カテゴリー別アーカイブ: 基本のき
接着したら
4月から受講して下さっている方々の、今月のカリキュラムは
「接着」です。
割れた器を接着するものですが、講座で接着の作業を行って頂き、
来月まではズレが生じないように養生をして頂くようにお願い
しています。
下の画像は、以前ブログでご紹介しました接着直後の器です。
これにぴったり接着する秘訣が写っています。
(詳しくは教室でご説明致します。)
7月には接着後の作業についてご説明致しますが、最終的には
表面に生じた欠損を「ほつれ」「欠け」と同様に埋めていきます。
現在この器は、この欠損を埋める作業が終了しています。
目をつぶって器を触ってみて、欠損がどこにあるのかわからない
状態になっています。
ここまできたら、あとは仕上げをするだけです。
ところで、どんなに接着が上手くいっていても、器は破損する前の
状態に戻った訳ではありません。
小片に割れてしまった部分のみを持ち、器の自重と、盛られた料理
まで支えさせるのは無理があります。
修復中はもとより、修復後の器は両手で丁寧に扱うのが基本です。
金や銀で仕上げるのは、「大切に扱って下さい」という器からのサイン
だとお考え頂ければよろしいかと思います。
梅雨入りしたら
例年より早く、梅雨入りが発表されました。
「目止め」という米の研ぎ汁を使った下準備をして下さっている方が
おられると思いますが、梅雨入りしたら要注意です。
なぜなら高温多湿の天候で、器にカビが生えやすくなってしまうから
です。
私自身は完全に梅雨時は回避しますが、どうしてもなさる場合は数日
晴天が続く時を選ぶなど、慎重にお願い致します。
もしカビが生えてしまった時の対応は、器によって変わりますので、
教室でご質問下さい。
ヒビの直し 途中経過
4月から講座の受講を始めた方は、2回目の5月に『ヒビ•ニュウ』の
直しを行います。
画像は以前もご紹介しました、少々ズレがあるほど深刻なヒビのある
器です。
あえて割ることなくヒビの止めを行い、 欠損を埋めたところです。
器の口縁から見込み部分までヒビが入っています。
欠損はしっかり埋めましたので、あとは仕上げを行うのみです。
このようにヒビは、止めの作業を行ったあと表面の欠損を埋めていきます。
これは割れた器を接着したあとも同様です。
欠損を埋めるという意味では、ホツレ(ミリ単位の小さな欠け)、欠けと
同じ作業になります。
ヒビ•ニュウの難しいところは、器の状態を見極めないと後々支障が生じる
ことです。
そのために下準備をお願いしています。
割れた器の接着
金繕いの教室では、接着の方法を2種類お教えしております。
カリキュラムの第3回目では、新うるしのみで接着する方法。
カリキュラムの後半で、白米と新うるしを混合した「のりうるし」
を行います。
両者の違いは強度です。
のりうるしの方が、新うるしのみより10倍強度が高いのです。
しかし作る課程ごとにコツがありますので、お一人で作るのは
難しいところがあります。
ですので接着する器の状態でどちらを選択するかを決定しています。
いずれにしろ 割れ方によって下準備が必要な場合があるのは変わりません。
事前にご相談頂くのをオススメ致します。
画像は「のりうるし」で8ピースに割れた湯のみ茶碗を接着した
ところです。
このあと欠損した部分が あちこちにあるので、それを埋めて
いきます。
作業を続けるには
金繕いの作業を続けていると筆が固まってしまうことがあります。
それでも作業を続けたい場合、どうしたらいいかご説明したいと
思います。
固まってしまった筆を薄め液で洗ってしまうと、新うるしの質を
落としてしまうので、使わずに筆を緩める方法があります。
たっぷり出した新しい新うるしの中で、ほぐすのです。
穂先に新うるしを含ませたり、ティッシュでしっかりぬぐったりを
数回繰り返すと固まってしまった穂先がゆるむはずです。
なお固まってしまった筆を作業の最後に洗う場合は、 しばらく
洗い用の薄め液の中に浸けておくと、きれいに落ちます。
ぜひお試し下さい。
使ってはいけない
金繕いの教室で、紙ヤスリについて質問が続きましたので、
ブログでもご説明したいと思います。
物を削るというと紙ヤスリが一般的ですが、私共では紙ヤスリの
使用はおすすめしておりません。
なぜなら紙ヤスリについている研磨材が、陶磁器よりも硬く、
100%疵つくからです。
オレンジ色の研磨材がついた紙ヤスリの画像です。
硬度は9と、ダイアモンドに次ぐ硬さです。
耐水ペーパーの画像です。
硬度は9*で、オレンジ色の紙ヤスリを上回る硬さです。
これらを使用した場合、上絵付けが無くなってしまったり、
釉薬が疵だらけになってしまいます。
これは紙ヤスリの細かい番手を使ったとしても変わりません。
疵の深さが変わるだけです。
そしてこの疵を戻す方法は、一般的にはないと言われています。
教室では紙ヤスリを使わずに形を成形する方法をお教えしています。
壊れた器を直す金繕いです。
無用な疵は増やさずに完成させるのがよいと考えています。
いつ洗う?
4月に入り、金繕いの各教室で新規受講者の方々をお迎えしました。
第1回目の講座では、ホツレの修復として新うるしの塗り方を
学んで頂きます。
そして大事なのが、筆の洗い方です。
このブログでも何度も説明していますが、意外にわからなくなって
しまうのが、薄め液で新うるしを洗い落としたあと、いつ洗剤で
洗うかのようです。
答えは“すぐ”です。
よく自宅に帰ってから洗いますとおっしゃる方がおられるのですが、
お帰りになってからだと、薄く穂先に残った新うるしは硬化して
しまっています。
ご遠慮なく教室の水道で洗ってお帰りになって下さい。
洗い方のポイントは、中性洗剤を穂先に含ませて、爪で中まで洗剤が
入るようにほぐしながら洗うことです。
問題は作業中にすでに穂先が固まってしまっていた場合です。
少々薄め液ですすいだだけで新うるしが取れない場合は、15分から
30分ほど薄め液に漬け込んで下さい。
そのあと中性洗剤で洗えば、元の通りになるはずです。
大は小を兼ねない
金繕いの教室で教材としてお配りしているトクサですが、よく似た
物に「大トクサ」「ジャンボトクサ」と言われるものがあります。
左が教材として使っているもの、右が大トクサです。
かなり太さが違うのがおわかり頂けると思います。
実は大トクサは花活けの材料として使われることが多く、花屋でも
手に入りやすいのですが、道具としてはイマイチなのです。
大きいので、これが使えたら仕事がはかどりそうなのですが、
あまり削れません。
入手されたらお使い頂いても構わないのですが、やはり普通サイズの
トクサには敵いません。
大は小を兼ねない、面白いものです。
チューブのキャップが開かなくなったら
金繕いの教室で使っている新うるしのチューブが開かなくなった
場合、一番安全•簡単なのが、熱湯に浸けることです。
適当な器にキャップを下にして浸けるだけです。
1分程で、あっさり開いてくれるはずです。
その際には一番強度があるチューブの肩の部分を持つのが
ポイントです。
くれぐれも口にくわえて歯で噛んであけたりしないで下さい。
チューブをねじ切ってしまう方が多く、大変危険です。
では、そもそも開かなくならないようにするには 、どうしたらいいか。
ひとえに口金•キャップをきれいにしておくことに尽きます。
1日の作業が終わって仕舞う時、ひと手間かけてみて下さい。
チューブを立てて保管しておくのも効果があります。
薄め液は薄めない
各カルチャーセンターの金繕い教室でお使い頂いている
薄め液の使い方を誤っていた方がおられましたので、
改めてご説明したいと思います。
右端にあるのが、薄め液のボトルです。
教室の初回にお渡しし、半量を道具の洗浄用に別の瓶に分けて下さいと
お願いしています。
この際、薄め液を水で薄めることはありません。
薄め液と水は混ざることはなく、分離してしまいます。
さらに洗浄効果も減じます。
また新うるしを水で希釈することもありません。
新うるしも又、水と混ざることはありません。
このように全ての技術•材料を通じて、水で薄めるということは
ありませんので、ご注意下さい。