カテゴリー別アーカイブ: 日常の風景
ポット ようやく完成
かなり長いことお預かりしていたティーポットの金繕いが
完成しました。
横断している線は、ズレが生じているくらい深刻なヒビでした。
かろうじて注ぎ口のところで繋がっているような状態だったのです。
加えて縁の部分は小さな破片が割れ、欠損も深くありました。
ティーポットの場合、熱いお茶が入るので、その水圧にも耐えられる
ように直さないと、大変危険です。
ですので内側に補強をして、お茶をその補強で受け止めるようにして、
ポット本体には水圧がかからないようにしてあります。
この補強の作業に時間がかかったこと、仕上げをしようとしたら
下地の状態が気になって、さらに作業をしてしまったことで時間が
かかりました。
仕上げは銀泥ですが、硫化が進むとマット黒釉に馴染むと思います。
それまではちょっとした景色になっている仕上げの線を楽しんで
もらえればと思っています。
東洋陶器
NHK文化センター千葉教室のWさんが、貴重な器をお持ちに
なったので、ご紹介致します。
下の画像にあるように、東洋陶器会社(現•TOTO)のカップです。
洋食器に詳しい方はご存知と思いますが、衛生陶器メーカーの
TOTOは、会社の黎明期に洋食器を生産していました。
同族会社のノリタケが「オールドノリタケ」と評価を得ているように、
東洋陶器の食器も評価を受けています。
Wさんは何でもないところで、このカップを入手されました。
欠けがあるというので、破格の値段だったそうです。
でもこれはWさんが東洋陶器に関して、知識があったからなのです。
磁器の美しさと柄のモダンさに注目されたのも当然のことです。
欠けを直して、薄くなってしまった縁の金彩を戻す予定です。
Wさんの完成をイメージして、わくわくされているご様子に
私もご指導するのが楽しみです。
雄雌の違い
先日ご紹介しましたコリンスキーの面相筆を購入してきて
頂きました。
右の穂先が長い方が、雄。
左の穂先が短い方が、雌。
なのだそうです。
コリンスキーは、尾から筆用の毛を取ると聞いていますので、
雌雄の差は尾の毛の長さの違いということになるかと思います。
面相筆ではありますが、かな書に使ってみる予定です。
トクサの植え替え2016
鉢に根が一杯になってしまったので、縁あたりにしか新芽が
出なくなっていたトクサを植え替えました。
スコップを鉢の縁に沿って入れただけで、すっぽりと株が
抜けました。
根が一杯なのがわかります。
これを園芸ハサミで切り分けて、昨年藍を育てていたプランターに
植え替えました。
かなりダイナミックな方法ですが、トクサ自体は丈夫な植物
なので、数週間で落ち着くと思います。
新しい新芽が出れば大丈夫と見ています。
広くなった環境で良い芽が育つのを期待しています。
自作のシール
金繕いの講座を受講の方にはおなじみになっている自作の
シールです。
欠損位置を示すのに使っています。
元々の姿は上の画像左に写っている電気工事用の「絶縁テープ」です。
これをハサミで三角形に切って、塩ビ板に貼って準備しています。
画像右に写っているのは軽包装用のバッグシーリングテープです。
スーパーなどで野菜が入ったビニール袋の口を縛るのに使われています。
こちらは絶縁テープより耐水性がありますので、洗ったり漂白しても
しっかりくっついています。
ただ入手経路が限られるのと、硬い質なのでマスキングテープ変わりに
使うのには扱いにくいかもしれません。
ですので100円ショップでも手に入る絶縁テープでも十分かと思います。
最初の画像に見えるように自分で切ったテープを行儀よく貼っています。
一見綺麗に見えるので、市販されているのですか?と聞かれることも
多いのですが、類似したものでも市販されているものはありません。
これをご覧になるだけだと、さぞかし私は几帳面な性格なのだろうと
思われるかもしれませんが、出来るだけ効率よくたくさん貼れるように
しているだけで、性格は反映されてはいないと思います。
受講を始められたばかりの方は、慌てて準備なさる必要はありませんが、
あれば便利なので、覚えておいて頂ければよろしいかと思います。
難しい質問
今月から受講を始められた方から、難しい質問がありました。
受講することによって一人で直せるようになるのか、という
ものです。
講座のカリキュラムは1年で組んでおりますが、それを学んで
頂く事でご自身で金繕いが出来るようになると考えています。
ご自身の器を直しながら、他の受講者の方の金繕いの様子を見て、
技術の幅を広げられるところも大きな魅力かと思います。
基本の技術が身に付けば、新しい器も応用して直していける
のですが、難しいのは同じ破損をしている器はないということ
なのです。
カリキュラムを消化しても継続して講座に通って下さる方は、
講師がいることによって安心感もあるかもしれませんし、続けられる
ということもあるかもしれません。
冒頭の質問に対する回答は「はい」とお答えしましたが、何とも
難しいご質問と言えます。
講師としての気構えは、お一人で直せるようになることを目指して
お教えしておりますので、ご受講続けて頂けたら嬉しいです。
再トライ中
金繕いのご依頼を頂いて、一番辛いのが「まだ出来ませんか?」と
問われることです。
技術的につまずかない限り、せっせと作業は続けているのですが、
なかなか完成しない様は、他に類を見ない仕事だと思います。
この画像の器も完璧!と思って仕上げをしたところ、かたがたとした
不本意な部分が見えてしまいました。
再度埋め直して、仕上げし直しです。
以前のブログにも書きましたが、仕上げをすると良くない部分が際立って
見えてきます。
そのためある程度よいと思ったところで、試しの意味も含めて仕上げを
お勧めする場合もあります。
その方が作業したりないところが明確になりますので、モチベーションが
上がります。
欠損さえ埋まってしまえば仕上げは簡単と思っていた、とおっしゃった方が
おられましたが、さにあらず。
もし金繕いの依頼を受けて直している器であれば、本当に完成するまで
返却の約束はなさらない方が賢明かと思います。
仕上げてすぐ梱包も出来ませんので、返却日には余裕を持たれることを
オススメ致します。
魔除け•護身
以前ご紹介しました「紗綾形文様」ですが、魔除け•護身
の意味もあります。
熊本県で起きた地震で避難所生活を送られている方々が
無事に、少しでも早くご自宅に戻られるよう、お祈りして。
かわいいホルンマーク
以前アルミ製の筆置きをご紹介しました月光荘画材店の商品には、
かわいいホルンマークがついています。
先日筆置きを買い足しに行ったところ、ヌメ革の鉛筆キャップを
購入してしまいました。
本来は月光荘オリジナルの太めの8B鉛筆用なのですが、普通サイズの
鉛筆キャップとして使っています。
こちらは薄いブルーの点が入ったクロッキー帳です。
グッドデザインのロングライフデザイン賞を受賞しています。
これは廃番してしまった木製の鉛筆削りです。
木にホルンマークがマッチしていて、かわいさが増しています。
月光荘画材店は、大正6年(1917)創業。
与謝野鉄幹•晶子夫妻が名付け親なのだそうです。
油彩画材をメインとしたオリジナル商品のみを扱うお店です。
このブログを書くために洗い出してみたら、おけいこバッグ、便せん
封筒セット、練りゴム、8B鉛筆と結構月光荘グッズを持っていること
が発覚。
でもホルンマークのかわいらしさを見て頂いたら、ついつい買って
しまう私の気持ちがわかって頂けるのではないでしょうか?