カテゴリー別アーカイブ: 基本のき
乾燥トクサの使い方
以前のブログで紹介しました並川平兵衛商店の乾燥トクサですが、
水に浸けてもバラバラに割れてしまうというご意見がありました。
取り寄せて見ただけで良い品と判断したのですが、使う時の状態を
確認してみました。
結論から言うと、初見の通り大変クオリティーの高いトクサです。
確かに割れやすいのですが、注意すれば問題ありません。
水に浸す時間は定番の20〜30分で、そっと使っているうちに水分が
馴染んできて柔らかくなります。
それでも割れてしまうという方には補助する道具がありますので、
教室でご相談下さい。
並川平兵衛商店さんによれば、刀研ぎではトクサを開いて中の
柔らかいところを取り除き、板に貼るものなのだそうです。
もちろん江戸時代には塩茹でしたトクサを開いて板に貼って使って
いたという知識はありますが、金繕いではそこまでしなくても
十分用を成すと考えています。
美吉野紙 小口販売
先般のブログで美吉野紙の10枚売りは東急ハンズの漆芸材料
コーナーならありますとご紹介していましたが、金繕いの
教室を受講して下さっている方から情報が寄せられました。
取り扱いがあるのは藤井漆工芸株式会社さんです。
530mm ×300mm のサイズで¥162です。
こちらには東急ハンズと同サイズの真綿も販売されています。
10cm × 10cm ¥216 です。
問題は送料です。
都内が¥800、神奈川県、千葉県が¥850なのです。
何人かの方でシェアするなど、お考えになった方が良いかも
しれません。
ご参考まで。
美吉野紙 入手先
昨日からの紙つながりで、漆濾し紙の「美吉野紙」「新吉野紙」
をご説明します。
以前のブログにも書いていますが、「美吉野紙」「新吉野紙」は
漆濾し専用の合成繊維で出来た紙です。
大きさは半紙がもう少し長くなったような感じです。
紙と言っていますが、あくまでも漆工芸の材料なので、購入先は
漆芸材料店になります。
よく和紙の取り扱い店(例えば小津和紙)ではないのですか?と
聞かれるのですが、絶対に扱っていません。
和紙専門店にすれば全く業界違いのものなので、「野菜は置いて
いないのですか?」と聞かれるに等しいことだと思います。
少々悩ましいのが、この漆芸材料店でも100枚単位での扱いしか
ないことです。
漆芸材料の取り扱いがある東急ハンズでは10枚のパックが販売
されていることがあります。
これも真綿同様、常に在庫があるとは限らないので、確認してから
お出かけ下さい。
私の教室の方ならば、1枚単位でお譲りしています。
では漆芸材料店とはどこか?と言いますと、
<東京都内>
播与漆行
藤井漆工芸株式会社
<都外>
佐藤喜代松商店(京都)
箕輪漆行(福井)
私が購入しているのは、以上の4社です。
ネット販売が充実しているのが箕輪漆行で、他の3社はメールや
FAXで商品名を指定して購入出来ます。
教室で漆芸材料店で取り扱っていますと聞いた場合には、この
ような専門店でお探し下さい。
刷毛・ブラシ専門店 江戸屋
漆刷毛を求めて日本橋の江戸屋さんに行ってきました。
江戸屋さんは享保3年(1718年)創業。
建物は大正13年(1924年)建築で登録有形文化財になっています。
木造2階建て、人造石洗い出し仕上げのファサードは刷毛を表し、
看板建築と呼ばれるものです。
関東大震災の後、再建された現在の建物は、今年94歳。
時代の荒波から守られた建物はファサードだけでなく、内部も
魅力があります。
小さな引き出しには約3,000種類にも及ぶ商品が丁寧にしまわれて
います。
ガラス戸を開けて中に入るのは少々勇気がいりますが、外観だけでなく
引き出しが並ぶ様をご覧頂きたいと思います。
江戸屋さんの漆刷毛は、全通しと言われる端から端まで毛が入った
タイプです。
画像のサイズは8分(24mm)。
人間の髪の毛で作られた穂先は、平滑に塗るだけでなく細部までしっかり
塗ることにかけても他の追従を許しません。
(拙著では貝合わせの金箔貼りの際に使用しています。)
なお購入したままでは使えませんので、お求めになりましたら仕立てる
方法を教室でご確認下さい。
【豆知識】看板建築とは
大正期から昭和初期にかけて道路側の全面を看板のように仕上げた店舗建築。
銅板貼りが多い。
頼りになる道具 ルーター
先端が回転する工具・ルーターですが、いろいろな場面で活躍
するので、購入したいという方が増えてきました。
私が使用しているのはキソパワーツールというメーカーのPROXXONという
ミニルーターです。
このタイプは現在廃盤になっていて後継機種はNo.28525です。
比較的小さいサイズながらパワーがあり、どんな場合でも使えるベストセラー
タイプとなっています。
ただ定価が¥17,200(税別)と相応のお値段なので、ご予算やお好みで
別のものでも構わないと思います。
(ネットで探されると¥10,000くらいであるかもしれません)
オススメは先端ビットの径が2.35mmのタイプです。
このサイズはビットのバリエーションが多く、安価な品揃えも豊富です。
あとコンセントタイプの方がパワーがあります。
電池タイプはコードの取り回しの心配がなく扱えるところが
メリットです。
極論を言えばダイソーでも販売しています。
どのように使いたいのかお考えの上、お選び下さい。
真綿の購入先
金繕いの道具として使われる真綿ですが、入手先について話題に
なりましたので、ご説明したいと思います。
かつて真綿は防寒着として使われていて、ご自宅に保管してあったと
いう方が少なくありませんでした。
しかし現在ではそのような習慣もなくなり、入手先が難しくなって
います。
私が購入しているのは、こちらです。
手芸用品のユザワヤで購入しています。
ただこの1袋で使用分20個以上出来てしまうので、個人の方が
購入するには多すぎると思います。
実はAmazonで検索すると、意外に真綿は出てきます。
ただ同様に量が多いので、オススメは「播与漆行」さんです。
価格からしてある程度小分けの量と思われます。
また漆芸材料を扱っている東急ハンズでも小分けサイズが置いて
あることがあります。
常に店頭に並んでいるとは限りませんので、確認の上お出かけ
下さい。
私の教室の方でしたら上の画像のような初回の教材に入れているのと
同じものを販売しています。
ところで誤解している方が多いのですが、真綿は木綿ではなく絹です。
このあたりの説明は以前のブログで掲載しているので、そちらを
ご覧下さい。
トクサ どこで切る?
トクサ収穫の適期なので、トクサに関する質問が増えています。
トクサをどこで切るか質問があったので、ブログでもご説明
致します。
では選択肢です。
A.先端で切る
特に枯れているところを選んで収穫する。
B.途中で切る
次の成長を考え、途中で切る。
C. 根元で切る
春には別のところから新芽が出るので、根元から切る
正解は C の根元から切るです。
A.先端、特に枯れているところは既に朽ちているので、収穫しても
道具としては使用出来ません。
またB.途中で切っても、そこから先の成長はしませんので、残す
意味がありません。
上の画像のように春になると切ったところ以外から新芽が出ます。
収穫した後は、広げて干すのがよいようです。
束ねたり、花器に挿してしまうとカビてしまいます。
干すのは1週間ほどで結構です。
色は枯れ色にならなくても構いません。
拙著をお持ちの方は90ページをご覧下さい。
入手方法や道具への仕立て方など詳しく解説してあります。
プラモデル用塗料ビン
筆洗い用に薄め液を別のビンに分けて下さいとお願いしています。
以前にもご紹介していますが、プラモデル用塗料ビンが便利なので
再度ご紹介致します。
GSIクレオス ホビー部のスペアボトル(SB223)です。
内容量は40ml、定価 ¥162。
本来はプラモデル製作でオリジナルで作った塗料を保管するための
スペアボトルです。
アマゾンでも販売していますが、ヨドバシカメラの通販ですと定価より
安くなるようです。
便利なのが下の画像で写っているように、キャップに中栓がついている
ところです。
薄め液の元々のビンが空になったところで再利用する手もあるのですが、
中栓が開け閉めしているうちに破れやすいのが難点です。
それがこのボトルだと一体になっているので、キャップを開けるだけで
いいのです。
ところでガラスビンがいいのですか?とよく質問されるのですが、
プラスチックだと溶けてしまうものがあるので、ガラスがよろしいかと
思います。
また筆をある程度の時間浸けておきたい場合にも、ガラスの方が安定感
があります。
もちろんプラモデル店でも取り扱いがあります。
使ってみたい方はお探し下さい。
彫刻刀は使えるか?
彫刻刀を使ってもいいですか?というご質問を頂きました。
以前、彫刻刀を使う工芸を習っておられたそうで、その時の物を
流用出来ないかということでした。
作業したい場所に適切な形状の彫刻刀が選択できるのであれば、
使っても構いません。
もっと言えばあまり切れすぎない刃の方が器を痛めないようです。
ただ彫刻刀には致命的な問題があります。
それは切れ味が落ちてきた時に研がなければならないということです。
刃の形に凹みがある簡易式の砥石もありますが、元の切れ味にまで
研ぎ上げるのは難しいところがあります。
そもそも彫刻刀を使える場面では、それほど鋭い切れ味は必要とされ
ません。
それで研ぎが必要となると、道具としては適切とは言えないかも
しれません。
以前使っていた物の流用ではなく、本当に金繕いに向いている道具を
考えられた方がいいのではないでしょうか?
置物の修復
セブンカルチャークラブ成田教室のKさんの作品をご紹介
致します。
高さ40cmくらいの狸の置物です。
何とも愛らしい表情の狸です。
Kさんはとても大切にされていたのですが、近所の子供の
野球のボールが飛び込んできて、バラバラに割れてしまった
そうです。
実はこれは「のりうるし」で接着した直後で、完成はしていません。
今後、表は傷が明確にならない方が良いということで、このままにし
裏面の欠損を埋めて強度を高め、目立たない仕上げを施すことに
なりました。
置物の場合、食事に使う器と違って修復工程は柔軟に対応していいと
考えています。
ですので置物の修復にあたっては、どのようにしたいかのご希望を
お話頂ければ、それに合わせて工程をご提案致します。