カテゴリー別アーカイブ: 生徒さんの作品
貝絵 公津の杜教室
金繕い教室のカリキュラムに「ハマグリ貝に金箔を貼る」
というのがあるのですが、そこから発展して貝絵に
チャレンジする方が増えています。
今回はカルチャープラザ公津の杜の生徒さんの作品をご紹介します。
まずは先日まで在籍されていたMZさんの作品。
テーマは波うさぎです。
「波うさぎ」とは古来から親しまれているモチーフで謡曲の「竹生島」
に起源を発します。
琵琶湖を渡る船から見たさざなみが立つ湖面の様子から草原を駆ける
うさぎを連想したというものです。
MZさんはその定番の画題を可愛らしい表現でまとめられています。
もう1点、MOさんの作品は制作されていた秋の季節に合わせて栗が画題
になっています。
元々、絵を描くのがお好きだったので、のびのびと構成されているのが
わかります。
特にイガの表現に工夫されて完成に至りました。
お二人とも画題の選定から黄金分割を使ったレイアウトまで真摯に取り
組んで下さり、初めてにも関わらず大変クオリティーの高い作品が完成した
と思っています。
機会を見てまたチャレンジして頂くと、新しい世界が見えるのではないかと
考えています。
目立たせない
藤那海工房 金繕い教室のSさんの作品をご紹介致します。
マット黒釉の大皿の欠けです。
ざらざらとしたテクスチャーがついた黒釉に馴染ませるように仕上げ
に採用されたのが薫銀泥です。
人工的に銀泥を燻したガンメタリックというか濃いグレーの銀泥です。
これが釉薬に馴染んで一見、どこが欠損したのかわからなくなっています。
この薫銀泥のいいところは蒔いた後に時間が経っても変色がないところ
です。
通常、銀泥というと硫化で変化が現れますが、蒔いた当初からこの濃い
グレーのままを維持します。
最初から狙いの色に出来ることや預かり物で返却後も同じ状態を維持
出来ることから好まれる方が多いものです。
大抵は今回のSさんの作品のように元々の釉薬に馴染ませる方が多いの
ですが、モダンな感じがする色味から敢えて目立たせる使い方も面白い
のではという意見もあり、今後お使いになる方のアイディアを期待して
いるところです。
蒔絵皿揃え
先日に続き、NHK文化センターさいたまアリーナ教室のOさんの
作品をご紹介致します。
こちらは金繕いではなく、完品の取り皿に蒔絵を施されました。
グリーンの単色でシンプルなお皿にOさんご自身がセレクトした文様を
蒔絵されました。
Oさんは和の文様に精通されているので、5点のセレクトも秀逸です。
それを黄金分割でしっかり計算して柄の配置を決めています。
使用したのは金泥、銀泥のみです。
それが複雑に見えるのは柄のセレクトとレイアウトの妙だと考えます。
もし同様にシンプルなお皿をお持ちでしたら、このようなチャレンジを
してみませんか?
全く違う器に蘇るのは一緒でも金繕いと違う醍醐味があると思います。
てんとう虫?
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のOさんの作品をご紹介
致します。
欠けの金繕いなのですが…
元々は小鉢の欠けだったのですが、弁柄漆を塗り重ねているうちに
盛り上がってきて、ついにてんとう虫型になったそうです。
さすがに触覚はありませんが、黒漆で点々を描き加えて立派な
てんとう虫が完成しました。
来客があると、この小鉢を出されて、お客様が驚くのを密かな楽しみに
されているとか。
単なる金繕いを超えたお遊びですが、楽しまれているご様子が素敵
でした。
ちょっと加飾
NHK文化センター柏教室のKさんの作品をご紹介します。
鉢の割れの接着です。
割れを接着後、欠損を埋めて銀泥で仕上げられているのですが、その
仕上げの線を少しだけ装飾されています。
ほんの少しの遊び心ですが、それだけで楽しくなる感じがします。
欠損通りに仕上げられるのに慣れたらKさんのように遊び心を追求
してみてはいかがでしょう。
レリーフを再現する
産経学園ユーカリが丘教室のNさんの作品をご紹介します。
Nさんは多彩なアイディアでこのブログにも頻繁に作品を
紹介させて頂いています。
今回は平皿の接着です。
かなりはっきりしたレリーフのついたお皿です。
角が割れてしまったのを接着した後、欠損を埋められました。
欠損して無くなってしまったレリーフの部分もしっかり再現されて銀泥
で仕上げられました。
仕上げ直後の撮影なので銀の色が白っぽいのですが、いずれ硫化した際
には釉薬に馴染んでわからなくなるかと思います。
深い上に細かいレリーフだったので再現は大変だったかと思います。
レリーフのある器はいろいろありますが、面倒がらずに再現して頂くと
完成度が高くなります。
再現の程度で迷われるようでしたら教室でご相談下さい。
貝絵 秋春
JEUGIAイオンモール八千代緑が丘教室のTさんの作品を
ご紹介致します。
ハマグリ貝の貝絵です。
金繕いの教室では金箔の扱いを学んで頂く為にハマグリ貝に金箔
を貼るカリキュラムをご用意しています。
ここから更に貝絵にチャレンジされたい方には引き続き、ご指導
しております。
左側の貝には秋(紅葉と松葉)、右側の貝には桜を新うるしの色で
描かれました。
Tさんはご趣味でスーパーリアルの油絵を描かれているそうで、
画題を描くのは難なくこなされているのですが、題材の選び方、
レイアウトの考え方など日本文化に合わせて検討して頂きました。
新うるしで描いて頂くと器としても使用が可能なので、飾るだけで
なく食卓にも華を添えるアイテムになるはずです。
楽しんでお使い頂ければ嬉しいです。
縞々復活
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のYさんの作品を
ご紹介致します。
長方皿の割れです。
片身かわりの斜線の柄が和風過ぎず、モダンな感じが魅力のお皿です。
角部分が割れていたのを接着されました。
仕上げは通しで金泥で仕上げた上から染付の斜線を再現するように
銀泥で入れて頂きました。
仕上げ直後は白く抜けた感じに見えますが、いずれ硫化して染付の
ラインが復活したようになる予定です。
Yさんの作品の場合、染付のラインが細いので難しかったとは思いますが、
線を入れるコツがありますので、同様のチャレンジをしてみたい方は
教室でご確認下さい。
仕上げはひと手間かけると、より魅力が増します。
お勧めした場合には是非積極的に取り組んで頂ければと考えています。
常滑焼急須のつまみ
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のSさんの作品をご紹介
致します。
常滑焼の急須のつまみが折れてしまっていました。
使用頻度の高い急須は補強が必須になる筆頭でもあります。
殊につまみは蓋を持ち上げる分の荷重がかかりますので、注意が必要
です。
さらに常滑焼は独特の土の特性で接着自体が難しいところがあります。
そこでSさんには念には念を入れた補強を行なって頂きました。
まず断面に穴を開けて頂き、軸を入れてあります。
さらにつまみと本体の関連を強める為に和紙で補強を行なって頂きました。
これだけの作業をして頂くと再破損のリスクはかなり減ります。
Sさんは作業が丁寧で綺麗なので完成した姿は元からつまみの座部分に
金の装飾が施されていたように見えると思います。
返却された持ち主の方のお喜びも伺える作品になりました。
総体漆繕い
NHK文化センター柏教室におられたSさんの作品を前回に
続いてご紹介します。
欠けを総体漆繕いで直されました。
画像正面に欠けがあったのですが、わかりにくいと思います。
こちらはご友人からの預かり物の茶碗なのですが、金属粉で
仕上げをするのではなく、できるだけ目立たないようにとの
リクエストだったそうなのです。
これを備前焼の赤茶色の色を新うるしの色を調合して再現
されました。
現在、陶磁器の修復方法を「金繕い(金継ぎ)」というので、
金や銀での仕上げが当然のように思われているかと思いますが、
技術の発端は漆の色で完成する「漆繕い」が原点です。
ただ器の色を漆で再現するのは簡単ではありません。
金や銀の金属粉で仕上げを行う方が下地の色に左右されることなく
簡単です。
また金属色はどんな色の釉薬でも相性が良いので、究極は失敗が
ないと言えます。
昨今の金の高騰で金での仕上げを避けられる傾向にありますが、
Sさんの作品のように完成度の高い総体漆繕いは難関なのです。