カテゴリー別アーカイブ: 生徒さんの作品
お休み中の成果
藤那海工房 西登戸教室は一般のご家庭を教室としてお借りしている
関係上、このコロナ禍をお休みしたり、時間や人数を減らして対応
してきました。
有難いことに、ご参加の皆様は再開を待っていて下さいました。
お休みしてしまうと作業の手も止まってしまいがちですが、Oさんは
着々と作業を続けて下さり、たくさん完成作品を持ってきて下さい
ました。
主に欠けの器が多いのですが、一気にご紹介したいと思います。
お料理の上手なOさんはお持ちの器も作家ものなどこだわっておられ
ます。
それらを破損しても金繕いして、再度使って下さることはお教えして
いても嬉しいことです。
西登戸教室は今春から通常通りの体制で継続しています。
受講の方も募集していますので、近隣の方はご検討頂けたら幸いです。
柄を戻す
NHK文化センター千葉教室のSさんの作品をご紹介します。
洋皿の欠けの金繕いです。
縁の金彩の部分が欠けてしまったのを戻され、更に元々の柄を色漆で
彩色して完成されました。
洋皿はSさんの作品のように柄だったり、レリーフがあったりと装飾が
されていることが多いと思います。
それをどこまで再現するかは悩みどころです。
Sさんの場合は柄を描かれることによって金繕いされた部分を目立たせない
だけでなく、金彩と仕上げの金の色味が違うところも緩和されたのでは
ないかと思います。
ついつい手間を惜しんでしまう傾向にあるとは思いますが、もうひと手間
加えるだけで完成度が上がります。
どうぞ前向きにチャレンジしてみて下さい。
硫化待ち
NHK学園市川オープンスクールの方の作品をご紹介致します。
徳利の欠けです。
雰囲気のある徳利の注ぎ口が欠けてしまっていました。
それを丁寧に埋められて銀泥で仕上げられています。
形が大変美しく整えられているので、アップでも見応えがあるかと思い
ます。
ここまで綺麗な作業をされているからこその仕上げです。
ついついこの程度でいいかもと自分に甘くなるかもしれませんが、是非
他人に見せたくなる完成度を目指して頂きたいと思います。
渋い色に硫化するのが待ち遠しいです。
柄のマッチング
NHK文化センター千葉教室の方の作品をご紹介致します。
大鉢の割れです。
元々、備前焼の火襷のような柄が入っている大鉢です。
割れの接合したラインをそのまま金泥で仕上げられました。
金泥と焦茶色の釉薬とのマッチングもいいのですが、やはり元々の
柄に対して割れのラインが絶妙なのが素晴らしいと思います。
近年、欧米でも金繕いの人気が高まっていますが、この自然の割れの
ラインの絶妙さが一つの理由ではないかと思います。
人間が造形し得ない自然の線。
窯キズを「神様の成せる技」と言いますが、割れの線も人間の手の及ばない
ものを感じます。
ゴミ箱からの復活
産経学園ユーカリが丘教室のTさんの作品をご紹介致します。
大皿の割れです。
一辺が25cmほどの大皿です。
厚みもあるお皿がかなりバラバラに割れてしまっていました。
これを「のりうるし」で接着され、細かい欠損を丁寧に埋めて銀泥で
仕上げられました。
実はこのお皿は一旦、ゴミ箱に入れて処分される予定でした。
しかし思い直したTさんは箱の中から拾い上げて金繕いなさったのです。
途中の工程は大変だったかと思いますが、複雑に入った割れのラインが
面白く、素敵な作品になりました。
銀泥がいずれ硫化して、画像の様子から変化するのも楽しみです。
器が割れてしまうと処分されてしまう方がほとんどです。
でもかなりバラバラでも復活します。
金繕いで新しい魅力を見つけてみませんか?
シンプル一番
産経学園ユーカリが丘教室のNさんの作品をご紹介致します。
マグカップの取手です。
特にご覧頂きたいのが下方の仕上げです。
通常の金属粉ではなく弁柄漆で仕上げられました。
当初は元々、マグカップ本体に描かれている蔦紋様のように長く
あしらう予定でした。
しかし試行錯誤の結果、蔦紋様のニュアンスを感じる最低限の漆絵に
なりました。
Nさんの試行錯誤で分かったのは「シンプル イズ ベスト」という
ことです。
これだけ少ない手数でも蔦網様を意識しているとわかると思います。
ぜひご参考になさって下さい。
前向きに装飾
NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介致します。
マグカップの欠けです。
髭のように伸びるひびを素敵に蒔絵されました。
今回の欠損は縁をぶつけてしまった時に起こったもので、もう少し
衝撃が強ければ破片が落ちていたと思われます。
それが落ちずに残ったのですが、周囲に髭のようにつながったひびが
出てしまいました。
この形は完全に欠けとなった場合でもよくある破損で、どのように
仕上げるか皆様悩まれるところです。
Hさんはマグカップ表面のタコ唐草紋様を上手く利用してひびの部分にも
蒔絵されました。
常に同じ方法が取れるとは限りませんが、同様の欠損に悩まれている
方には一つの解答を示していると思います。
似たような欠損で苦慮している方は是非参考になさって下さい。
紋様の力
前回に引き続きカルチャープラザ公津の杜教室のMさんの作品です。
小鉢の割れを金繕いされました。
破片を接着後、細かに割れてしまった範囲を薫銀泥で全面仕上げられ、
その上から唐草紋様を蒔絵されました。
細かに割れた部分をそのまま仕上げられると、神経質な感じに見えていた
かと思われますが、一定の範囲をまとめて仕上げられたことでスッキリした
仕上がりになっています。
その分、大きな面積になってしまったのを蒔絵で装飾されました。
唐草紋様を始め、吉祥紋様と呼ばれる長く培われた紋様は多数存在します。
それぞれ意味があり、使用する際にはそれを踏まえて使うべきだと思います。
紋様を使うのは単なる装飾ではありません。
紋様の持つ力を貰うことでもあります。
選ぶ時にはそのことを思い起こして、ご検討下さい。
自然釉の徳利
カルチャープラザ公津の杜教室のMさんの作品をご紹介致します。
自然釉の徳利の割れです。
口縁の難しいところが細かく割れてしまったのを接着され、欠損している
部分も自然に補われています。
仕上げの金泥も自然釉に馴染んで、美しい作品になりました。
ランダムな陶器の肌は繊細な磁器ほど綺麗にならさなくてもいいですと
ご説明しています。
その反面、どこまで作業すればいいのか迷ってしまう方もおられます。
簡単に言えば周囲と違和感なく繋がっていればいいのですが、どの程度か
と悩まれるかと思います。
そういう方にはMさんの作品は参考になるかと思いますので、細部まで
じっくりご覧下さい。
切り落とす
NHK学園市川オープンスクールのSさんの作品をご紹介致します。
一輪差しの割れです。
鶴首と言われる優美な形の一輪差しをお持ちの方は多いと思います。
残念ながらその首が割れやすいのも事実です。
割れてしまった首を接着するのは当然ですが、あえて外してしまう方
もおられます。
Sさんは折れてしまった部分を平らにならして、そこを金箔のクズで
仕上げられました。
下地の赤い漆が透けて見えるところが、より鮮やかに見せています。
画像では分かりにくいのですが、内部も赤漆で塗られています。
割れてしまった形をそのまま生かすという発想はあるかと思いますが、
その形が美しいかどうかというのは冷静に考える必要があります。
Sさんの一輪尺の場合、そのバランスも良かったということで、
面白い作品になったかと思います。























