漆と陶 時蔵工房三人展

以前もブログでご紹介している坂本鐡司さんが参加している
「漆と陶 時蔵工房三人展」を拝見しに行ってきました。


漆と陶芸、木工作品を三者三様に制作された作品展です。
それぞれ個性的な作品で楽しませて頂きました。

実は坂本さんは私が会社員時代の上司だった方で、今、社会人として
存在している根幹を作って頂いたと言っても過言ではないくらいお世話
になった方です。

会社員時代は漆の話などしなかったと思いますが、まさか時を経て
お互い漆に携わり、漆の話をするとは思いもよりませんでした。

竹や桜など素材は長い期間置いてから使用するなど、制作者あるあるな
お話を聞きながら感慨にふけっておりました。

個性と工夫に満ちた坂本さんの作品を皆様にもご覧いただきたいです。
会期は6月24日(水)まで
北鎌倉の明月院近くの北鎌倉ギャラリーです。


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急須の蓋 補強

NHK文化センター千葉教室のSさんの作品をご紹介します。
急須の蓋の割れです。


あいにく蓋のみの画像なのですが、表面の絵付けでとても斬新なデザイン
の急須であることはお分かりになるかと思います。
これが真ん中で割れてしまっていました。

急須の蓋は想像以上にハードワークです。
熱い湯気にさらされ、持って移動もあります。
ですので単に接着しただけだと2年程しか持たない(接着が外れる)と
経験則でわかっています。
よって接着しただけではなく補強をお願いしています。

Sさんの場合、蓋の内側の立ち上がり部分に和紙を貼って頂きました。
補強部分だけではなく内側全体を銀泥で仕上られたので、補強が際立つ
ことなく馴染んだ形でお使い頂けると思います。

日本の誇るべき和紙は金繕いでも活用されています。
作業の際には手順を教室でご確認下さい。


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こころばえの会2025

毎年拝見している「こころばえの会」は友人の斉藤佳代さんが
参加する9人の女性日本画家によるグループ展です。


9人は経歴も年齢も違い、画風もそれぞれです。
それが一つの空間にすんなりまとまり、心地よい響きがあります。
全て小作品ではありますが、大変見応えがあります。

「今の私が描きたい絵」と案内にありますが、改めて素晴らしい
取り組みだなと思いました。
素直に自分の気持ちを表現する、見習いたいです。

銀座 森田画廊で、会期は6月11日水曜日まで。


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阿部 操展2025

6月は展覧会のお誘いが多い月です。
まずは金繕い教室の生徒さんでもある洋画家・阿部操さんの
個展に伺いました。


阿部さんの作品は柔らかい色彩と筆致が素敵です。
人物画はとてもおしゃれな感じなのでファッション関係の広告に
いいのでは、と密かに思っています。

風景画、静物画も穏やかな雰囲気がいいので、ご自宅に迎えたいと
思われる方も多いのではないでしょうか。

実際ギャラリーに出向かれて1点1点、制作の過程を阿部さんに
お聞きになるととても楽しいと思います。

外苑前のワタリウム美術館そばのトキ・アートスペースで6月15日(日)
まで。


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こだわる

NHK学園市川オープンスクールのYさんの作品をご紹介します。
陶器皿の割れです。


赤い釉薬が印象的なこのお皿はYさんのご家族が作られたものです。
微妙な揺らぎが魅力なのですが、それが故に仕上げの線を限定する
のを難しくしていました。
さらに釉薬の特性で細かい貫入も入っており、どうしたら美しく
処理が出来るのか悩みが深くなります。

Yさんはそれらの関門を一つ一つ追求して直されるのですが、その
こだわりの姿は頭が下がるものがありました。

結果はご覧の通り。
赤い釉薬に金泥のラインが映える美しい仕上がりになりました。

金繕いの教室にお越しになる方々は皆様直したい器があって、それを
丁寧に美しく直すことを趣味とされています。
プロではないのですから完成度を突き詰めなくてもいいのかもしれません。
しかしYさんのこだわりの工程、完成度を見て頂ければ、良いものは
良いと感じて頂けると思います。


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色を変える

NHK文化センター千葉教室のYさんの作品をご紹介致します。
中鉢の割れの接着です。


八の字型に左右対称に割れた形が特徴的です。
また元々の器の椿の柄もダイナミックに描かれたところが斬新
です。

Yさんはあまりにバラバラに割れていたので、最初は金繕いを
諦められたのですが、思い切って接着してみれば割れの造形の
面白さが際立ってモチベーションも上がったようです。

丁寧に欠損を埋めた後、銀泥で仕上げられましたが、染付で柄が
描かれている部分と器の地が見えている部分で表面の処理を
変えています。
染付の部分は今後硫化が進むので染付の色に馴染んで行くでしょう。

硫化が進んだところで仕上げ直後とまた見え方が全く違って来ると
思うので、その時を楽しみにしながらお使い頂くと良いのでは
ないかと思います。


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ミロ展

現在、東京都美術館で行われている「ミロ展」に行ってきました。

ミロとはスペイン出身のジュアン・ミロのことで、ピカソと並び20世紀
を代表する巨匠に数えられています。
カテゴリーとしてはキュビズムやシュールレアリズムに該当するかと思い
ます。

以前、マティス展をブログで紹介しましたが、私自身この辺りの画家が
好みで、ミロに関してはバルセロナにあるミロ美術館を見に行ったほどです。
ただ今までは構成が好きとか色が好みとか、そういう表現された結果だけを
見て好ましいと考えていただけで、その描かれた背景は理解していませんでした。

今回の展覧会は初期から晩年まで決定版大回顧展と銘打っているだけあって
それぞれの絵がどのような時代背景の元に描かれたのか分かりやすく展示
されています。

中でも戦火の逃れながら描き続けた星座シリーズは背景を理解して見ると
違った視線で見ることが出来るかと思います。

個人的に面白かったのはミロがオランダ絵画に影響を受けて描いた
「オランダの室内」という作品は元になったオランダ絵画からミロがどの
ように自身の作品に昇華していったのかスケッチの変遷でわかります。

会期は長く7月6日まで。


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ツマミの代替え

NHK文化センター千葉教室のIさんの作品をご紹介致します。
急須の蓋のツマミの金繕いです。

実は元々あったツマミは破損後に紛失されてしまったそうで、
今回の金繕いでは、まずお好みに合う代替え品を探して頂くこと
から始まりました。
結局ご自身が選ばれたのが、ご自宅にあった金属製のうさぎでした。

このうさぎについては何なのかご記憶にないとのことですが、下方に
穴があり、これを利用して蓋本体に結合しています。

結合と表現しただけあって、単に接着しているのではありません。
きちんと蓋本体と一体化する作業をして頂いております。

また金属はすぐそのまま使えません。
然るべき下準備をしてから作業をする必要があります。

急須に限らず様々なツマミがあるかと思いますが、紛失している
ことが多い物です。
その場合にはIさんの作品のように「これは!」という代替え品を
使うと楽しい金繕いになるかと思います。

同様にツマミを紛失されてしまった方は諦めることなく、代替え品を
探すことから始められてはいかがでしょう。


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糸で補強

NHK文化センター柏教室のAさんの作品をご紹介致します。
マグカップの割れの補強です。


破損しやすい取手は無事だったものの、底面を経由して割れて
いました。
熱い飲み物を入れるマグカップですので、再破損を防ぐため補強を
施して頂きました。

表に糸を巻くという補強方法なのですが、どこに糸が巻かれているか
お分かりになるでしょうか?
実は黒い縦筋文様が入った部分の上に巻いてあるのです。

元の柄のように馴染んでしまうくらい細く入っていますが、それで
十分補強の意味を成します。

Aさんは数々アイディアに富んだ金繕いをして下さっていますが、今回
は目立たない技が冴えた逸品になりました。

糸を巻く補強方法は単純に糸を巻けばいいというものではありません。
日常の使用に耐えるように数々注意事項があります。
必ず手順を教室で確認してから着手するようお願い致します。


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塗装の場合あり

先日に続きNHK文化センター柏教室に在籍されていたTさんの作品
をご紹介致します。
花器の割れです。


お知り合いの方から依頼された品なのですが、割れた部分を白く
塗装して、破損部分がわからないように補修してありました。

骨董でお求めになると、このような補修が行われているのは珍しく
ないのですが、この花器の場合は白い塗装が悪目立ちしていて
せっかくの優美さを損なっていました。
そこでTさんは補修を一旦排除し、再度金繕いし直しました。

お食事を盛る器ではないので、さほど安全面に配慮はしなくても
いいのかもしれません。
この点に関しては皆様それぞれのお考えがあるかと思います。

形成が難しいラッパ型に開いた形に果敢にチャレンジされたTさん
のご判断を指示したいと思います。


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