バラバラ

NHK文化センター千葉教室に在籍されていた方の作品です。
小さな鉢がバラバラに割れてしまっていたのを接着されました。


直径6cm程度の小さな鉢で用途としては珍味入れといったところで
しょうか。
黒釉が美しく、歪んだ形が小さいながらも印象的な器です。

これが大小10ピース以上に割れてしまっていたのですが、接着して形を
戻されました。

難しかったのが形が歪んでいるのを再現することです。
そもそも接着の段階でズレも生じてしまっていたので、これを調整しつつ
成り立たせるのは大変な努力だったかと思います。
とても思い入れのある器だということなので、何とか完成に辿り着いたと
考えております。

銀泥で仕上げてみれば複雑に入った線が面白さを醸しています。
ご本人の努力に見合った完成度と言えるでしょう。

安易に手を抜くと、この喜びは得られません。
今一歩の作業を頑張ることをお勧め致します。


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出光美術館「青磁」展

現在、出光美術館で行われている「青磁」展に出かけてきました。
中国で生まれた青磁は、作られた場所、時代で様々な変化を
見せます。

中国をはじめアジアから欧米まで、そして皇帝・貴族から一般の人々に
受容されます。
この展覧会は中国の青磁生産の代表的な窯から高麗や日本、さらに東南アジア
などの青磁も取り上げ、世界の人々を魅了した青磁の世界を紹介します。

私は特に南宋時代の青磁が好みです。
青磁の色味を最大限に生かしたシンプルな造形が絶妙に美しいのです。

また今回は日本も含めた他国への青磁の広がりも面白く拝見しました。
青磁という共通項はありますが、それぞれの国によって解釈が違うのです。
この辺りも楽しんでご覧になると新しい発見があるのではないかと思います。

会期は来年1月28日(日)まで。
会場は混んでおらず、じっくり、ゆっくり拝見出来ました。


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内側と外側

NHK文化センター千葉教室のSさんの作品をご紹介致します。
初めての仕上げを行ったお猪口です。


ご覧のようにひびの仕上げが内側と外側で太さが違っています。
内側はご本人も納得の線が描けたそうですが、外側は若干太くなって
しまい、イマイチとのこと。

これは内側と外側では描きやすさが違うためで、ある意味仕方のない
ことです。
対策としては何度かトライして頂いて、ご自身の筆を持つ手、器を支える
手が最も安定するところを探るしかありません。

場合によっては常日頃とは全く違う姿勢であったり、支える道具を考えても
いいかもしれません。

完成が美しければ、その手法は何でも許されるところも金繕いの面白い
とこだと思います。


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染・織 ふたり展2023

金繕い教室の生徒さんである小高みどりさんが参加されている
「染・織 ふたり展」を拝見しました。

染織(せんしょく)という言葉があるように繊維を扱うという意味
で一緒に表現されていますが、実は全く作業が違う世界のものです。

それぞれの分野で研鑽されたお二人の作品は何も打ち合わせされて
おられずとも一つの空間に展示されると不思議なハーモニーがあります。

小高さんの作品です。


小高さんの作品は「友禅」の技法で、1色1色、防御しながら染めて
いきます。
染めは失敗が許されないのかと思いきや、技術的に習熟された小高さん
は、リカバリーの技術があるとか。
一幅の絵画のような作品を堪能させて頂きました。

織りの川上さんの作品です。

星座を表現された作品です。
面白いのが星を表した金色の部分です。
一見、金属にも見えるのですが、フェルトに染め用の金泥をまぶした
ものだそうです。
毎回変化のある表現を見せて下さるのが楽しいところです。

会期は12月9日(土)まで
銀座のギャルリ・シェーヌです。


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銀泥 硫化した色

藤那海工房 金繕い教室の生徒さんの作品をご紹介します。
銀泥で仕上げられた欠け+ひびがいい色に硫化したとわざわざ
お持ち下さいました。


銀泥はアクセサリーと同様、空気中の硫黄成分で変色していきます。
それはいきなり黒くなるわけではなく、最初は少し地味な金色である
シャンパンゴールド色になり、その後ピンクゴールド、青紫と変化して
いきます。
最終的に真っ黒になるわけです。

新うるしの場合、途中経過で止めることが出来るので、器の感じと
合わせて選択することが可能です。
特にシャンパンゴールドは粉引・化粧土と呼ばれるベージュ色の釉薬に
合いますし、青紫は染め付けと酷似しています。

問題は色の変化を自然に任せて待つ場合、どのくらいの時間が必要かと
いうことなのですが、この質問にはジョークを交えて「神のみぞ知る」
とお答えしています。

というのもそれぞれのご自宅で環境が違う為、必要な時間が変わってしまう
からなのです。
今まで一番変化の早かった方はご実家が養鶏場(鶏糞が要因と思われる)だと
いう方でした。

お預かりもので返却を急ぐ場合などは方法はありますが、やはり自然に変化
させた方が色が美しいようです。
色の変化を楽しめる銀泥です。途中経過もお楽しみ下さい。


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年迎え 門松・屠蘇特別講座2023

今年も「門松・屠蘇」の講座を行います。
これは私の別の顔である礼法の師範としてのご案内になります。

年迎えの為に用いる正式な「根引きの雄松・雌松」に紙と水引を掛け、
正式な飾り方とは何か、日常行われている事柄がいかに略式であるかを
学びます。
また正月に行う初めての儀式「屠蘇」の調合、作製も致します。

お正月は日本人が古くから大切にしている伝統行事です。
今年は正式な門松を飾って厳かに迎えてみましょう。

日時:12月20日(水) 10:00~12:00/14:00~16:00
12月26日(火) 10:00~12:00/14:00~16:00
場所:藤那海工房 (最寄駅・西船橋駅より徒歩11分)
定員:各回 5名様
講習会費:¥8,000(雄松・雌松一対、屠蘇の材料費込み)
お申し込み:HPの「コンタクト」からメッセージをお願いします。
振込先、工房場所、持ち物などご連絡致します。

お申し込みをお待ちしております。


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草木染め2023 最後の成果

今年の草木染め大会は3回で終了しました。
その最後のレポートです。

Hさんの作品です。
ご自分でなさったのが絞りです。
着物をお召しになった際の膝掛けにするそうで、淡いベージュ色が
上品な染め上がりになりました。

上に乗っているのは帯揚げです。
今回初チャレンジのやしゃぶしの鉄媒染です。
渋いベージュですが、どんな着物にも合う万能カラーです。

すでに藍は花が終わり、あとは種を実らせるばかりになっています。
来年の開催に参加をご希望の方はお声がけ下さい。


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ちょっとひと手間

NHK文化センター柏教室のKさんの作品をご紹介致します。
ティーカップ&ソーサーの欠けの金繕いです。


ティーカップに欠け+ひび、ソーサーに欠けがあったのを金繕い
されました。
それぞれ金泥で仕上げられています。

ひと手間かけられたのが、金泥の上から器にあった元々のラインを
復元されたことと、ティーカップのひびの仕上げを器の柄に合わせて
途中に輪を入れられたことです。

器の元々の柄を復元するのは良くお勧めしていますが、今回Kさんは
ラインを柄の色に合わせた色漆を使われました。

通常は銀泥で仕上げておき、その硫化を待ちます。
しかし預かったもので、すぐに返却する必要がある場合は色の変化を
待てない場合もあるかと思います。
その場合には色漆は有効かと考えます。

ただ色漆は上手く使わないと安っぽい感じになる場合があります。
金泥が高騰しているので色漆をご希望になる方が増えていますが、
頑張って制作したものの価値を下げる必要はないかと思います。
安易に飛びつく前にご相談下さい。


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やまと絵展

現在、東京国立博物館で行われている「やまと絵」展を見に行って
きました。

やまと絵とは中国に由来する唐絵や漢画といった外来美術の理念や
技法との交渉を繰り返しながら独自の発展を遂げてきたもの、と定義
されています。

やまと絵自体は平安時代前期に成立とされていますが、当初の絵画は
中国からの影響を色濃く残しています。
本館の関連展示である「近世のやまと絵」まで通じてご覧になるとわかり
やすいと思うのですが、柔らかな筆致の絵画に昇華していきます。

題材も四季の移ろい、花鳥・山水といった自然を取材したものから、月ごと
の行事、さまざまな物語など文化を感じさせるものまで様々です。

また百鬼夜行や鳥獣戯画は現在の日本のサブカルチャーの萌芽となるのは
皆様が認めるところでしょう。

著名な作品が多く展示されているので、会期末が迫るにつれて混雑が予想
されます。
展示品が小品が多いせいか、ガラスケース前の滞留が目立ちます。
見学の際には空いているところから、隙間からと要領よく見学されることを
お勧めします。


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複数のひび

NHK文化センター柏教室のYさんの作品をご紹介致します。
陶器のお猪口のひびです。


ひびを止めた後、欠損を埋め、金泥で仕上げられています。
外側から見るとあまり目立ちませんが、内側は3本のひびが目に
入ってしまいます。

化粧土もしくは粉引と呼ばれる釉薬の場合、最も目立たなく仕上げる
には銀泥をお勧めしています。
銀泥が少し硫化したところで、ある措置をすると釉薬の色に馴染んだ
色で落ち着きます。

Yさんはまだ仕上げを始められたばかりだったので、失敗の少ない
金泥を選択されましたが、慣れてこられたら銀泥にもチャレンジして
頂きたいと思います。

仕上げはご本人のお気持ち次第です。
仕上げの際に迷われるようでしたら、ご相談下さい。
最適な方法をご提案したいと考えています。


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