カテゴリー別アーカイブ: 基本のき
馴染む美しさ
NHK文化センター柏教室のSさんの作品をご紹介致します。
お皿の割れです。
ひびが伸びていないので厳密な「鳥脚型」ではありませんが、王道の
割れ方です。
縁が輪花型で段差もありますので、接着の際にも調整が難しかったと
思いますが、綺麗に整えられた上で金泥で仕上げられました。
黄色味の強いベージュ色の釉薬に金泥が程よく馴染み、上品な仕上がり
になったと思います。
お食事を盛られても見える位置にある金繕いは彩にもなるのではない
でしょうか。
お皿の接着の場合、硬化までの時間の置き方に接着成功の秘訣があり
ます。
お持ち帰りの前に確認をお願い致します。
※初出時、NHK学園市川オープンスクールの方としてしまいました。
お詫びして訂正致します。
漂白の手順
金繕いを行う前に器の汚れをリセットしておくことをお勧めして
います。
昨年末から器の漂白についてご相談が続きましたので、改めてご説明
したいと思います。
特にお悩みが深かったのは20年以上愛用した器のしつこい汚れです。
どんなに漂白しても汚れが浮き上がってくるというものです。
残念ながらある程度長く使っている器の汚れは、なかなか漂白され
ません。
汚れの位置を変えながら、下から湧き上がってくるような状況と根気
よく闘わざるを得ないのです。
拙著「金繕いの本」にも掲載していますが、器の漂白には意外に
入歯洗浄剤が便利です。
何といっても口の中に入れるものの洗浄剤ですから危険な成分が
含まれていないのが魅力です。
単純に経年の汚れ(召し上がったものの調味料)だけでなく、カビが
問題になる場合もあります。
こちらは煮沸消毒が効果があります。
ただ汚れとは言わず「育てた」というお考えの場合は漂白は強制
しておりません。
ご自分の器ですので、ご自分のお気持ちに従って下さい。
欠けetc…
港北カルチャーセンターの方の金繕いをご紹介致します。
欠けの修復です。
それぞれ小さな欠けですが、使うにあたっては気になるサイズ
です。
このような生活していると一番起きやすい欠けが直せることが
金繕いの第1歩かと思います。
金繕いを始められると皆様しみじみおっしゃるのが「捨てなければ
良かった」という言葉です。
破損した器を使うと縁起が悪いという方もおられますし、割れた
器は危険なので、すぐ処分されてしまいます。
気に入っていたのに処分しなければならないのは、もう終わりです。
金繕いで大切なものを使い続けていきませんか?
元茶壷の金繕い
大きく破損した状態でお預かりした壺の金繕いをご紹介
します。
花器としてお使いと承りましたが、ツマミを2箇所切り
取った痕跡がありましたので、本来は茶壷として使われて
いたものだと推察しています。
ここまで大きい破損だと本漆で直す場合は「乾漆」という
阿修羅像と同じ方法を取る方が多いと思いますが、金繕いの
世界では歴史を紐解くと木で修復していたことがわかります。
今回の場合も木材を使って金繕いしました。
木材を使うメリットは加工性の高さにあります。
断面の形状さえ合わせられれば、ほぼ器の形の再現が完了と
言ってもいいくらいの完成度を誇ります。
今回難しかったのは壺が作り手の手なりで整形されているため、
ロクロで作られた器のように正確な回転体ではないことです。
まさに作り手の気持ちになって形を作り込んでいくしかありま
せん。
仕上げは壺の釉薬に馴染む薫銀泥を選択しました。
漆の色で合わせる総体漆繕いも可能ですが、あえて破損部分を
明確にする仕上げを選びました。
この壺が現在の持ち主の方から次世代に引き継がれ、引き続き
愛用されることを願って止みません。
欠けと窯キズ
友人のTさんから依頼された湯呑みの金繕いをご紹介致します。
依頼のキッカケは欠けでしたが、そばにあった窯キズも
合わせて金繕い致しました。
今回の金繕いは本漆で行っています。
まず窯キズを念のため、ひび止めしました。
画像には表れていませんが、欠けの向こう側にもにゅうが入って
おり、こちらも同時にひび止めしています。
その後、欠けと一緒に窯キズも埋めて行きました。
やはり縁に窯キズがあると口当たりがよくありませんし、汚れ
溜まりのようになるのも気になります。
窯キズを埋める作業は欠けと少々違う感覚があります。
というのも破損によって生じた欠損と違い、キズの入り口に
釉薬が回って緩く曲線を描いているからです。
ここをどう収めるのかは作業者の感覚によりますが、あまり
広範囲にしてしまうと金繕いが悪目立ちするので要注意です。
仕上げは錫を使用しました。
錫は陶器の鄙びた感じによく合います。
完成品をご覧になったTさんの第1声が「全然わからない!」
だったので、作戦成功と言えると思います。
こちらはご愛用の品とのこと。
Tさんの「お帰り」という感覚は私にとってもご褒美です。
無料体験「金繕いの世界」
2020年にNHK文化センターで行ったオンデマンド講座「金繕いの
世界」が無料体験キャンペーンで再度視聴出来るようになります。
金繕いの歴史から過去の名品、実際の工程まで解説した本講座は
金繕い初心者の方はもちろん、ご経験のある方にも参考になる
内容になっています。
「金繕い(金継ぎ)」とはどういうものなのかをお知りになりたい
方はこの無料キャンペーンというチャンスを逃さないで下さい!
第3期 8月27日(水)から9月15日(月)です。
ツマミの代替え
NHK文化センター千葉教室のIさんの作品をご紹介致します。
急須の蓋のツマミの金繕いです。
実は元々あったツマミは破損後に紛失されてしまったそうで、
今回の金繕いでは、まずお好みに合う代替え品を探して頂くこと
から始まりました。
結局ご自身が選ばれたのが、ご自宅にあった金属製のうさぎでした。
このうさぎについては何なのかご記憶にないとのことですが、下方に
穴があり、これを利用して蓋本体に結合しています。
結合と表現しただけあって、単に接着しているのではありません。
きちんと蓋本体と一体化する作業をして頂いております。
また金属はすぐそのまま使えません。
然るべき下準備をしてから作業をする必要があります。
急須に限らず様々なツマミがあるかと思いますが、紛失している
ことが多い物です。
その場合にはIさんの作品のように「これは!」という代替え品を
使うと楽しい金繕いになるかと思います。
同様にツマミを紛失されてしまった方は諦めることなく、代替え品を
探すことから始められてはいかがでしょう。
糸で補強
NHK文化センター柏教室のAさんの作品をご紹介致します。
マグカップの割れの補強です。
破損しやすい取手は無事だったものの、底面を経由して割れて
いました。
熱い飲み物を入れるマグカップですので、再破損を防ぐため補強を
施して頂きました。
表に糸を巻くという補強方法なのですが、どこに糸が巻かれているか
お分かりになるでしょうか?
実は黒い縦筋文様が入った部分の上に巻いてあるのです。
元の柄のように馴染んでしまうくらい細く入っていますが、それで
十分補強の意味を成します。
Aさんは数々アイディアに富んだ金繕いをして下さっていますが、今回
は目立たない技が冴えた逸品になりました。
糸を巻く補強方法は単純に糸を巻けばいいというものではありません。
日常の使用に耐えるように数々注意事項があります。
必ず手順を教室で確認してから着手するようお願い致します。
片口の注ぎ口
先日同様、NHK文化センター柏教室に在籍されていたKさんの
作品をご紹介します。
前回はティーポットの注ぎ口でしたが、今回は片口の注ぎ口です。
ポットや急須の注ぎ口と同様に片口の注ぎ口も割れやすい部位です。
釉薬の景色が美しい片口ですが、やや出代が大きいので割れてしまって
いました。
接着して欠損を埋めた後、銀泥で仕上げられています。
化粧土の釉薬に銀泥が合い、とても美しいと思います。
またぶつけて再破損が心配な場合は補強をお勧めしたいと思います。
まずは現状で様子を見て頂き、必要を感じてからでも補強は可能です。
時間をかけて補強をするのも重要ですが、使ってみたいと思われたら
敢えて無理せずお使いになってみて下さい。
注ぎ口を甦らせる
NHK文化センター柏教室に在籍されていたKさんの作品を
ご紹介致します。
ティーポットの注ぎ口先端が損なわれていたのを復元されました。
当会独自の技法で注ぎ口を元の形で作り出して頂きました。
これは現在でも流通しているものだったので、画像検索で元の形
がわかったのも大きいポイントでした。
ティーポットに限らず急須や片口など、注ぐものは先端の水切れが
重要な機能です。
単に何となく形が復元されただけでなく、使っていくにあたって
基本的な機能も重要になると考えています。
これだけの大きい部分を綺麗に作り込むのは一筋縄では叶いません。
Kさんが根気よく作業されたからこその完成度です。
是非皆様に完成の姿だけでなく、その工程の努力も感じて頂きたい
と思います。





















