月別アーカイブ: 2017年10月
接着後の置き方
接着は一度に全ての破片を接着すると、ご説明してきました。
理由は元々同じ器が割れているので、破片となってもお互いを
支えあう関係にあるからです。
部分部分で接着すると簡単なようですが、角度や破片同士の
合わせ方に微妙なズレが生じ、結局ぴったり合わないことに
なります。
接着後、器の置き方でも形が合いやすい方法があります。
下の画像は10/29日曜日に接着し、翌日に撮影したものです。
口縁を下にして伏せた状態にしています。
この状態がアーチ構造になっているので、ズレが生じにくくなるからです。
石橋や教会建築の天井でもご存知かと思いますが、アーチ構造は
安定して強度があります。
この他、割れ方によって、よりズレにくい置き方があります。
接着の際には、それぞれの器でご確認下さい。
ワンポイント
藤那海工房金繕い教室のNさんの作品をご紹介致します。
大きなお皿の欠けを金泥で仕上げられました。
織部の緑釉に金泥が映えています。
このくらいの大きさになると仕上げもテクニックが必要になって
きますが、蒔下が綺麗に塗られているので金の発色が良くなっています。
こちらも白に金泥が映えています。
縁の盛り上がりのある形を作るのに少々苦労されましたが、粘った
結果、大変良い仕上がりになりました。
ちょっと欠けてしまっただけで使うことが出来なくなってしまいますが、
金繕いして頂くと、そこがかえってワンポイントになり魅力になります。
使いたい器になるのが金繕いの魅力ですが、Nさんの作品はまさに
その通りになったと思います。
Nさんとは器の好みが合うので、手がけておられる器が次々完成するのが
楽しみです。
動きを真似る
金繕いの教室では、作業の仕方を実演しています。
その際、見て頂きたいのは手順だけではなく、手の動きです。
例えば仕上げの金泥を蒔くところでしたら、蒔筆をどのように
持っているのか、筆のどの部分を使って金泥を蒔いているのか、
どのように筆を動かしているのか、どのくらいの力を入れている
のか、などなど。
作業の環境も大切です。
下に綺麗な紙を敷いている、金泥の包みは一番内側だけ残す、
包みを押さえる粉鎮を置いているなどです。
一つ一つは小さなことかもしれません。
しかしそれらをおろそかにすると、結局仕上げのクオリティーが
落ちる原因になります。
実演は何度も教室で行っていると思います。
何度見て頂いて構いませんので、実演している時は作業の
手を止めて是非ご覧下さい。
習うというのは、倣う(真似る)というではありませんか。
<ゆかり>プレシャスボックス
坂角総本舗の<ゆかり>が命名発売50周年ということで、
限定品を発売したものを頂きました。
缶の蓋にローマ字で「YUKARI」と入っています。
まるで私の持ち物のようです。
デザインも可愛いので、中身を食べてしまっても何かに使おうと
思います。
雑誌に掲載されます
日本ヴォーグ社の「手づくり手帖 初冬号」の取材を受けました。
「手の人」という手仕事をする人を紹介するページに掲載されます。
(発売:11月17日金曜日)
撮影の様子です。
愛用の道具を撮って下さっているところですね。
カメラマンは、白井由香里さん。
とても似ているお名前に、ご縁を感じました。
作品を綺麗に撮影して下さっています。
内容は私がどのように金繕いに辿りついたかと、金繕いの魅力が
書かれています。
拙著に掲載されていない作品画像と、簡潔明瞭にまとめられた文章で
読みごたえがあるかと思います。
是非手に取ってご覧下さい。
柏教室 仕上げラッシュ
このところ仕上げの仕方を念入りに説明したNHK文化センター
柏教室で、仕上げをして下さった方がありましたので、ご紹介致します。
まずHさんの作品です。
欠けの形が不思議な形になっていたので、お皿の柄を使って蒔絵されました。
欠けの形が不本意であった場合、器にある柄を使うのが王道です。
当初、他の柄を検討されていたのですが、セオリー通りに仕上げられた
のが一番自然な感じに仕上がり、教室の皆さんからも好評でした。
次はMさんの作品です。
割れを接着されて、金泥で仕上げられました。
ご本人は完成度に納得されていないのですが、割れの形に忠実に
綺麗に仕上げられています。
このような基本に忠実というのが、かえって難しいのです。
とても美しい仕上げだと思います。
最後にSさんの作品です。
陶器の欠けを金泥で仕上げられました。
化粧土の釉薬に金泥が合っています。
まだ仕上げを始められたばかりのSさんですが、蒔き下の弁柄漆の
塗り方が大変綺麗ですので、完成度も高いものになっています。
形にゆらぎがある陶器は、形の作り込みが厳密でなくても仕上げが
行えるところがあります。
磁器より簡単と安易に流れると、形がしっかり出ていないといけない
磁器の仕上げで苦労することになります。
ですので陶器ばかりでなく、磁器も練習なさるのがよいと思います。
バッハ&フォーレ
ピラティス仲間の野本哲雄さんがピアノ伴奏した大友肇さんの
初ソロアルバムが出ました。
クラシック音楽に興味を持ち始めたばかりの私には多くは語れませんが、
バッハの無伴奏のチェロ曲を大変興味深く聞きました。
解説によれば、バッハ本人の筆による原譜が残されていないとか。
奏者の解釈に任されるところが大きい世界を堪能しました。
後半から野本さんのピアノ伴奏が入ります。
野本さんの演奏の素晴らしさは優しさと力強さが同居しているところにあると
思っています。
いろいろな方が野本さんと演奏されたいと思われるのは、寄り添われるような
優しい演奏であるからだと推察しています。
普段接しているのはピラティスに真摯に取り組む姿なのですが、体幹を
鍛えられて、体のバランスを整えておられる姿に、これぞプロの姿と
感じ入っています。
チェロの体に響く低音と、野本さんの優しくも力強い演奏。
是非たくさんの方に聞いて頂きたいです。
美しい仕上げ
NHK文化センター ユーカリが丘教室のNさんの作品を
ご紹介致します。
鉢の縁の欠けを金繕いなさいました。
黒と茶の釉薬に金泥が映えています。
完成度の高さを作り出しているのは、器の形の復元が完璧なことと
蒔き下の弁柄漆の塗り方が完璧に平滑なことからです。
もちろん金泥を蒔くタイミングも完璧です。
仕上げの仕方としては、欠け通りに蒔いているという基本に忠実なもの
なのですが、下地と蒔き下が完璧だと、ここまで美しいのかと思わずには
いられません。
どうしても破損の仕方が美しくない場合は加飾をお勧めしますが、
奇をてらわずとも美しければ、そのままで良いのです。
基本に忠実というより、誠実に作業された結果の美しさを感じさせてくれる
作品です。
どうぞ皆様、参考になさって下さい。
ようやく完成
NHK文化センター千葉教室のTさんの作品をご紹介致します。
粉引のお皿の縁の欠けです。
粉引には金泥が合います。
形もきれいに作られているので、とても完成度が高い一品に
なりました。
縁の欠けからひびが伸びていました。
実は一度に仕上げていないのですが、手順を考えてあるので、
継ぎ目がわからなくなっています。
仕上げの線が人参の柄と呼応するように入っているのも、一つの
柄になっているようです。
Tさんもそうなのですが、意外に欠損が埋まってから仕上げが出来る
状態まで磨き上げるのに苦戦されている方が多いです。
いろいろコツはあるのですが、綺麗に仕上げるには根気よくという
のが一番大切かもしれません。
今一つの状態で仕上げてしまうと、仕上げも今一つになります。
最後の階段は険しいかもしれませんが、根気よくお願いします。
工房からの風2017
JR本八幡駅近くのニッケ コルトンプラザで今日から
「工房からの風」というイベントが始まりました。
全国から工芸、手仕事を行う作家が集う展覧会です。
数年前にも出かけて気に入った器が入手出来たのですが、その後
なかなか訪れる機会がありませんでした。
それが今年は都合がつけられたので、あいにくの天候にも負けず
出かけてきました。
とても面白くお話を聞いたのが、ほうき職人のフクシマアズサさんです。
材料は「ホウキモロコシ」というもので、ご自身で栽培されています。
ホウキに編む際には内側と外側で茎の状態が違うそうです。
内側はしっかりした茎のままにしますが、外側は茎を割いて、柿渋で
染めた木綿糸で編み込んでいきます。
特徴的なのが上部の形です。
ハマグリ型というそうで、この形が丈夫さを作っているのだとか。
作業スペースの掃除に使おうとミニサイズを購入。
近年ほうきの復権を耳にしますが、懐かしさ漂う形に満足、満足。
その他、購入したのが、青人窯さんのカップ&ソーサー。
左が柿灰釉、右が魚沼緑灰釉です。
シンプルな形に、オリジナルの釉薬が気に入りました。
渡辺真由美さんのガラスコップ。
他にも素敵なボールや花瓶があったのですが、実用を考えて
コップを購入。
透明ではない色が、入れた飲み物とどう合さるのかが楽しみです。
こうして画像を見ると、シンプルなモダンデザインを選んでいるのが
よくわかりますね。
今回の展覧会で考えを深くしたのが、釉薬の色についてです。
作家の皆さん、それぞれオリジナルの釉薬を作り出して独創性を追求
されています。
私は和食系の料理をすることが多く、必然的に色味が地味になることが
多いです。
そうなると釉薬によっては料理の見栄えが変わってしまうので、釉薬の色
がとても気になりました。
展覧会は明日までです。
屋外会場での展示のため、明日の雨模様の天候では足元が悪いと
思います。
土汚れがついても気にならない靴でお出かけ下さい。