ガラスの金繕い 桜

NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介致します。
ガラスの絵付けのお仕事をなさっていて、5弁の桜の焼成の段階で
ひびが入ってしまった花器を修復されました。

ひびが斜めに入っていた為、断面が見える面積が広く、際立って
しまいました。
そこでHさんはひびの部分を桜の幹に見立てて銀で仕上げをなさい
ました。

秀逸なのが蒔き下漆を黒になさったことです。
これはいずれ銀泥が硫化して黒になることを見越しての計画なの
ですが、硫化前の現状で見ると手前の銀と裏面が見えている奥とで
まるで遠近法を使ったようになっています。

今は銀泥が白いのですが、これが硫化してくると、また違った景色に
なるのが楽しみです。

最近、本漆(シランカップリング剤という化学物質の入ったガラス用
漆を使用)でガラスの修復をされる方が出てきましたが、本漆の場合、
裏面から本漆のこげ茶(生漆の色)が見えてしまいます。
これを味わいと解釈しておられるようです。

Hさんの作品の場合、元々桜の絵付けをされていたこともありますが、
ひびを意匠として見立てて幹として作られていますので、アートと
して大変高い完成度になっています。

ガラス修復の究極の姿として皆様に見て頂きたいと思います。


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