月別アーカイブ: 2023年7月
縁の複数の欠け
NHK学園市川オープンスクールのTさんの作品をご紹介します。
陶器の小鉢の縁がたくさん欠けていました。
陶器製にはありがちなのですが、縁が複数の欠けでガタガタになっていました。
さらに大変だったのが、欠けた部分にカビが発生してしまっていたことです。
以前のブログにも書いていますが、カビは漂白剤では死にません。
好みの環境にあれば、すぐに復活してしまいます。
ですので漂白剤で色を落としたあと、しっかり煮沸消毒する必要があります。
Tさんはこの工程をしっかり行ってから縁の複数の欠けを金繕いされました。
実はこの小鉢はお子さんが小さい時に陶芸教室で作られたもので、まさに
プライスレスの世界唯一の品になります。
多少の揺らぎはOKということで銀泥で仕上げられました。
その後、銀泥がシャンパンゴールド色に硫化したところで色止めを行い、完成
となりました。
陶器のカビ防止は洗浄の後、しっかり乾燥させるのが一番の予防です。
中途半端な乾燥状態で重ねて食器棚にしまってしまうのが主原因だと考えて
います。
世界でただ一つの品、金繕いして蘇りました。
片口の欠け
藤那海工房 西登戸教室のWさんの作品をご紹介致します。
片口の注ぎ口の割れと欠けです。
分かりずらいとは思うのですが、片口の注ぎ口が割れ、先端が欠けて
しまっていました。
恐らく作家さんの作品であろう器自体は陶器の揺らぎが素敵なのですが、
金繕いする側としてはどのように形を詰めていったらいいのか、迷う
ところではあります。
何となく周囲と自然に馴染ませればいいと言ってしまえば簡単ですが、
その尺度は曖昧です。
最終的にはご自身のフィーリングでお決めになって良いかと思います。
Wさんはその詰めの作業を行い、薫銀泥のガンメタリック色で仕上げ
られました。
元々鉄釉の斑点がありましたので、とても自然に仕上がっています。
ざっくりとした陶器の仕上げをなさる方には形の馴染ませ方、仕上げ方共
とても参考になる作品です。
じっくりご覧下さい。
タイルの窯傷
カルチャープラザ公津の杜のTさんの作品をご紹介致します。
Tさんは陶芸をご趣味とされ、そのお仲間からのご依頼で
タイルの窯傷を金繕いされました。
装飾的な紋様が描かれたタイルです。
そもそもこのような精緻なデザインのタイルが珍しいと思うのですが、これに
窯傷が入っていました。
陶芸をご趣味にされておられる方は多いと思いますが、焼成段階の問題で
完全な作品にならないことも多いかと思います。
それを救ってくれるのが金繕いということで、同時に習われている方も珍しく
ありません。
今回ご紹介のタイルも少々ズレが生じた状態でしたので、それを上手く解消し
銀泥で仕上げられました。
いずれ銀泥が硫化し、紋様と上手く馴染んでくれると思います。
窯傷は通常の破損によって生じた傷を直すとは全く違う工程を踏みます。
作業を始められる前に必ずご相談下さい。
美しいノート
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のTさんのノートを
ご紹介致します。
金繕いされている器の記録を取られています。
同じように作業の工程を記録されている方はおられますが、Tさんの
ノートは味わいのあるイラストに着彩されているのが群を抜いて
素敵です。
皆様お忙しいので記録を取るのは大変だと思いますが、途中の手順が
わかりますし、後々似たような破損の場合には参考書になるはずです。
特に作業前の状態を記録しておくと、仕上げ近くなってどのくらい削り
込めばいいのかという時には大変役に立ちます。
それぞれ自分のやり易い方法があるかと思いますので、チャレンジして
みて下さい。
ほわっと
カルチャープラザ公津の杜のSさんの作品をご紹介致します。
カップの欠けの金繕いです。
小ぶりな陶器カップに欠けがあったのですが、その形が角ばっていて
柔らかい器の雰囲気に合っていませんでした。
そこでSさんが選択したのが筆ではないもので仕上げる方法です。
元の欠けの形を隠しつつ、器の雰囲気に合う仕上げが出来ました。
銀泥を使っておられたので、程よく硫化したところで色止めを
されています。
Sさんのように既成概念に囚われることなく、こうしたいというご自分の
考えに素直に従うことが、素敵な作品に繋がったのではないかと思い
ます。
金繕いの教室では是非ご自分のお考えをお伝え下さい。
既存の技術でなくても、ご希望を叶えられるよう全力でサポート致します。