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「すぐ塗れ〜る」は本漆
以前のブログで書いているのですが、マニュキュア瓶に入った
本漆が「すぐ塗れ〜る」という商品です。
漆かぶれの危険を回避し、簡便に本漆を扱うことができる画期的な商品ですが、
封入されているのは「本漆」であることを忘れてはいけません。
なぜか中身が新うるしと誤解された方がおられまして、漆かぶれになりました。
直接手で塗ったところを触ったり、作業着に付着させてしまったようです。
幸い深刻な状態にはならず、綺麗に治ったので良かったのですが。
理由は扱いやすいイメージを持つマニュキュア瓶だからでしょうか?
いずれにしろ、改めてご説明しなければと考えさせられました。
幸和ピンセット工業に行く
都内で精密なピンセットを製作しているメーカーがあるというお話を
聞き、実物を拝見しに出かけてきました。
「幸和ピンセット工業株式会社」さんです。
サンプルとして見せて頂いたのが、こんなにたくさんあります。
中にはリード線をロックしたまま保持できるものや、逆ピンセットと言って
押すと開くなど珍しい形のものもあります。
金繕いの作業に使えそうなものをピックアップしたのが、こちら。
細さ、厚み、長さ、端の形状など、微妙な違いでバリエーションがあります。
最も繊細なタイプの先端です。
海外の品でも同様のものはありますが、価格的には3倍以上します。
海外品との違いもお聞きしてみました。
同じステンレスでも素性に違いがあるものを使用していたり、製造工程にも
違いがあるようです。
その結果、錆が出たり、合わせがズレていたりと問題がある製品もあるとか。
つまみ細工やつまみ絵などの工芸の他、まつ毛を扱う美容関係などの
方々が、実物を見たいといらっしゃるそうです。
道具は自分の技術を助けてくれます。
いい道具が欲しいと思うのは、どの世界にも共通かもしれません。
特に幸和さんのように誠実にものつくりをしているところなら、なおさら
です。
最終的にこれはと思うものを購入してきました。
もしワンランク上のピンセットをご要望の方がいらっしゃいましたら、
ご相談下さい。
長い線の仕上げ
NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介致します。
長さもあり、欠け部分もあるひびの仕上げです。
このような複雑な仕上げをする場合には、手順に悩まれると思います。
一般的には内側から仕上げるのをお勧めしています。
外側から仕上げると、触れてしまって痛めてしまう恐れがあるからです。
Mさんの作品のように長さがあると、一気に仕上げるのは難しいかも
しれません。
その場合には何回かに分けて仕上げるのが、確実です。
何回かに分けると重なりをどうするかが、問題になります。
これを解消する方法は、教室でご確認下さい。
Mさんは、私の生徒さんの中で最も長く受講頂いている方です。
上の画像のような欠けの仕上げは、難なくこなされています。
仕上げは経験が一番です。
修正の方法はたくさんあります。
どんどん挑戦してみて下さい。
削りカスを払う
金繕いの作業中にいろいろ削りカスが出ることがあります。
それを何で払うかというご質問を頂きました。
ティッシュペーパーで払ってしまうこともあるのですが、
ティッシュは様々なものを含んでいますので、なるべく避けたい
と考えています。
自宅で使用しているのは、ペンキを塗る刷毛です。
100円ショップで入手した安価なものですが、刷毛は豚毛です。
腰がしっかりしているので、払った感じは悪くありません。
以前もっと使いやすい道具を生徒さんから教えて頂いているのですが、
未だ入手に至らず、画像のもので代用しています。
これでなければというものはありませんので、入手しやすく、使いやすい
道具をお使い下さい。
自然乾燥はどのくらい?
仕上げをする前に、中性洗剤とメラミンスポンジでの洗浄を
お願いしています。
その後余計な付着物を避けるために自然乾燥をしていただくよう
お話していますが、どのくらいの時間行えばいいか質問が続き
ました。
「何日置けばいいですか?」という質問だったのですが、それ程の
時間は必要ありません。
基本的には日常の食器洗いで乾く時間と同じで結構です。
これをさらに短縮する方法がありますが、少々実演が必要ですので、
教室でご確認下さい。
弁柄色のもみじ
平蒔絵のカリキュラムとして「もみじ」を描いて頂く場合が
あります。
特に体験講座で桜の花びらを描いて頂いた方には、ステップアップ
してとお願いしています。
JEUGIAカルチャーセンターイオンモール八千代緑が丘教室の
Tさんの作品をご紹介したいと思います。。
先月「置き目」という図柄の転写技法を講習した上に、もみじを描かれた
のですが、新うるしの弁柄色を生かして制作されました。
そもそもバックに入った流水紋の入れ方が良いのですが、もみじが
ひとつひとつ綺麗に描かれています。
また置き目の流水紋に対してはらはらと舞い散るようにレイアウト
されたのが、とても効果的です。
さらに大きさに大小あるのが、遠近法のように奥行き感を出しています。
このお皿は練習として制作して頂いたものではありますが、金•銀泥の
蒔き方、筆の扱い方など、同時にいろいろ勉強出来ます。
また実際使用されますと、蒔くタイミングが適切だったのかという検証も
出来るのです。
絵を描くのが苦手な方でも、良い機会と思って積極的に制作して頂けたら
幸いです。
ちりめんじわ
新うるしの塗り方では、厚塗りは厳禁ですとお願いして
います。
厚塗りすると「ちりめんじわ」が出来てしまうからなのですが、
どんな状態を指すのか解説したいと思います。
塗っている表面に細かいシボが出来ているのが、おわかりに
なるかと思います。
この状態を「ちりめんじわ」といい、表面は乾いていますが中は
柔らかく、5〜10年は固まりません。
この問題を回避するには、ひらすら薄く塗るしかないのです。
ところで「ちりめんじわ」の「ちりめん」とは何かというと、織物の
平織りの手法の一つを指します。
縦糸によりがないもの、横糸によりがあるものを使って織ると、シボ
(表面の凸凹)が出来ます。
上の画像は絹のちりめん織りを撮影したものですが、状態をよく
言い表した言葉だと思います。
印をつける
いくつかのパーツに割れたしまった器の接着がズレてしまうと、
その段差を埋める必要が出てきます。
作業を進める時に大切なのが、どう段差がついてしまっているかを
慎重に見極めることです。
見極めたら、次は印をつけます。
上の画像はNHK文化センター千葉教室のKさんのものです。
少々複雑な割れということもありますが、段差が切り替わっている
ところがありますので、しっかりテープに状態を記入して、
わからなくならないようにされています。
このように印をつけて作業しないと、適当に作業してしまいがちです。
その結果、大きなロスが生じます。
後々の手間を避ける為にも、ぜひ印をつけてから作業されるのを
オススメ致します。
銀の硫化課程
銀は硫化の課程の色が綺麗ですと、ブログで度々ご紹介しています。
仕上げ直後の白から、まずシャンパンゴールドになります。
この色が派手過ぎない金色なので、好まれる方が多いです。
次にピンクになるのですが、この期間が意外に短く、なかなか目に
つかないのです。
丁度作業中の器がピンク色になったので、ご紹介しようと思います。
画像のほぼ真ん中に写っている葉が、銀箔で仕上げたものです。
当初銀色だったものが、シャンパンゴールドを経て、ピンクになりました。
画像ではちょっと銅色っぽいのですが、実際は青味があります。
このあと銀は青紫になって、黒(いぶし銀)になります。
青紫の時には、染付けの柄と同じようになる予定です。
この器の場合バラバラに割れてしまっていたのが、一部の葉を銀箔で
仕上げることで印象を和らげること考えます。
金よりローコストで、楽しみありの銀です。
金とは手順が異なるのを確認の上、挑戦してみて下さい。
和食器=陶器?
金繕いを始める際に重要になるのは、陶器か磁器かを見極め、
下準備をするかしないかを判断することです。
よく和食器=陶器、洋食器=磁器と考えている方が多いのですが、
これは誤りです。
和食器、洋食器というのは用途の区分で、素材とはイコールには
なりません。
陶器と磁器の判別の仕方は以前のブログに書いていますが、改めて
整理してみたいと思います。
陶器は土を固めて、ガラス質の釉薬を掛けて焼成したものです。
釉薬の掛かっていない高台裏には土の茶色が見えています。
低い温度で焼かれているので、叩くと鈍い音がします。
磁器は石の粉を固めて、ガラス質の釉薬を掛けて焼成したものです。
釉薬の掛かっていない高台裏には石の白い色が見えています。
高い温度で焼かれているので、叩くと金属質の高い音がします。
陶器は下準備が必要ですが、磁器はほぼ不要です。
スムーズな出だしのために、どちらなのか判断出来るようにして
おくとよいと思います。