作られた「美吉野紙」
です。

いくつかサイズがありますが、私の購入しているのは28cm ✖️ 54cmの
もので、半紙が長くなったような大きさの物です。

これを仕上げの時に使う場合は、小さくカットして使います。
厳密な大きさの決まりはありません。
半分に切ってを繰り返すと、だいたい7cm角くらいのサイズになります。
この程度の大きさで構いません。

保管は削りカスや紙ヤスリの粉などがつかないように、何らかの袋に入れて
頂ければ良いかと思います。

私は透明のジップ袋に入れています。

仕上げの際には四つ折りにして使います。
のりうるしの時のようにキャンディ型にはしません。
具体的に実演しますので、教室でお問い合わせ下さい。


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冷蔵庫で保管

本漆のチューブの保管方法について、ご説明が足りなかったようなので、
改めて書きたいと思います。
基本は立てて冷蔵庫保管です。

冷蔵庫内は本漆が固化しにくい低温低湿の環境であることが大きな理由
ですが、特に生漆や瀬〆と言われる漆の樹液そのもので加工されていない
ものは「なまもの」感覚があります。

漆の固化によってキャップが開かなくなってしまった時は、熱湯の利用で
簡単に開きます。
しかしこれも近日に使用したものでないと不可能になります。
数年キャップを開けていなかった場合は尾部のカシメてあるところを開け、
別途用意した空きチューブに詰め替える必要があります。

カブレの問題を考えると、チューブの詰め替えが簡単ではないとお分かり
頂けると思います。
出来れば使用の都度、キャップについた本漆を拭い、開かなくなるのを
避けるのが一番かと思います。

ちなみに生漆や瀬〆は、開栓後1年を越えると固化の程度が悪くなります。
出来れば早々に使い切る算段をされた方が良いでしょう。


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