月別アーカイブ: 2016年1月
形作り
港北カルチャーセンターAクラスのSさんの作品を、ご紹介
致します。
Sさんにとって、初めて仕上げた作品です。
信楽の釉薬に金泥が映えて、とてもいい感じに仕上がりました。
少々ぽってりしたところが、徳利の形に合っているのが好感が
持てる要因だと思います。
欠けには木片を入れるという直し方をして頂いていますが、一般的に
女性は立体視が苦手な方が多く、悩まれることがしばしばあります。
しかしSさんは手仕事がお好きなだけあって、木片を入れる作業が
とてもお上手でした。
また入れた木片を削る作業も的確だったので、今回の仕上がりも
その才がいかんなく発揮された結果と言えます。
木を入れるのに悩まれている方は、ご心配入りません。
Sさんのような方は、年に何人もいらっしゃらないのです。
徐々に慣れて頂ければ幸いです。
足元に
NHK学園市川オープンスクールの方の作品をご紹介
致します。
杯の脚部が欠けてしまったものを、修復されました。
目立つ場所ではありませんが、それが逆に奥ゆかしいように
見えます。
この器の場合、欠け部の形が削りずらく、難しい作業となり
ましたが、根気よく作業された結果、このように完成を
みました。
よく高台は修復しなくてもいいのでは?という質問を受けますが、
器としては接地している部分なので、重要です。
見えにくいとはいえ大切な部分なので、やはり修復はお願いしたい
と思います。
完成品 第1号
NHK文化センター 千葉教室木曜クラスのKさんの作品を
ご紹介致します。
千葉教室木曜クラスは昨年10月に開講したばかりですので、
教室で一番最初に完成した作品となります。
小振りな蕎麦猪口に入ったヒビを仕上げられました。
初心者とは思えない、細くて美しい線を描かれています。
あまりにお上手なので、よくお話をお聞きしたところ、
普段は絵をお描きになっているそうです。
ご本人は謙遜していらっしゃいましたが、かなりの腕前の
ご様子。
美しい線の理由がわかりました。
『筆慣れ』という言葉はないと思いますが、やはり普段から筆を
使う機会が多いと、必然的に違う分野の作業もこなせるように
なると考えます。
Kさんは、余裕があれば器自体の柄に合わせて丸を描き足したかった
とのこと。
それはまずキズを覆い隠す仕上げを行ってから、加筆するのを
お勧めしています。
それは一度に違うことをこなすのが難しいからです。
まずは必要条件のキズを隠す仕上げを行ってからで間に合います。
きっとKさんの腕前なら難なくこなされると思います。
今日の仕上げ第1歩を喜んで頂ければ宜しいのではないで
しょうか?
接着前の準備
かなりバラバラになってしまった器を接着する場合、事前の
準備が大切です。
NHK文化センター横浜教室の方が、とてもよい方法を取られて
いましたので、ご紹介致します。
基本的には講座前に仮組みし、パーツにナンバリングして、
それを写真撮影するのをお勧めしています。
この方の素晴らしかったのは、接合線にマークをつけたことです。
パーツがたくさんあると、それだけで接着の作業が大変に
なりますが、この事前作業で組み立て作業がスムーズに行え
ました。
たくさんのパーツに割れてしまった器を接着する予定の方は、
是非参考になさって下さい。
ところでこのような多数のパーツの組み立てであっても、1度に
行います。
全てのパーツを組み立てることによって器が成り立つからです。
組み立てを何回かに分けてしまうと、結局はまらなくなるパーツが
出ます。
そのためにも事前準備が重要なのです。
藤那海工房の貝香合制作
藤那海工房 土曜日クラスで、パール粉による貝香合
作りを行ったものの完成品をご紹介します。
一般的にひおうぎ貝で黄色のものを選ばれる方は少ないのですが、
さすがデザイナー。内側に反対色の紫が出るのが面白いと
制作されました。
Tさんは思い切りが良く、ダイナミックに箔類をレイアウトしているのが
魅力です。
こちらも表が黄色、中が紫のひおうぎ貝で制作して下さいました。
Sさんは作業が慎重で丁寧な方です。
ひおうぎ貝は小振りな方を選んでおられますが、まだらのオレンジ色が
とてもキュートな貝です。
実は思わぬところに箔が着地してしまったのですが、アクシデントも
意匠のうちと楽しんでしまうのも、いいかと思います。
パール粉の貝は上品な光沢がとても人気です。
また中に絵を描いて頂くのも気軽に出来るのがいいところです。
金繕いの教室の中で制作して頂くのは、なかなか大変なのですが、
ご要望がありましたら、お声掛け下さい。
把手折れシリーズ第3弾
把手折れシリーズ第3弾として、よみうりカルチャーセンター
大宮教室のAさんの作品をご紹介致します。
作家さんもののカップで、巻いて作られたような複雑な把手が
個性的です。
Aさんはその作家さんが大変お気に入りで、カップの把手が
折れてしまっても10年捨てられなかったというくらい思い入れの
ある器でした。
こちらも先日ご紹介した作品と同様、2種類の補強方法を
併用し、飲み物を入れても持ち上げられる強度を作って
います。
把手の形が複雑なだけに作業も大変でしたが、Aさんはコツコツと
続けられました。
この作品で見て頂きたいのが、仕上げに炭色までいぶし切った
銀泥を使用したところです。
カップ本体表の黒い釉薬に合って、完成した直後から馴染んで
います。
Aさんご本人は、もう少し下地をならしておけば良かったと
言っておられますが、カップ本体がゆらぎがあり、きっちり
した形ではないので、現状こそ違和感がないと思います。
長年把手が折れたまま、しまい込まれていたカップが完全
復活です。
きっと行方不明のソーサーも出て来てくれて、お茶を楽しんで
頂けることでしょう。
完成 いろいろ
藤那海工房土曜日クラスの方々の作品を、ご紹介致します。
まずはTさん。
積極的に仕上げに挑んでおられるので、仕上げの筆使いの
上達がめざましいです。
特に今回の作品は、力みがなく、自然に描かれているのが
とても好印象です。
割れのこの形、よく見る形過ぎて、作ったようにさえ見えて
しまうかもしれません。
しかしこの形は力学的に成立している形なのです。
器の形態によって、曲線が横長になったり、縦長になったり
します。
次はUさんの作品です。
計11ピースに割れていたお茶碗を接着し、ついに完成に至り
ました。
これだけバラバラに割れてしまっていると、少々のズレは
致し方ないところ。
それを根気よく埋めて、仕上げられました。
ここまで複雑な割れだと、仕上げも一気には出来ません。
私は太くて、長い、メインストリートと言えるような線から
仕上げて行きますが、ケースバイケースなので、都度ご相談
下さい。
Uさんのお茶碗は労作なので、松茸ごはんのような、ちょっと
いいものが入ったご飯を盛らなきゃ!という冗談が出て、
楽しいお披露目となりました。
ほっとひと安心
昨夏、金繕いではない特別なご依頼を受けて、制作に挑んで
いました。
それが昨日完成し、ご依頼主様に連絡を入れたところです。
ご依頼主様からも喜びの返信を頂き、ひと安心しています。
完成した品はブログへの掲載もお許し頂いていますので、時期が
きたらアップします。
陶磁器の修復も、金繕いの教室も、このように喜んで頂けることが
私の原動力だと実感しました。
把手を補強
NHK文化センター ユーカリが丘教室のIさんの作品を
ご紹介致します。
前日に続いてカップの把手を修復したものです。
把手が2カ所折れていました。
これを2種類の補強方法を使い、再び飲み物を入れて持ち上げる
のに十分な強度を持たせています。
仕上げをしてしまうと、補強がされているのが全くわかりません。
使っておられるのはプラチナ泥です。
プラチナ泥は金泥よりも高価になりますが、釉薬との相性で
決められました。
銀と同じシルバー色ではありますが、青味が強く、少々暗い
感じになります。
Iさんの作業はとても綺麗なので、アップにも耐えますね。
把手の修復は、どこで折れているのか、把手の径はどのくらいか
など、工程を決めるのに判断ポイントが数多くあります。
何よりそれだけ手間がかかるので、ご本人の『覚悟』が必要
かもしれません。
昨日ご紹介したMさんも、今日のIさんも完成した品はご自身の
ものではありません。
お預かりした方の元へお返しするものなので、お二人共慎重に作業
され、大変高い完成度になりました。
きっと持ち主の方は喜ばれることと思います。
ティーカップの把手を…
NHK文化センター ユーカリが丘教室のMさんの作品を
ご紹介致します。
よくある破損だと思いますが、ティーカップの把手が折れて
しまったものです。
把手は根元からカットしてしまい、跡を楕円形の意匠にして
頂きました。
Mさんの作品の秀逸なのが、把手の反対側も同様の意匠に
したことです。
反対側にも同様の花柄があったので、完全に左右対称のデザインに
なりました。
把手が破損した場合、どのように直すかはよくご相談してから
工程を決定します。
またカップとして中に飲み物を入れて持ち上げたいのか、飾りに
なってしまっても構わないのか。
そもそも元の形に修復可能なのか、などなど。
今回のMさんの作品の場合、フリーカップとしての仕立て直し
となりました。
カップ&ソーサーは、日本が輸出した把手なしのカップとお皿
から始まったものなので、Mさんの作品も違和感がないと
教室の方から納得の意見が出ました。
把手の直し方にはいろいろあります。
次回は補強して、元の形に復した方の作品をご紹介致します。