月別アーカイブ: 2015年2月

プロダクトデザイナーの道具箱

藤那海工房 土曜日クラスのUさんの道具箱をご紹介致します。
プロダクトデザイナーのUさんは、道具箱を自作されています。

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素材はボール紙で、両面テープで組み立てているそうです。
真ん中の仕切りは可動式で、筆や道具類を入れるトレー部もあります。

自作した動機は、薄め液のボトルを立てて入れる物が欲しかったから
だそうです。
確かに市販の工具箱だと、薄め液のボトルを立てて、筆類が入る仕様の
ものはありません。
私もボトルは別持ちしています。
このような創作が得意な方は、自作するのもよろしいかと思います。

道具箱は、それぞれ個性があるものです。
面白い道具箱をお持ちの方にお願いして、ご紹介させて頂こうと
思います。
お願いしましたら、是非撮影許可下さいませ。


カテゴリー: 日常の風景 |

美しいゆらぎ

藤那海工房 土曜日クラスのTさんの作品をご紹介致します。
前回ポットの修復を完成されましたが、今回は小鉢の
仕上げをされました。

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なかなか複雑な破損だったのですが、それが魅力になっています。
仕上げは3回ほどに分けてされているそうですが、継ぎ目が全く
わかりません。
蒔くタイミングもよいので、金の発色がとてもいいです。

Tさん曰く、ゆらぎのある線の方が描きやすいと。
実はその通りなのです。
均一に線を描くのは難しいのですが、Tさんの作品のように器自体に
ゆらぎがあると、例え筆がよろけたとしても味になってしまいます。

この器は預かり物なので持ち主に返却されるそうですが、それが
惜しくなってしまう程、完成度の高い作品です。


カテゴリー: 生徒さんの作品 |

ハマグリ カニとの戦い

ハマグリ貝には、その貝が生育してきた歴史が刻まれていると
以前のブログに書きました。
稚貝として放流された時期や、ツメタガイとの戦いなど、貝の
表面に現れているのです。

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画像の貝は「カニ」に襲われたものと思われます。
これは貝の両方の同じ位置にキズがあるところから、カニと分かる
のです。
つまりカニのはさみで挟まれたあとという訳です。

近年関東地方の外洋では、ジョレンという金属製の熊手のようなもので
ハマグリの取るようになり、表面に深いキズのついた貝が多くなって
しまいました。

貝合せの制作では、なるべく貝表面がきれいなものを入手したいところ
ですが、なかなか難しいようです。

日本の古典文学には、お姫様がキズのある貝を愛でたという一文があるそう
です。
貝合せの遊びは、表面を見て神経衰弱のように合うものを探す遊びですので、
キズがあると目印になります。
それをお姫様は愛でたのです。

カニによるキズであれ、ジョレンによるキズであれ、いにしえのお姫様のように
その貝の歴史を思って愛でるというのもよろしいのではないでしょうか?


カテゴリー: 貝合わせ |

好きであれば

よみうりカルチャーセンター川口教室のIさんの作品を、
ご紹介致します。

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形も柄も愛らしい、三つ葉型の器です。
欠けやヒビが入っていたのを、銀泥•金泥でそれぞれ仕上げられました。

ご質問があったのが、金•銀、どちらで仕上げるべきなのかということです。
これは以前のブログでも書いたかと思いますが、陶器と磁器でセオリーが
あります。
しかしこれは迷った場合に使って頂ければよいことで、基本はご自分の
好みで決められればいいのです。
その他、元々の柄に金彩が入っているなどの点を根拠にしてもいいかも
しれません。

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6cm角ほどの、小さなお重の修復です。
金では器のゆらぎと合わないとお考えになり、銀泥で仕上げられました。

Iさんは、筆での仕上げに自信がないとおっしゃいます。
再三書いているように、筆に慣れていない現代人がいきなり上手に
仕上げが出来るはずがありません。
今の自分が出来る仕上げを楽しまれるのがいいと思います。

いろいろチャレンジしているうちに必然的に腕は上がります。
今の仕上げはいつか出来なくなるのです。
そう思えば愛おしいではありませんか。

Iさんは骨董、器がお好きで、教室にお持ちになる器も、修復が
難しいものをお持ちになります。
上の画像のお重の蓋など、最難関のチャレンジといえるものをなさって
おられます。
だからこそなかなか完成に近づかないともいえるのですが…

しかしお好きな気持ちが仕上げにも現れていて、とても好感度が
あります。
じれったいとは思いますが、早道を選ばれるのではなく、王道を
歩んでよい作品を作って頂ければと願っております。


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筆の洗い方 再録

度々新うるしを使った筆の洗い方は、ブログにアップしていますが、
最近受講を始めた方々のために再録致します。

薄め液は、ジャムの瓶などに半量分けます。
これを筆や道具の洗い用とします。

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筆はこの中で泳がすように洗います。
瓶の底に押し付けて洗うと、金具に当たって毛が切れてしまい、穂先が
細くなってしまいます。

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泳がすように洗っては、ティッシュにオフするを繰り返し、ティッシュに
新うるしの色が着かなくなったら、洗剤で洗います。
洗剤は台所用でも手洗い用でも構いませんが、液体がよいです。

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穂先に洗剤を含ませて、穂先をほぐすように爪で中まで洗剤分を
しみ込ませます。
このようにしっかり洗わないと、穂先が新うるしの成分で固まって
しまいます。
また洗うのも薄め液で洗ったあとすぐ行います。
時間が経ってしまうと、固まってしまいます。

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洗ったあとは、穂先が湿っているうちにキャップをします。
穂先が乾いてしまって、ふわふわと広がってしまってからキャップを
しますと、毛が入りきりません。

道具の後片付けは面倒なものです。
習慣づけるしかありませんが、筆のコンディションが良ければ、
作業も快適に出来ます。
どうぞ大事にしてあげて下さい。


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金の杯

貝合せの金箔貼りの応用で、杯を制作してみました。

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これは島台茶碗の金•銀箔の貼り直しと工程的に同一の技術です。
金箔が鮮やかで、男性からも「これはやってみたい」という声が上がります。

但し見た目と違って、意外に手間がかかっています。
チャレンジしたい方は、必ず施してみたい器を教室に持参されて、工程を
確認して下さい。

現在銀箔を貼った杯を制作しています。
完成したらブログにアップします。
お楽しみに!


カテゴリー: 基本のき |

ブランドのりで

昨年6月のブログで、変わった道具としてでんぷんのりを
ご紹介しました。

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その際100円ショップなどのノーブランドのりは、劣化することが
あるので、避けた方がよいと書きました。
劣化の状態としてボソボソとした半固まりの状態になるのを経験して
いたのですが、まったく逆のサラサラとした状態の劣化もあることが
わかりました。

これは一見問題なく使えそうなので使いたくなりますが、期待する
効果が出ません。
あとの工程に差し障りがありますので、使わない方が賢明です。

やはり画像の「ヤマトのり」の他、「フエキのり」など昔からある
ブランドのりをお求め頂くのがよろしいかと思います。


カテゴリー: 基本のき |

港北カルチャーセンター開講

昨日港北カルチャーセンターの教室が開講しました。
おかげさまでたくさんのお申し込みを頂き、満席での
スタートになりました。

初回は下準備からホツレ•欠けの修復の説明と盛りだくさんなのですが、
皆様熱心に受講なさっておられました。
とてもやりがいのある雰囲気で、私も頑張らなければと気持ちを新たに
しています。

受講の皆様、どうぞよろしくお願い致します。

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港北カルチャーセンター展示 参考作品


カテゴリー: 日常の風景 |

粋な仕上げ

NHK学園市川オープンスクールのMさんの作品をご紹介
致します。

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欠けから続くヒビがありました。
ヒビの止めをしてあるのですが、しみ込みが出来てしまいました。
これを隠すとなると、太い線で仕上げをしなければなりません。
それは無粋とMさんは器の柄にある露芝をモチーフにした線で仕上げ
られました。
その結果、器自体の柄と呼応した粋なデザインとなりました。

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銀箔が釉下に入った様子が美しい猪口です。
金泥がお酒に映えて、とてもきれいなのだそうです。
本当は盛り上げた線にしたかったとのことですが、お気に入りの
逸品の復活を喜んでおられるので、まずは現状を楽しまれるのが
よろしいかと思います。

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こちらも枇杷色の釉薬が美しい猪口です。
金泥がしっくりと合っており、うつくしい仕上がりです。

Mさんはお仕事が技術系なだけに、何事も緻密で丁寧になさいます。
大切にされている器の数々が、その緻密さで蘇っていくことでしょう。
そのお手伝いするのを楽しみにしています。


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特殊加工刃を使ってみた

カッターの替刃に特殊加工されたものが販売されているので、試して
みました。

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こちらは住友3Mの「チタンコート刃」です。
まばゆいばかりのゴールド色です。

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こちらはカッター発祥メーカーのOLFA「黒刃」です。

両者とも一般のシルバー色の刃より断面で刃先が鋭角に研磨されています。
これによって切れ味の向上と入り込みの良さが実現されています。
いわゆるデザインナイフのカッター版という感じです。

違いは表面のコーティングのありなしです。
3Mの方はチタンコーティングがされていることで、切れ味が2倍長持ちと
うたっています。

実際使ってみて黒刃は「初期の切れ味向上」としている通り、使い始めの
切れ味はよいのですが、それが持続しません。
「初期」という言い方に偽りなしです。
チタンコート刃は、黒刃に比べて切れ味が確かに持ちます。

ではこれを金繕いに使って問題ないのか、という点です。
まずチタンは高硬度というように「6」あります。
これは陶磁器より高い数値です。
すなわち陶磁器を痛める確率が高いということです。

両方の特徴である鋭角研磨ですが、これも「入り込み」と言っている
ように刃が物の中に入りやすいので、注意が必要となります。

加えて価格ですが、一般の刃に比べて黒刃は約1.5倍、チタンコートは
約4倍します。

私としての結論は、注意してお使いになるなら黒刃ということです。
どうしても女性は力が弱いので、カッターを使うという作業は
難しい場合があります。
そういう時には助けになるかもしれません。

但し前述したように入り込みには要注意です。
陶磁器の質や装飾によっては問題が起きる可能性があります。
使う対象を考えて、お使いになるようお願い致します。


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