日別アーカイブ: 2017年11月12日

「金繕いの本」が出来るまで 11

前回、校正の話をアップしました。
その直前まで悩んだのが、サブタイトルです。

タイトルの「金繕いの本」というのはブックデザイナーの平野さんの
提案で、企画がスタートしてすぐに決まりました。
シンプルな言葉の方がわかりやすくて良いという説明に、監修の原一菜先生
共々納得したからです。

しかしこれには販売上、問題がなかったとは言えません。
それは現在、陶磁器の修復というと圧倒的に「金継ぎ」と称する方が
ポピュラーになってしまっていたからです。
そこで内容を表すサブタイトルの重要性が強まりました。

最初の案が、
必ずできる成功の実例集
はじめてから本漆、ガラスなどの応用テクニックまで
はじめてから応用技術まで、これ1冊でわかる
でした。
今、読んでもカタイですね。

次に出たのが、
この1冊で応用までできる
はじめてでも必ずできる
割れた器がよみがえる
まだまだ内容を具体的に表そうとしています。

最後に提案したのが、
はじめてでも上手にできる
はじめての方から、しっかり学びたい方まで
うつわを直したいと思ったら
愛着あるうつわを蘇らせる
大切な器を蘇らせる
慈しんで直す大切な器
少し最終案の片鱗が出てきました。

決定した「大切なうつわを直したい」は、Y編集長の決断です。
私のあとがきの冒頭の文を読んで、これだ!と思ったそうです。
金繕いをやってみたいと思うきっかけは、これではないかと。
シンプルかつダイレクトに訴える文が一番力があるというのが、
Y編集長の考えです。

この考えは本当に的を射ていて、このところ受けた取材でも
このサブタイトルを流用されています。
それはこの言葉が印象的で力強いからではないでしょうか?

私もこのサブタイトルがとても気に入っています。
素直な気持ちが表現されているのはもちろんですが、自分が
忘れてはいけない原点を示してくれているように思うからです。


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