見間違えられる

NHK文化センター ユーカリが丘教室のHさんの作品をご紹介致します。
馬の目皿の欠けの金繕いです。


骨董がお好きな方であれば馬の目皿がどんなものか、よくご存知だと
思います。
石皿の一種で、職人が描いた渦巻き文様が馬の目のように見えることから
「馬の目皿」と呼ばれています。

石皿とは日常雑器で、あぜ道のような不安定なところでもひっくり
返らない重くしっかりしたお皿を指します。
ほとんどが無地なのですが、稀に馬の目のような絵付けがされています。
それが希少なので珍重されていますが、職人のざっくりした絵付けが鄙びた
感じがするのも魅力の一つです。

Hさんがお求めになったお皿は、かなり縁がかけてしまっていました。
それを一つ一つ埋められて、銀泥で仕上げられました。

当初Hさんは焦げ茶色の新うるしで仕上げられるご意向でしたが、私が強く
銀泥での仕上げをお勧め致しました。
というのは色合わせした金繕いは一段低く見られることと、色合いがチープに
見える可能性が高かったからです。
欠けの数が多いだけに、失敗は大きなダメージになります。

銀泥は仕上げた直後は白いので浮いた感じがしましたが、薬品で硫化を
促進し、黒化されました。

Hさんから面白い後日談をお聞きしました。
ボロボロに欠けた状態をご存知のご友人が完成した状態を見て、
「新しいのを買ったの?」とおっしゃったそうです。
それほど変化を遂げていたということなのですが、Hさんとしては満足度が
さらに上がる出来事だったようです。
強く銀泥をお勧めした私としても、とても嬉しいお話でした。


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