カテゴリー別アーカイブ: 基本のき
蒔筆 汚れると…
昨年1月のブログで、蒔筆に関する記事を書いています。
その時に蒔筆が汚れた状態で仕上げをすると、良くない状態に
なってしまうと書きました。
その良くない状態の筆をお持ちの方がおられましたので、撮影
させて頂きました。
新うるしと金泥がコテコテになって穂先に付いています。
このため仕上げをしたところが、ホコリをまぶしたようにザラザラに
なっていました。
実はこのザラザラの仕上げ状態を見せて頂いて、蒔筆の状態が
悪いと判明したのです。
こうならない為にはどうするかと言うと、教室で説明している
手順を守って頂くだけなのです。
ぜひもう一度復習してみて下さい。
ところで他の教室で蒔筆がコテコテになってしまったので、塗装用の
毛が硬い筆をお使いになって、やはり仕上げ面が荒れてしまった方が
おられました。
蒔筆は羊などの柔らかい毛を使っているところにも、意味があります。
ちなみに撮影させて頂いたコテコテの筆は、昨年1月のブログに書いた
通りの方法で、見事新品のような柔らかさを取り戻しました。
※昨年1月の記事は「蒔筆」と検索すると出てきます。合わせてご覧
下さい。
布は敷かない
作業をする時、何を敷いているか?という質問がありましたので、
ブログでもお答えしたいと思います。
自宅での作業では新聞紙をダイニングテーブルに敷いて作業して
います。
これは汚れたり、削りカスが出た場合、惜しげもなく処分できる
からですが、ホコリが出ないというのが最大の理由です。
以前のブログでも書いていますが、仕上げをする際にはホコリは
大敵です。
特に大きい面積を仕上げる場合には注意が必要です。
カルチャーセンターの教室で、テーブルに布を敷いている方が
多くおられます。
これはテーブルに直に器を置くと破損が気になるからだと
思われますが、日本人は物を置く時に下に何か敷くという習慣が
あるのも大きな要因になっていると思います。
しかし金繕いで布は、仕上げの際のホコリの発生源になります。
また布を敷いた上で削りの作業を行ったまま仕上げをすると、
ホコリ+削りカスという2つの問題を抱えることになります。
加えて破損を回避したいはずだったのに、布目に器を引っ掛けて
破損する方も少なくありません。
通常の作業で布を敷いていることに、あえて言及してはおりませんが、
仕上げを行う際には布の撤去をお願いしています。
いいお作法と、いい作業とは違うのです。
よく切れる刃
カッターの切れ味のよい物はないかとご質問を受けましたので、
ご紹介しようと思います。
OLFA(オルファ)から「黒刃」というプロ仕様の替刃が販売されて
います。
刃が薄く、切れ味は通常の替刃より鋭いです。
金繕いにおいて、ある特定の作業には適していますが、器に触れる
作業には注意が必要です。
この点を踏まえて一般の替刃と使い分けられるのであれば、とても
有効な道具になってくれると思います。
ちなみに販売先ですが、文房具店より、東急ハンズなどのDIYショップ
の方が取扱いがあります。
春慶塗りの直し
春慶塗りは、その透明感のある塗面の美しさから人気があります。
ですので修復のご希望も多い漆器です。
ご紹介するのはNHK文化センターユーカリが丘教室のIさんの
作品です。
春慶塗りのお盆に、お湯のみの高台型に変色が生じていました。
それが塗り直しを行うことで、すっかりわからなくなっています。
修復前の画像を撮影させて頂けば良かったのですが、直してしまうと
どこに変色が生じていたのかわかりません。
特にIさんは作業が丁寧な方なので、これだけの成果が出たと言えます。
陶磁器の修復は金なり銀なりで仕上げられるので、はっきり場所が
わかりますが、漆器はわからなくなってしまいます。
漆器の修復は陶磁器とは違った難しさがありますが、基本の技術を
終えられた方には、是非挑戦して頂きたいと思っています。
紙ヤスリの傷
修復の過程で紙ヤスリはお使いにならないで下さいとお願い
しています。
それは以前のブログに書いたように、紙ヤスリの硬度が高く、
必ず器の方が傷つくからです。
画像中央に引っ掻き傷のように細かく入っているのが、紙ヤスリに
よる傷です。
このように傷ついた器をそのまま使用しますと、ここに汚れが溜まって
不衛生な状態になってしまいます。
この傷を直すことは、一般に出来ないと言われています。
なぜ使わないで下さいとお願いしているか、おわかり頂けたかと思います。
欠けたり割れたりした器を直すための金繕いです。
器に不要な傷をつけずに完成したいものですね。
チューブの保管
新うるしのチューブがあかなくなったらどうしたらいいかと
いう話は、昨年のブログにアップしています。
その際の末文に保管方法にも触れていますが、質問がありましたので
もう少し詳しく説明したいと思います。
そもそもチューブがあかなくなるのは、口金の部分についた新うるしが
硬化してしまうからです。
これを避けるためには、使用の都度、口金の部分をティッシュペーパー
などで拭いておけばよいのです。
出来ればキャップの中に溜まった新うるしも拭いておくのがよいでしょう。
口金に新うるしが硬化してしまって、体積してしまっていたら、
カッターで削り落とすのが早道です。
口金にしろ、キャップにしろ、固まりが付着していれば、キャップが
きちんと締まりません。
この状態でチューブを横にして保管していれば、最悪中の新うるしが
流れ出してしまうこともあります。
口金、キャップを拭く
立てて保管する
この2点が快適に新うるしを使う方法です。
ところで口金に油を塗ったらどうか、という質問を受けましたが、
新うるしが油分と相性が悪いのは教室で説明している通りです。
つまり口金に油を塗るのはオススメ出来ません。
着色セロハンテープ
マスキングをする際に、普通の透明のセロハンテープでは見にくいので、
色つきのセロハンテープがないかと探してみました。
そうしたところニチバンで、産業用セロハン粘着テープとして販売されて
いるのを見つけました。
とりあえず1巻、青色のものを購入してみました。
シール止めなどの包装用というだけあって、厚みがあり、しっかり
しています。
ビニールテープほどではありませんが、思ったより透け感がありません。
教室に持ち込んで、いろいろな方に試してみて頂こうと思います。
是非試してみたいという方は、お申し出下さい。
完成しました
少し前に仕上げ直前の状態をアップしました猪口が完成しました。
決まった先はないのですが、参考作品として、どこかに展示して頂く
予定です。
特に見て頂きたいのが、右の欠けの仕上げです。
再度、仕上げ前の状態を見て頂きましょう。
欠けの右側が釉薬が薄く剥離しそうになっていて、新うるしが入り
込んでいます。
全体の形も四角く角が出ていて、あまり気に入った感じではありません
でした。
それで欠けの形通りではなく、仕上げてみました。
これは欠損が触ってわからないくらい平滑にしてあるので、可能な
仕上げです。
平滑にするには根気が必要ですが、欠損の形通りに仕上げるにしても、
形を変えるにしても、仕上げの自由度が上がるのです。
もちろん凸凹が残っていれば見映えが落ちますが、自由に出来る
という意味でも根気よく作業する意味があるかと思います。
ウレタン塗装と格闘中
ウレタン塗装が剥げかけたレンゲを、本漆での塗り直しにチャレンジ
していますが、以前のブログで斑になってしまったと書きました。
その後これは紙ヤスリで落としたつもりのウレタン塗装が取れきれて
ないことが原因とわかりました。
そこで再び紙ヤスリをかけ、拭き漆をしてみました。
しかしまだ斑です。
実は黒く見えるところが、本漆が木地にしみ込んでいるところなので、
全体が黒くならなければならないのです。
まだ薄茶に見えるところは、ウレタン塗装が残っているところという
訳です。
これでまた薄茶の部分に紙ヤスリをかけ、拭き漆をしての繰り返しをして
いくことで、均一の色になっていく予定です。
一部が剥げてしまっていたとはいえ、ウレタン塗装がしっかりいているの
には驚きさえ感じます。
木地から塗るのが一番とは思いますが、難儀しながらも日用品の補修が
出来るのも漆塗りの楽しいところだと思います。
金箔貼り皿
貝合せで学んで頂いた金箔貼りの応用で、お皿に貼るというカリキュラムが
各教室でご好評頂いています。
先日制作して下さったNHK文化センター千葉教室のHさんの作品を
ご紹介致します。
画像上と下左のお皿は、それ自体のテクスチャーが金箔にも反映されて
おもしろい効果が出ていました。
下右のガラスのお皿も、手作りのやわらかい形に金箔が合って、とても
美しい作品に仕上がりました。
いずれも金箔が華やかで、お正月や来客の際によいのではないかと思います。
ところでこの金箔を貼る範囲の作り方ですが、黄金分割の考え方で決めて
頂いています。
どなたでも簡単に美しい入れ方が出来るよう、ご説明しています。
それ自体が今後の作品制作に役立つ知識ですので、お皿の制作と共に覚えて
頂けるのも、このカリキュラムのよいところです。
ただ1年のカリキュラムには含んでおりませんので、1年を終えられてから
リクエスト頂きますと行っております。
ご希望がありましたら、お申し出下さい。
ある程度の人数をまとめてでのご説明とさせて頂いております。
注 ガラスに金箔を貼るには、下準備が必要です。当日に作業を終えるのは
難しい場合がありますので、あらかじめ講師にご相談下さい。