月別アーカイブ: 2018年7月
藍 挿し芽の仕方
先般コナジラミ襲来で枯らしてしまった藍ですが、挿し芽のために
切ってみました。
最初に取った3本は枯れてしまったのですが、後から取った1本は
根が出てきています。
水を入れたコップに入れて、2日ほどで根が出ました。
時間差で後2本取っているのですが、こちらは根が出る気配なしです。
どうやら元々の株の元気度合いによるようです。
原一菜先生に確認したところ、挿し芽をするなら成長期の7月中が
良いようです。
8月に入ると葉に栄養を蓄えなければならないので、成長点を切るのは
よくないそうです。
実は決意表明にも関わらず、その後藍はどんどん枯れてしまいました。
残るは1株です。
原因は今年の暑さとも言えるのですが、根本的な原因は土にあります。
昨年使った土が水はけが良くなかったので、今年は変えたつもりだったの
ですが、ココナッツファイバーが主原料という意味では同じものでした。
このココナッツファイバーは「軽い」とか「ベランダ用」と表記されて
いる培養土に配合されているようですが、これが水はけが悪く、まるで
保温材のように暑さを取り込んでしまうのです。
これを藤那海工房の金繕い教室に来て下さっている方からお聞きし、慌てて
藍を植え替えたのですが、時すでに遅し。
ビオトープにも使えるトクサですら根腐れのような状態になりつつあるので、
早急に土を入れ替えなければと考えています。
本来トクサは7〜8月の盛夏には植え替えに適さないのですが、そうも
言っていられないようです。
土の件を教えて下さった方が「昔からのものが一番良い」とおっしゃって
いましたが、これが真髄だと思います。
金繕いにも通じるお話に心底納得しました。
黒楽茶碗のひび
黒楽茶碗にたくさんヒビが入ってしまったものの金繕いを
ご依頼頂きました。
こちらも本漆で修復し、ヒビがわからないように仕上げています。
縁から高台にかけて1.5〜2cm間隔で20本弱のヒビが入っていました。
おそらく画像では全くわからないと思います。
このヒビにしっかり黒漆を染み込ませて、止めています。
一部縁に近いところに、ごく小さな欠けがあったので埋めてありますが、
こちらもわからなくなっています。
このような方法を取れたのは、事前に下準備をして過剰に黒漆が素地に
染み込まないようにしているからです。
下準備がなく黒漆を染み込ませると、柔らかく隙間のある素地が漆を
含んでしまい、数ヶ月乾燥しない状態になる可能性があります。
器の釉薬に馴染ませて修復する方法を「総体漆繕い」と言いますが、
過去にたくさん名品があります。
静嘉堂文庫の茶入れ「付藻茄子」「松本茄子」は、その代表例でしょう。
このところ金繕いのご依頼を受けた器をご紹介していますが、HP上では
ご依頼を受けていないとしています。
基本的に私が直接存じ上げている方か、間に紹介者がいらっしゃる場合は
金繕いをお受けしております。
仕上げ etc
NHK文化センター柏教室のAさんの作品をご紹介致します。
Aさんは受講1年未満ですが、いろいろと仕上げていらっしゃい
ました。
マグカップの縁の欠けです。
濃い瑠璃釉に、いずれ銀泥の仕上げが馴染む予定です。
湯のみのひびを仕上げられました。
緑釉に金泥の仕上げが映えています。
線の描き方も器の大きさに対して良いバランスだと思います。
大ぶりのマグカップのひびを仕上げられました。
金泥の線がマグカップの大きさに合う威勢の良さで、気持ちいい
感じがします。
飴釉に金泥が合っているのもより良く見せている理由です。
Aさんは同じ時期に受講を始められた方共々、欠損を埋めるのが大変
お上手で、このようなたくさんの完成になりました。
受講期間に対して、どのくらい完成するかは一概に言えません。
お持ちになった直したい器の破損が深刻であれば時間がかかりますし、
ご自身が作業にどのくらい時間が使えるかでも変わります。
カリキュラムは金繕いの工程が1歩1歩学んで頂けるように効率良く
組んであります。
どれ一つ取っても無駄にはなりません。
ゆったりとした気持ちで取り組んで頂ければと思っています。
カッターの持ち方
最近気がついたのですが、カッターを鉛筆持ちしている方が
意外に多いのです。
鉛筆持ちしていると作業上に問題が出ます。
それは手首の動き方が制限されてしまうことに原因があります。
作業する時のお勧めの持ち方は、上から握り込む方法です。
画像でわかりにくいようでしたら教室で実演しますので、ご質問
下さい。
カッターの動かし方がわからないとか、引き切りが出来ないという
ようなお悩みをお持ちの方は、カッターの持ち方に原因がある
かもしれません。
カッターに限らず、道具の持ち方は作業の効率に影響します。
実演の際には作業している部分だけではなく、道具の持ち方から
どのくらいの力を入れているかまで見て頂くのがよろしいかと
思います。
複雑な割れの仕上げ
NHK文化センター 千葉教室のTさんの作品をご紹介致します。
複雑に割れたフリーカップを仕上げられました。
接着をのりうるしでされた後、欠損を埋めて、仕上げをされました。
ここまで複雑な割れですと、一度に仕上げるのは難しいところが
あります。
そこでTさんは複数回に分けて仕上げをされているのですが、その際
問題になるのが継ぎ目です。
画像をご覧頂いてわかるように、継ぎ目は一切目立ちません。
このような状態になるには、コツがあります。
複雑な割れの仕上げを行う方は、あらかじめ教室で手順をご確認
下さい。
Tさんの作品は陶器のマットな釉薬に金泥が合っている上、複雑な割れ
の線が景色となって、アートな仕上がりになりました。
Tさんは一つ一つの作業に妥協がないので、これからも完成度の高い
作品が出来上がるのを楽しみにしています。
白生地の買い出し 2018
高田馬場にある染色材料店・誠和さんに白生地の買い出しに
行ってきました。
7〜8月はセール期間ということで、ストールの生地がお安くなって
いました。
面白くなるのではと思い、買ってきたのが上の画像の物です。
全体に横糸がシルクなのですが、右側の縦糸が木綿なので、豆汁
下地をしなければ全く染まらないはずです。
太く縦と横に所々入っているのがビスコース。
太い繭状に入っているのは木綿です。
こちらも全く染まらないので、1枚のストールで色々な表情が
楽しめる物になる予定です。
1株枯れてしまった藍ですが、これ以上虫害にはあわないぞという
決意表明の白生地買い出しです。
成田先生から挿し芽で増やす方法があるのでは?というアドバイスを
もらったので、時期を見てチャレンジしようと思います。
上手くいけば失った1株分復活です。
着彩する2
昨日に引き続き、仕上げに着彩した作品をご紹介致します。
NHK文化センター柏教室のTさんの作品です。
花の柄が入ったお茶碗です。
ちょうど花の部分にひびが入っており、痛々しい感じになっていました。
そこを色漆で着彩して緩和しています。
表の柄も細線を描いたり、淡く着彩しています。
昨日の作品同様、下に金泥があることで品良く色が見えます。
ちょっとしたコツがありますので、なさりたい方は教室でご質問
下さい。
着彩する1
セブンカルチャークラブ成田教室のGさんの作品をご紹介
致します。
スナフキンのマグカップです。
かなり深刻なひび割れで、特に内側の欠損が変な形をしていました。
そのため埋めるのにも仕上げるにも苦労されましたが、一番気に
なったのが表のスナフキンの顔の部分です。
あまりにも目立つようにひびの線が入っているため、顔周りの仕上げを
調合した色漆で着彩して頂きました。
画像だとわかりにくくなってしまったのですが、地色の淡いグリーンを
金泥の仕上げの上に重ねています。
着彩した色の下に金が透けて見えるので、色漆のみより高級感が出る
ように思います。
わずかな作業ではありますが、Gさんの作品のようにキャラクターの
顔だと少しでも目立たない方がいいと思います。
このところ効果が出そうな方にはお勧めしておりますので、引き続き
作品をご紹介したいと思います。
藍 1株枯れる
風の強い日は屋内に取り込むまでの過保護振りで育てていた
今年の藍ですが、1株枯れてしまいました。
突然、次々葉が枯れ始めて、ついにほとんど葉がなくなってしまいました。
この状態は去年と同じ。
また水の遣りすぎで根腐れさせてしまったのかと思っていたところ、
白い虫を発見!
慌ててオルトラン粒状を散布しました。
最初に枯れ始めた株は、全く葉がなくなってしまいましたが、隣の株は
葉裏に白い虫がびっしり付くものの、オルトランの効果で全滅させられ
ました。
この虫をアブラムシだと思い込んでいたのですが「葉裏 白い虫」と
検索して出てきたのが、「コナジラミ」という名前です。
シラミとついていますがカメムシ目の虫で羽があり、どこからともなく
飛来して繁殖するようです。
強い繁殖力で次々成虫になり、宿主を弱らせます。
我が家の藍の場合は、あっという間に枯らせて隣の株、隣のプランターへ
移っていったのが去年の状況だと理解しました。
降雨で葉が濡れる地植えと違い、乾燥しやすいマンションベランダの
プランターではよくある虫害のようです。
100%飛来を防ぐのは無理なので、定期的に効果のある薬剤を散布する
ことにしました。
敵がわかれば対策も打てます。
しかしこれがわかるまでに去年の6株と今年の1株を枯らせてしまった
かと思うと…
自分の観察力の甘さにがっくりきています。
何度もやり直す
NHK学園市川オープンスクールのKさんの作品をご紹介致します。
マグカップの縁の欠けです。
ご家庭で最も生じるであろう、ちょっとした欠けです。
こちらを本当に美しく仕上げられました。
画像をクリックし拡大して、ご覧頂くとその美しさがお分かり頂けると
思います。
全く刷毛目が入っていない均一な仕上げです。
この仕上がりは欠損の埋め方が完璧であることが必須条件ではありますが、
Kさんが納得いくまで何度も仕上げをやり直した結果なのです。
Kさんは大変熱心に受講して下さっており、普通はお話しないような深い
質問をなさいます。
それを聞くだけでなく何度もやり直した結果、ここまでの域に達せ
られたのです。
金繕いの時間は破損を埋めることに大半の時間が費やされるため、仕上げ
はそう頻繁に行うものではありません。
しかし結果として見えるのは仕上げなので、どなたも美しく完成させたいと
思われるでしょう。
そのためには努力が必要と改めて思わせてくれたKさんの作品でした。