月別アーカイブ: 2014年12月
2015用 門松
先日の屠蘇と合わせて、特別講座では門松も制作しています。
引っ越したマンションは門扉がありますので、門扉につけました。
太田流の門松は、根引きの松であること、左右で松の樹種が違う
ことが大きな特徴です。
家の間取りで、右左の松の樹種が決まります。
今年苦心したのが、右側の松の幹が曲がっているところです。
曲がっていると、水引の下の掛け紙を巻くのがとても難しく
なります。
ところで門松は師走に入れば、いつ飾ってもいいことになっています。
やってはいけないのが、31日に飾ることです。
一夜飾りといって、付け焼き刃を意味するからです。
私も30日に飾りつけました。
2014年もあと数時間で終わりになります。
どうぞ来年もよろしくお願い致します。
トクサの刈り取り 2014
今年も年末にトクサの刈り取りを行いました。
刈り取った状態です。
先の枯れた部分は切り落とし、細すぎるものは取り除きます。
生えている時点で枯れているものは劣化していますので、道具としては
使えません。
選定した状態がこれです。
1週間干したら、道具として使用可能になります。
刈り取ったあとの状態です。
残った部分は枯れてしまいます。
ここから新芽は出てきません。
来年春、別のところから芽が出てきます。
地面から上がなくなっても根は生きています。
新芽が出るまでは、それほど頻繁でなくとも構わないので、
水やりを忘れないようにするのが大切です。
トクサは寒さに当たれば当たるほど、硬くなると言います。
私の物は鉢植えのせいか、寒気に当たると寒さ焼けしてしまうので、
毎年早めに刈り取りしています。
しかし地植えの方はなるべく寒さに当て、刈り取った方がよいと思います。
2015用 屠蘇
今年も原一菜先生の特別講座で、屠蘇の調合を行ってきました。
以前のブログに書きましたように、外袋も薬効成分のひとつです。
今年は手順の違いで3色となりました。
それぞれで調合が違えてあります。
今年もみりんで頂く予定。
お正月だけの味です。
削りが上手
NHK学園市川オープンスクールのTさんの作品をご紹介
致します。
Tさんは、受講9ヶ月目。徐々に仕上げをして下さっています。
無釉の焼き締めのお皿です。
金泥で仕上げられたのが、上手く馴染んでいます。
裏側の仕上げが太くなってしまったのを気にされていますが、表の
仕上げがきれいなので、気にせずお使い頂いていいかと思います。
欠けの直しを、やはり金泥で仕上げられています。
Tさんが素晴らしいのが、欠損を埋めた所を器の形通りに削るのが
大変お上手なことです。
形態の作り方は勿論、表面を平滑にされるのも大変綺麗になさいます。
これが仕上げをした時に、効果を発揮します。
欠損を埋めるのは時間も手間もかかるので、ついつい早めに仕上げを
してしまうのですが、しっかり下地が出来ていると仕上げが必然的に
楽に綺麗になります。
大変ではありますが、下地の作り込みにはこだわって頂きたいのです。
樽柿
このところ頂き物でフルーツ天国の我が家です。
特にめずらしいと思ったのが「樽柿」です。
見た目は何ら普通の柿と変わりがないのですが、これは渋柿を空いた酒樽に
詰め、樽に残ったアルコール分で渋を抜いて甘くした柿なのだそうです。
アルコール分は焼酎と聞きました。
表面がやわらかくなったところで食べてみましたら、甘い柿がやわらかく
なった状態より、すっきりとした甘さなのです。
美味!
シンデレラ•ツリー
今日は原一菜先生のNHK文化センター横浜教室の助手の日
でした。
横浜教室のあるランドマークプラザではディズニーのシンデレラを
モチーフにした「シンデレラ•ツリー」が飾られています。
ガラスの靴やカボチャの馬車があしらわれているようです。
今ではライトアップされたツリーは珍しくありませんが、ランドマーク
プラザのツリーは特別のような気がします。
香水塔の修復
先日からレポートしている庭園美術館の香水塔について、今回の
修復過程の興味深い点について書いてみたいと思います。
このオブジェの白い弾丸状の部分と上の渦巻き部分は、フランスの
国立セーブル製陶所で作られています。
弾丸状の部分は庭園美術館として生まれ変わる前に破損し、かなり
バラバラに割れてしまっていました。
以前の修復で形状は戻されていたものの、ひび割れがひどくなり、今回
改めて修復されました。
この修復を担当されたのが西洋の古陶磁器修復を行う工房いにしえの
佐野智恵子さんです。
佐野さんはイギリスで専門教育を受け、「カラーフィル」という方法で
修復をなさいます。
これは元の陶磁器の色•透明度•質感を合わせたパテを埋め込む方法で、
再修復もしやすいのだそうです。
ここに日本の金繕いとは文化の違いがあります。
陶磁器が後の世代に伝える文化財と捉え、表面的には全くわからない
ように修復し、数十年後、数百年後の再修復にも備えるのがイギリス
の文化なのです。
(食器としては使用出来なくなります。)
それに対し、日本の金繕いは使う為に直すのが第一義となります。
これはTOPページの記事にも書きましたように、持ち主のステータスとして
茶席に出すのが大事だったからです。
また繕った状態も景色として尊びました。
香水塔は細かい破片に割れてしまっているなどとは、全くわからない
ように修復されています。
この角度から見るとミミズ腫れ様の線が数本見えるくらいです。
香水塔自体の美しさとともに、それを拝見することを可能にして
くれた高い技術をご覧頂きたいと思います。
仕上げチャレンジ
NHK文化センター柏教室日曜クラスのUさんの作品をご紹介
致します。
今年4月から始まった日曜午後クラスも半年終了し、仕上げに
チャレンジする方が増えてきました。
ヒビの直しです。
思い切って描かれた線が、気持ちよく延びています。
内側の線は描きにくいので、表と比べて悩まれたようです。
これは何度か経験し、慣れて行くしかありません。
こちらは欠けの直しです。
教室で仕上げた直後を撮影させて頂きました。
実は欠けの形はもう少し複雑だったのですが、思い切って形を
すっきりまとめられました。
これも直す方の好みであり、個性になります。
器に金彩があるので、とても自然な仕上がりになりました。
Uさんは、仕上げは溜めずにどんどんしていった方がよいという
私のアドバイスを気に留めて下さり、チャレンジして下さって
います。
それぞれの器で仕上げの手順は全く異なります。
そのひとつひとつが、ご自身の経験になりますので、ひき続き
チャレンジをお願いしたいと思います。
グッドバランス
NHK文化センター柏教室のNさんの作品をご紹介致します。
京焼のお抹茶茶碗のヒビを直されました。
このヒビがかなり深刻で、ズレが出ていました。
これをヒビ止めと合わせて補正し、欠損部を埋めて金泥で仕上げられ
ました。
ご本人としては、もっと華奢な線で仕上げをされたかったそうなのですが、
胴部にヘラ削りがあるざっくりとしたお茶碗なので、線の感じとしては
丁度よいと思います。
複雑な形状の直しですが、綺麗に描かれているのも秀逸です。
また器の金彩とも呼応して、直しに違和感がありません。
やり直しも考えられておられたNさんも、教室のみなさんがとてもよいと
賞賛されて、安心なさったようです。
お預かり物の器なのですが、きっと持ち主も喜ばれるに違いありません。
金彩のある京焼のお抹茶茶碗の直しをされている方は、多いと思います。
ぜひ参考になさって頂きたいと思います。
コンクリートに漆塗り
先日の庭園美術館•次室について、レポートします。
次室は香水塔と呼ばれるアンリ•ラパン(画家•室内装飾家)がデザイン
したオブジェがあり、これが見所のひとつとなっています。
これの台座と、柱が漆塗りなのです。
それもコンクリートに漆塗りというのが重要で、金沢の漆職人で
あった遊部重二氏が考案し、昭和5(1930)年に特許を取得しています。
しかし技術としては、半世紀以上前になくなってしまっていました。
それを今回のリニューアルで再現に成功したそうで、展覧会では
そのサンプルを触ることも可能です。
展覧会上の資料では、この技術の具体的な案内がありませんでした
ので、どのような工夫がなされているのかわかりません。
想像するにアルカリ性のコンクリートに対し、生の漆が活着するのが
難しいのではないか、ということくらいです。
いずれにしろそれを克服する技術が復活したということは、漆の
史上最強の塗料としての面目躍如と言えるでしょう。
次の機会には、香水塔の復元についてレポートしたいと思います。